星降る夜のカフェ 1
踏みしめる度に、リリーンッと涼やかな鈴の音が響き渡る。
白銀の光の中を歩いていると、まるで同じ色をした騎士団長様の魔力に包まれているようだ。
流れ星のように煌めきながら、その中を妖精が飛び回る。
「本当に綺麗」
もし、オーナーのことがなければ、こんなにロマンチックな夜を騎士団長様と過ごせることに、うっとりと幸せな気分になっただろう。
(でも、それよりもなによりも……)
ギュッと胸元の布地を握りしめた私に何を思ったのだろう。騎士団長様がそっと手を重ねた。
「心配するな。なんとかなる、そしてしてみせる」
「……アーサー様」
顔を上げると、私を安心させるように淡いグリーンの瞳が弧を描いていた。
こんなときに不謹慎だと思いながら、ドキリと心臓が音を立てる。
少し離れたところでは、エルディスが妖精に話しかけている。
反対側の手をポケットに入れれば、冷たいけれどどこか温かい魔力を内包した宝石が触れる。
ふと、ポケットに視線を向ければ、淡い緑色と星々のきらめきのように瞬いている。
「……あれ?」
不思議に思って取り出した片割れの宝石は、やっぱりアーサー様の瞳と同じ色をしている。
けれどその中には、いつの間に閉じ込められてしまったのか、星の光がインクルージョンのようにきらきらと内包していた。
「星の光が、宝石の中に入ってしまった!?」
「魔女殿にいただいたこの宝石は、魔鉱石の中でも抜群に純度が高い。星のかけらを手にしたときに紛れた俺の魔力に反応して、吸い込んだのかもしれないな」
「きれいです……」
夜空にかざした宝石は、暗い中でよく見れば、淡く銀色に輝き、その中に揺らめくオーロラに星の光が瞬いているみたいで、あまりにも幻想的だ。
思わず、時間が経つのを忘れそうになった私はあいかわらずのんきだと思う。
「姉さん!」
少し咎めるような、弟の声に我に返り、慌てて宝石をもう一度ポケットに押し込む。
「妖精たちが案内してくれるって」
「……大丈夫なのか?」
騎士団長様の声は、少しの不信感をはらんでいる。それはそうだろう。私たちは先ほど、妖精の群れに追いかけられたばかりなのだ。
「妖精たちは、子どものように興味を示したものに忠実だ。だけど、会話さえ出来れば言葉が通じないわけでもない」
「そうか……」
「さっき姉さんが投げた宝石の魔力は極上だったから、お礼がしたいって。つまり問題ないよ。……今は」
今は、という部分に引っかかりを覚えながらも、先導する光とエルディスのあとをついていく。
それにしても、騎士団長様に二つの宝石を預けた魔女様は、いったいどこまでこの結果を予測していたのだろう。
不思議な存在、魔女様。
ときに残酷な、ときに気まぐれなその行動の真意を私たちが読むことなどできないのだろうか。
私のよりも深い紫色のアメジストのような瞳が、チラチラと脳裏をよぎっていく。
遠くに輝くのは、流れ星が集まったように一際強く金色に煌めく場所。
耳元と胸元に揺れる三連の宝石の一つ、白銀に輝くそれは、確かにオーナーの魔力に違いない。
「あの場所に、オーナーがいる」
「……リティリア」
「アーサー様?」
一瞬だけ立ち止まった騎士団長様を見上げれば、眉の間にしわが寄っている。
騎士団長様は、「待っていてほしい」という言葉を呑み込んだのかもしれない。
そんなことを思いながら、再び少し冷たい手を握りしめて、私たちは歩き始めたのだった。
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