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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
129/153

129密林

刑事は、


「バッサリ切られたな」


と誠のハーパンを持つ。


「あ、これくらいならぁ……」


若い警備員は、何故か携帯ソーイングセットを持っていた。

素早く、真っ直ぐに切られたハーパンを縫い直す。


「見た目は悪いけど、無いよりは良いでしょ」


誠は大感謝した。

これなら戦える。


「よし、先に進もうぜ」


川上が励ますように言った。


が、小百合は誠のTシャツを、バッとめくって、


「傷一つ無いべ!」


別に上半身は恥ずかしくないが、ハーパンを思わず誠は両手で隠して。


「僕は傷の再生が出来るんです。

自分の体の場合は、オートマチックに動きます」


やり方はリーキー·トールネンに教えてもらった。

これも一種の催眠術らしい。

自己催眠というやつだ。


命に関わる傷を負ったら、即座に回復モードが発動するのだ。


ただし、水死とか火事に巻き込まれたら、オートマチックだけに何度も死ぬことになる。

ただ、影繰りで殺し合う以上は、それも仕方なかった。


「あたしも真子が傷つくのは見たくないべ」


誠が恥ずかしいのは、どうでもいいらしい。


誠が影の手で全員を包み、天井の穴に入る。


むっ、と緑の臭いが一気に広がる。


そこは、密林だった。


コンクリートの床を突き破り、ゴツゴツした木の幹が無数に伸びている。


葉は、あまり見たことのない小型のクローバー型の葉が、四方に広がっていた。


「あー、ここって多分、地下駐車場ですねぇ」


と警備員。


「え、さっきも駐車場でしたよね?」


「ああ、あっちは機械式の一般用なんですが、観光バスの団体客とか、こっちに来るんですよぅ」


確かに、何台もの観光バスが止まれるほどの広さはありそうだ。


だが今は止まったトラックや乗用車、バスを突き抜けるように、無数の木が生え広がっていた。


木は、車の床を貫いて、窓から枝を伸ばし、車の屋根をブチ抜いて、天井に網目状に広がっていた。


「なんだこりゃ!」


川上は唸るが、誠は。


「おそらくこれがシーツアの木なんだと思う。

これでスカイツリーはメチャクチャになってるんだ。

これをなんとかしないと!」


意気込むように言う。


みんなにさっきの醜態を忘れてもらいたかったが、誠の頭の中では惨めに裸を晒した自分がリピートされている。


「木を枯らすって、どうするべ?」


小百合が言うが、誠も首を傾げることしかできない。


「普通は幹を切って、切り口を焼いたりするんだが、どうにも一本や二本じゃないしね。

除草剤とか、無いのか」


老刑事は物知りだった。


「さー、上に聞いてみましょうかぁ」


警備員は、小型のガラケーのようなものを取り出すが。


「おかしいなぁ。

電波が通じない…」


「確かに広いスカイツリーですし、除草剤ぐらいはストックしてそうですね。

あるとしたら……」


誠は、穴を見た。


広大な倉庫の段ボールの何処かには、もしかしたら除草剤もあるかもしれない。


誠はユウレイに探してもらう事にした。


(あー、俺、そういうの、無理)


颯太は素早く言った。

古い付き合いの誠は、多分漢字が読めないな、とすぐ分かった。


(俺は誠を守るぜ!)


高田類も、右に同じ、らしい。

裕次も、


(俺って都会っ子だから、その手のには詳しくないんだ)


この一団は似たりよったりだ。


除草剤は中村や真子、田辺たちに探してもらうことにした。


「しかし、それにしても……」


ユリは茂みを見渡し、


「絶対に敵が潜んでるよね」


誠やユリは、密林の敵の厄介さを身を以て体験していた。


「何がでてくるか分からないから、まとまっていた方が良い」


誠は言った。


捜索は颯太たちと川上にまかせよう。


無様な姿を見られてしまった心がまだ痛いが、努めて冷静に誠は言った。


川上は、


「うん、何かいる。

木とは違う、生き物の臭いだ。

獣臭い感じだな」


まず臭いを語り、長く伸びた耳は左右に動かすが。


「居場所が判らねーんだ。

臭いは辺りに充満してるのに、音がない」


虫のような、極めて小さいか、枝に貼り付いて、ほとんど動かないのだろうか?


それにしても、臭いが辺りに充満してる、とは……。


「それって、つまり大量にいる、ってことべか?」


小百合は唸る。


「うーん、そこまで断言は出来ないんだよな。

姿も大きさも判らねーんだから」


ヒグマのような巨大なのがいるのか、無数の小鼠なのか、確かに判断は難しいだろう。


幽霊たちも周囲を探したが、獣の姿などない、と言う。


だが辺りは密林だ。

隠れる気になれば、動物ならいくらでも人の感知できないように隠れられるだろう。


その時……。


あっ!


一声叫び、ユリが倒れた。


首から、大量出血していた。

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