星降る夜のカフェ 4
妖精たちは、よく懐いた小鳥のようにエルディスの肩にとまったり、周りを掠めて飛び回ったり賑やかだ。
そして、私に視線を向けると、一匹、二匹とヒラヒラこちらへと飛んでくる。
それはいつしか、光り輝く大きな波のように集まって、私の元へ押し寄せてきた。
「お願い……」
こんなにたくさんの妖精に願ったなら、それほど多くない私の魔力なんてきっと空になってしまうだろう。
それでも、この状況を変えられるのは、この方法しかない。
「姉さん! 無茶しないでよ!?」
エルディスの声が、慌てたように高くなる。
それでも、今できることをしない選択肢なんてない。
「お願い!! 助けて!!」
妖精たちは、次々と私に寄り添っては、魔力を奪っていく。淡い紫色の光があたりを満たしていく。
それほど多くはない私の魔力。それが根こそぎ奪われてしまって、ひどく酩酊したような感覚に襲われる。
それでも、まっすぐに視線を向けた先には、大切な人たちがいる。
「……はあ。姉さんを追いかけていたはずの妖精たちと僕だけが中に入れないと思ったら……。妖精たちはきっと、この展開を知っていたんだろうな」
そっと私の手に重ねられたのは、いつの間にか私よりも大きくなったエルディスの手だ。
そこから流れ込むのは、私の魔力によく似た魔力。
「……悪いけど、姉さんを泣かせたら許さないから!」
金と銀の光、そして淡い紫の光が周囲を包み込む。あまりにも、眩しくて、苦しくて、意識が遠のいていく中、誰かに抱きしめられたことだけがわかった。
パキンッとガラスが割れるような音がする。
イヤリングの三連の魔石が粉々になって、光に溶け込むかのように輝き、そして散らばっていく。
「綺麗……」
その光の粒だけが、もうろうとした意識の中、はっきりと私の視界に映り込む。
「――――!!」
大好きなその声が、呼んだのはたぶん私の名前だったと思う。
「……大好きです。騎士団長様」
まるで、夜が明けてくるような、朝焼けみたいな淡い紫の光の中、差し込んでくる光は強くて眩しい。
薄れゆく意識の中で、思い浮かんだのは、白い雲とリボンと、可愛いお花で埋め尽くされた店内。
その可愛らしい店の目立たない席で一人、優雅にコーヒーを飲むその姿だ。
「早く、カフェ・フローラで騎士団長様に」
コーヒーを出してあげたい。
それに、新作のクッキーも……。
「リティリア!」
カフェ・フローラで私の名を呼んだのは、思いのほか、優しく可愛らしい笑顔の騎士団長様。
今はもう、その笑顔が胸が痛くなるほど愛しい。
もう一度私の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
それと同時に、愛しているって声も聞こえた気がしたけど、とのんきに考えたあと、私は意識を手放したのだった。
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