表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
103/153

103密林

敵を十体以上倒したが、倒せば倒すほど木が茂っていく?


そして敵はウツボカズラだが、紫色の花だという。


外は、何十分も前から木に覆われているのを考えると、もしかしたら一つの影では無い事も、考えられる。


また、顔泥棒が死んだ敵に何かを入れると、より強くなって再生する、という話は中居やユリコたちに聞いていた。


そのどちらかなのか、と考えられるが、ただし敵が大量にいるらしい、というのは、あのサソリ少年のようにウツボカズラの親玉がどこかにいる、とも考えられた。


問題は、親玉がどこにいるのか、だ、。


このフロアで前からユリが戦っていたのだから、親玉はユリに接近している、とも考えられるし、ウツボカズラはいくらでも作れるのなら、むしろ親玉は隠れるべき、とも言える。


しかし、何にしろこの密林では、親玉もウツボカズラも、そうそう見つけることは出来そうにない。


誠は、颯太と田辺に、周辺のウツボカズラを探してもらった。


まず自分の身を守れないと、ユリを助けられない。


「誠、三匹いたから倒しといたぜ!」


と颯太。


「こちらも二匹倒した」


田辺も教えてくれた。


ジャングルは厄介だ。

歩くに歩けないが、枝を払ったとしても、ウツボカズラのいい隠れ蓑になってしまう。


「そうは言っても、これでは危なくて進めません。

枝を払う必要があります!」


真子が語った。


確かに、幽霊が探してウツボカズラを退治した枝から、切っていくしか方法が無いようだ。


誠は、真子の切断を使って、枝を払った。


進みながら枝を切っていくと、足元にも無数の花が生えているのが判った。


敵が複数いる以上、花も刈って前進する。


十匹のウツボカズラが見つかった。


颯太によると、動きはゆっくりだが天井や枝を這って歩く能力があるという。


「やっぱり、何処かにウツボカズラの親玉がいるんだ!

探して」


誠は幽霊に頼みながら、影の手で枝や草を払っていく。


ユリと合流するか、少し迷ったが、誠はユリとは逆方向に進む事にした。


何より、敵の本体を見つけなければ、何も変わらないからだ。


少し進むと、エスカレーターが見えてきた。

だが朝顔にも似た蔓植物が一面に絡みつき、その下には、金属を破ってイバラのような赤い花の茂みが道を塞いでいた。


「誠、下があるようだぜ!」


裕次が言った。


なんか呼び捨てなんだよなぁ……。


と、誠は不満に思う。


颯太は誠が、まだ己が影繰りとは気づかない頃、殺してしまった同級生なので、幼児の頃から顔は知っていたし、呼び捨てでも良いのだが、裕次に呼び捨てにされると、色々、知られたくない秘密を知られてしまったので下に見られている、ような気になるのだ。


学校では勉強ができる方なので、それなりに認められているように思うが、その実、かなり必死に努力してるのを見られたり、その他、誠がクローゼットの奥に隠してあるようなことも、元々頭を覗ける幽霊には秘密にはできない。


影繰りとしてはエースのように言われていても、その実、ヘタレで颯太たちに助けてもらっているのも、裕次には隠しようがない。


なんかなぁ……。


などと誠が拗ねている内に、


「先に階段があるわ」


元キャバ嬢のアサミが教えてくれた。


誠は、不満を頭の端に追いやって、階段に向かう道を切り開くことにした。


頭から垂れ下がる団扇のような葉の蔓植物をザクザク払い、広めに通路を確保する。


「このホールには、本体はいないんだよね?」


田辺は、


「いない」


と即答した。


「しかし、相手の姿が判らないのは確実性に欠けます」


真子は疑問を呈した。


「本体なら、あれがワラワラいるはずだろ?

いないんだから、間違いないさ」


裕次が口添えした。


確かに本体の姿が判らないのは、いくら二十人で探していたとしても取りこぼす元だ。


誠は、全ての幽霊に影の体をつけ、枝や草を刈りながら敵の捜索をしてもらうことにした。


木の密度が薄まれば、本体も発見しやすくなるはずだ。


階段があるということは、同程度の広さのホールが下にもあるのだろう。


エスカレーターの状態を見ても、下の階も相当に木が茂っているはずだ。


ユリと合流することも考えたが、このホールはユリに任せてもいい気がする。

何より、本体を見つけることが一番重要なはずだし、この階にはいないと田辺も言っていた。


うまくすれば、ユリとの合流にかかる手間で、本体と遭遇し、倒せるかもしれないのだ。


仮にユリがピンチなら、透過ですぐに駆けつけられる。


誠は階段へ向かった。


エスカレーターよりは頑丈ということなのか、階段は突き破って生えるような木は少なかった。


ただし草は所々に生えていて、だいぶ根元から刈ってあるが、躓きやすかった。


用心深く誠が降りていくと。


「ほー、木を切ってる奴がいると思ったら、弱そうなガキじゃないか」


全身が岩石でできた、二メートルを超える巨人だった。

胴体はスマートで、手足が長い、アフリカンのような体型の岩人間だった。


近接戦闘系か…。


誠は唸る。


影の手はあるものの、あの岩の体では、パンチやキックを一撃でも受けたら、誠の戦いは終わりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ