表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
12/153

12透過

「ふーん、鍵はかかったままのショウウィンドからブランド物の貴金属だけ、いつの間にか盗まれているんですか?」


中居は、警視庁の太田刑事と六本木の華やかなブランド街を歩いていく。

影犯罪の捜査に関して、中居は以前から太田と組んで動いている。


「なー、あたしら、なんで中居と一緒にいんの?」


とユリコ。

小百合は、


「馬鹿ね。

中居さんを見てみなさい。

女っ毛なんて無いもんだから、こういう物の価値も判らないのよ。

アドバイザーとして、あたしたちは選ばれたのよ」


中居は正鵠を射られてグウの音も出なかったが。


「まぁ、そうだけどユリコは鼻が利くし、小百合は髪でどんな細い場所でも入れて、感知できるだろ?

犯人のトリックとかも見つかるかも、と思う訳だよ」


と誤魔化し笑いをしながら、期待を話した。


「まぁ、誠ならこんなものはヒョイだろう」


無責任なことをユリコは言い始めた。


「馬鹿ね、あの子は根っからの子供だから、貴金属なんて気にも留めないわよ。

鉄道玩具とか、そんなのならポッケしててもおかしくは無いけど」


さすがに小百合は誠の疑いは晴らした。

偏見は撒き散らしたが…。


「まー、だから誠じゃない奴が、どうパクったか、そこら辺が問題なんだよな」


と中居は困惑する。


「ちょっと、ケース空けてもらっていいか?」


ユリコは、店員に空のケースを空けさせた。


クンクンと周囲を臭い、


「変だな?

影繰りに似てんだけど、どうも薄い臭いがすんだよなー」


「薄いってなんだよ?」


「弱いって、言ってもいいんだけどさ、まぁ透過しかできない誠もどきがいたのかも知んねーな?

臭いは、もっと男くせぇ、奴だけどな」


「透過だけって言っても、けっこう強い能力だけどな。

喧嘩も出来ないズブの素人の中学生が、アクトレスさんとバタフライ、良治さんコンビを倒してるしな」


と中居。

ユリコは。


「そりゃ、落とすとか、出来るからだろう?

こいつは、せいぜいガラスの中に片手を入れるとか、そんぐらいしか出来んと思うぜ!」


小百合は長いストレートヘアを掻き上げて、


「しかし、どうせ盗むなら、もっと高級店もあるのにね。

なんでここなのかしら?」


幾つもの高級装飾品店が入っている人気のショッピングモールだが、確かにその店は中堅的な価格の店だった。


押しも押されもしないような名店の何分の一の値段で、それなりに派手で今風なジュエリーが買えるのが売りの店だ。

と、言っても御徒町や上野の三流店ではない。

海外の雑誌でも取り上げているような世界規模の店ではある。


「すぐそこが出口だから、じゃないか。

バレる可能性もあったんだよ、そいつには。

数秒しか能力が持たない、とか」


中居が言うと、ユリコも。


「おー、そういう感じの薄さだぜ。

弱い影繰りなのかもな」


弱い影繰りは新宿でだいぶ死んでいたが、そもそもバトルつもりもないような、もっと弱い影繰りは、まだ東京にも残っている可能性も多分にあった。


「それが、今になって急にコソ泥を始めたのかい?」


太田刑事が口を挟んだ。


「透過できるのが、例えば2秒なら、どこまで盗めるか、最初はもっと安全対策が緩そうなところで、目立たないものをかっぱらっていたんじゃないか?

近所の商店街とか」


ユリコの言葉に、太田はそのその線を探ることにした。






大久保と新大久保の間、青果市場に至る周辺は、日本でもかなり多国籍な人種の住み着く、異色の街並みが狭い地域に密集していた。


当然、柄は悪い。


南方系の浅黒いアジア人の男たちが集団で、安いホワイトリカーを飲んで騒いでいる。

ホワイトリカーは、少々度が薄いが、本国の自家蒸留の酒と似た香りがあるため、彼等には人気なのだ。


肉も魚も、彼らの金銭感覚の物であり、街全体にすえた臭いが漂っている。


その地元日本人も近づかない路地の中に、学生服の高校生が入り込んでいく。


「ムアイに来た」


瘦せた男たちに言うと、男たちの目が、いっそうギラつき、


「金!」


脅すように手を出す。


高校生は、男に数万円を手渡した。


「ガラ!」


奥で、汚い猫と遊んでいた少年が呼ばれ、高校生を更に狭い路地の奥に案内する。

幾つか路地を曲がり、中華系住民や韓国系住民の居住区を横切って、あるビルに足を踏み入れる。


入り口は、狭い。

日本人の中年では体がつかえてしまうのではないか?


むろん二人の少年には何のことは無く、地下に降りていく。


ションベン臭い地下室だ。


ボロボロの部屋に少年は入ると。


「着替えろ!」


高校生は、制服を脱ぐと裸に簡単なサポーターを付け、トランクスを履いた。

手には、総合格闘用のグローブを付けるが、手袋のように嵌めただけだ。


やがて、ほぼ死にかけた、という程顔を血みどろにした男が、肩を担がれて部屋に放り出された。

汚い部屋の一角に、血反吐に汚れた布団が置かれていたが、そこに文字通り、投げ捨てられたのだ。


「行くぞ!」


少年の声に頷き、高校生は、死にかけの男の入ってきたドアを通るが、その隙に、白い錠剤を一つ、口に放り込んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ