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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
119/153

119大木

ソラマチは正常に戻った。


と、同時に非常警報が鳴り響き、人々は慌てて外へ逃げ始めた。

それまでは警備室で警報を切断していたらしい。


展望回廊や展望デッキは惨憺たる有り様だ。

木々に隠れていた無数の遺体が散乱していた。


水族館には、起き上がれなくなっている何十人もの人々がおり、救急隊も駆けつけた。


警察や消防も来ていたが、誠たちは本部から話を通してもらい、ソラマチに残った。


外の蔓草が、六三四メートルのツリーを覆っているのだ。


間違いなく、まだ影繰りがおり、何かをなそうとしていた。


誠と小百合、ユリと川上は、二手に分かれてソラマチを探した。


「ここらは何度も探してるべ。

誰も隠れてはいない」


川上は聴覚と嗅覚で探っている。

ユリは二十匹に増えた虫を飛ばして辺りを探るが、結論はすぐに出た。


地下だ。

地下は平置き駐車場と機械駐車場に分かれており、それ以外にもタワーを維持する様々な施設があった。


「ここからは四人で行きましょう。

きっと誰かが敵を見つけられるハズです」


誠が言って、まず立体駐車場の内部に入った。


高校生の四人組に、一応、影繰りの分かる刑事が付き、警備員に先導されて薄暗い通路を通り、立体駐車場に入る。


川上は聴覚と嗅覚で、ユリは虫を飛ばし、小百合は髪を伸ばして車一台づつ探っていく。


誠もニ十ニ人の幽霊を使って、半分地下に、半分はソラマチと壁を隔てる形で作られた立体式駐車場を捜す。


(特に、異常はないぜ)


と、早田は言うが。


「微かに、異臭があるッスね……」


川上の嗅覚は、広大な機械式駐車場の異変を感じ取っていた。


「地下の、左奥の方ッス」


小百合が髪を伸ばしていく。


機械式駐車場は、可動式の駐車スペースが車高スレスレに無数に連なっており、間には人一人通るほどの鉄板がか細く続いている。


ウサギが小百合の髪の毛を先導し、数十台の車の先に、幽霊のハルやユリの羽虫も後を追う。


だが、それらは警備員や刑事には見えないため、誠たちも足場数十センチの鉄板を歩くことになった。


しばらく進むと、先の車の異常が見えてくる。

最初に頓狂な叫びを上げたのは、年配の刑事だった。


「なんだ、これは!

虫の巣じゃないか!」


確かに、車を置く鉄板ごと、それは禍々しいスズメバチの巨大な巣に飲み込まれていた。


とても殺虫剤でどうにか出来るレベルの大きさではない。


と言うより、まずギネスに乗るであろう超巨大なスズメバチの巣だった。


「お巡りたちは下がるべ!」


小百合は口汚く言ったが、無論、警察も警備も、スズメバチは担当外だ。


喜んで後ろに下がった。


「ユリ、見てみてくれる?」


羽虫が一番安全と判断し、誠は頼んだ。


ユリは手を伸ばし人差し指の先から羽虫を飛ばした。


羽虫は、警戒しながらバッファローよりも巨大な蜂の巣に接近していく。


巣に付いた羽虫は、巣を食い破ろうとするが、大木を枯らしたユリの虫でさえ、巣に傷をつけられない。


「硬すぎて駄目みたい……」


残念そうにユリは言った。


「みんなは下がって……。

これ、マズいかもしれない」


誠は、蜂の巣を透視した。


そこにいたのは、巨大な無数のスズメバチだった。


「まるでセントバーナードみたいなおおきさの雀蜂だ!」


「誠っち。

車は?」


「空だったみたいだね」


巣のように見えるが、女王がいるわけでも、卵があるわけでもない。


トラップのように、数十の、巨大な蜂が蠢いているだけなのだ。


中の模様を誠が伝えると、


「あたしが髪で巣ごと潰すべ!」


小百合が言う。


と、同時に小百合の髪が誠たちの頭上を覆うように広がり、一気に巣を包み込んだ。


「小百合さん、巣の間に車を支える鉄板が……!」


誠は叫ぶが、


「そんなの、問題にならないべ!」


小百合は叫ぶと、グシャリと巣を潰す。


だが、鉄板部分に守られていたのか、数匹の雀蜂が羽音も猛々しく舞い上がった。


「ぎゃあ!」


と妙に甲高い声で叫ぶのは、まだ若そうな警備員だ。

アルバイトなのかもしれない。


「普通の人に見えてるのかよ!」


川上が驚いた。


「ペナンガランと同じだ。

これは妖怪なんだ!」


妖怪と影の定義など解らなかったが、影を逸脱した存在だとは直感出来た。

無論危険とも言えたが、肉眼で見えるだけ避けやすくもなる。


問題は、己の目で見た狂気に耐えられるかだ。


が、誠はとにかく一般人を守るため、影の体を全て飛ばした。

透過をすれば誠も飛べるが、誠は警備員と刑事を守るために背後に下がった。


ユリの羽虫が、以前より力を増した速度で、蜂に襲いかかる。


川上のリスは、この不定形に車の台が連なった空間には適応し、自在に跳んで蜂に戦いを挑んだ。


だが大型犬ほどの雀蜂は、上に吊られた自動車の乗った台に頭をぶつける。


台が金属音を盛大に立てて、大きく揺らめく。


誠は、足場を支える骨組みの一部を、透過して切断し、蜂に投げた。


蜂は、金属片に刺さると、石化した。


ユリの虫は、十匹がかりで蜂を落した。


蜂は下のジープに頭から突き刺さり、天井を破って絶命した。


川上のリスとウサギは、懸命に頭から尻の先まで入れれば一メートルを超える蜂に噛みついたり、蹴っ飛ばしたりしていたが、頑強な外骨格の飛甲虫には大きなダメージは無かった。


重機のような羽音を立てて巨大雀蜂は誠や警備員を襲う。


誠は、蛹弾を数発撃ち、雀蜂は爆発した。

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