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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
120/153

120蜂の群れ

爆炎で顔をそむけたスズメバチだが、なんと顔の半分を失いながら、平然と誠たちに迫ってきた。


「マズいぜ誠っち、どうやら奥にも蜂の巣があるようだ!」


川上が叫んだ。


誠は影の手で雀蜂を切り刻んだ。

外骨格は巨大さもあり、かなりの硬度だったが、吹き飛んだ頭から体内に影の手を入れると、筋組織を破壊し、なんとか蜂を撃退した。


そして、颯太たちに奥を見てきてもらった。


(やべぇぞ誠、ここを見てみろ!)


透視してみると、地下の底部分に、数十メートルに及ぶ巣が作られていた。


大きさ的には女王蜂がいてもおかしくないが、透視では蜂だらけでよく判らない。


大体が虫嫌いの誠は、どういう姿が女王蜂なのかも判らなかった。


ただ巣の大きさは車10台以上の平面の上、高さも同じほどはある。


「燃やそう!」


虫嫌いの誠は、即決するが、後ろの警備員が、


「待ってよ君ぃ!

大損害だよ、そんなの!」


と悲鳴を上げた。


誠は、影の手で十数メートル下の、巣の見える位置まで全員を下ろした。


「嘘だろ!

クジラ並みじゃないか!」


ユリも驚く。


「蜂がこっちに気づかない内に、燃やすしかないですよ」


誠は言うが、警備員は被害金額を口にする。


「馬鹿か!

あんなの駆除業者じゃ駆除出来ないべ!

あたしらも、あれだけの蜂をいちいち相手に出来ない。

放って置いたほうが損害がデカいべ!」


小百合のストレートな意見に、刑事も同意した。


「これは、確かに燃やせるものなら燃やすしか方法はないよ。

それに駐車場なら消火設備は万全だろう?」


「はい、窒素と泡消火が完備されていますが……」


おどおどと語る若手警備員に老練の刑事は、


「それなら構わないだろ。

あんなのが街に出たら、途方もない事になる。

焼き払えるものなら、早急にやってくれ」


おっとりしたお爺さんかと思ったら、なかなか決断力のある人のようだ。


「だけど、どう焼くべ?」


小百合に誠は。


「ガソリンを使います」


確かに駐車場なので車は捨てるほどある。

そして誠は、リーキーからガソリンの抜き方は教わっていた。


車から抜いたガソリンは、反重力でうまく巣にかけ、全体にガソリンが回ったところで、蛹弾を数発撃ち込んだ。


激しい爆発を、誠は無数の影の手で覆って仲間を守った。


だが、同時に羽音が密閉されたコンクリート空間に響き、十を超える雀蜂が飛び立ってきた。


「みんな、少し抑えていて」


誠は言うと、再びガソリンを抜く。


川上はウサキで応戦するが、重装甲の雀蜂にはあまり効果はない。


ユリは十づつ二つの虫の集団で雀蜂を倒しており、小百合は髪の毛で雀蜂を包込み、圧殺した。


ガソリンを反重力で蜂にぶつけた誠は、蛹弾で燃やす。


そうしている内に駐車場内に警報が鳴り出した。


三十秒以内に外に逃げろ、とアナウンスがある。


「大変だよ、窒素消火が始まる。

それまでに脱出口に行かないと、僕らも窒息してしまうよ!」


と警備員は、悲鳴をあげる。


誠は今あるガソリンを雀蜂にかけると、手早く燃やし、皆を連れて出口に向かった。


駐車場内には一秒ごとにカウントダウンが始まっている。


十秒を残して、誠たちは扉を出た。


「すぐに扉を閉めて鍵をかけるんだ!

あの蜂、この扉なら出られるぞ!」


老刑事が叫ぶ。


羽根を広げればぶつかりそうだが、確かに歩けば、ギリギリ扉から出られる可能性はあった。


誠たちは透過で外に出ると、慌てて鍵を閉めた。


蜂は、広い立体駐車場内を飛び回っていた。


ガツンガツン! と硬い頭で扉を破ろうとする音がする。


「おいおい、あんな怪物に耐えられるようには扉は作ってないよ!」


警備員は相変わらずのうろたえぶりだが、老刑事は、


「防火扉だ。

そうそうは破れんだろう」


と落ち着いていた。


幽霊の颯太たちは平気で中で蜂と戦っていたが、真子が急を知らせる。


(誠君。

巣の後ろ側に穴が空いているわ!)


雀蜂がコンクリを削ったのか、燃え落ちた巨大な巣の背後に、蜂が通れそうな穴が見つかった。


「あと7秒で窒息消火を開始します」


電子音の女性アナウンスが聞こえる。


だが、穴があったら消火できないのではないか?


誠は透過で駐車場に入り、透過しながら一気に地下の一番奥まで飛んだ。


そこに、いかにも虫が齧って明けたような直径一メートルほどの穴があった。


巣の爆発で壊れた車を置く鉄板があったので、それで塞ごうとするが、引力と反発の力を使っても、鉄板は重すぎた。


「あと六秒で窒息消火を開始します」


誠は焦った。


(ここを塞げばいいのか?)


高田類が聞いた。


「そうなんだけど……」


誠が焦りながら言うと、任せろ、と高田類。


木が生え、蔦が覆って、穴を塞いでいく。


「あと五秒で消火を開始します」


誠は、急いで仲間のところに戻った。


「誠っち、どうした!」


急に消えた誠に、皆、心配していた。


「穴があったんだ。

なんとか塞いできた」


改めて体中から汗が吹き出した。


「あと一秒で消火を開始します」


透視してみると、駐車場にはまだ多くの雀蜂が飛んでいる。


「消火を開始します」


サイレンと共に薬剤が噴出する。


と、同時に、巨大蜂が、ボトボトと落下し、痙攣して苦しみもがいた。



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