魔鉱石と妖精 3
エルディスは、私の手を引いてどんどん進んでいく。その後ろに、反対側の手を繋いだ騎士団長様が続く。
少しだけ警戒した様子で、騎士団長様はキョロキョロと周囲を見ている。
けれど、妖精たちは私たちから少し離れて飛び回るばかりで、それ以上近づく様子はない。
エルディスは、私と違って妖精と話をすることができる。おそらく、言い聞かせてくれたのだろう。
「……あの、エルディス、目的地って?」
「妖精たちが、大切に守っているところ」
もう一度強く手を引かれれば、次の瞬間、フワリと足下が柔らかくなった気がして、足下が雲に覆われていた。
妖精たちが、認めた人間しか入ることができない場所。つまりこの先にあるのは……。
「ここにも魔鉱石があるの?」
「そう、それも巨大な。ああ、でもその場所に行く前に、少し寄り道をしないとね」
寄り道と言いながらも、エルディスの表情はとても真剣だ。
「オーナー……」
そう呟くと、エルディスと繋いだ左手にも、騎士団長様と繋いだ右手にも、ギュッと力が加わったのがわかる。
雲が晴れていく、その隙間に見えるのは、可愛らしく、時に美しい夢のような空間だ。
「カフェフローラ……」
「……厳密に言えば、カフェフローラの元になった場所の景色だろう。時間と空間が歪んでしまっているんだ。その証拠に」
エルディスの焦げ茶色の髪から生えるのは、白いウサギの耳。
燕尾服は、淡い紫色の瞳も相まって、おとぎ話の世界から抜け出してきたみたいだ。
「……カフェフローラで、一緒に働こう?」
「え? 嫌だよ……」
こんな可愛いウサギ耳のスタッフがいたなら、ますますカフェフローラは人気になるに違いない。
そんなことを思いながら、触れた頭には、予想通りいつか着けていたクマ耳のカチューシャがついている。
「まさか……」
振り返るのが少し怖い。でも、ものすごく見たい。
「……あの、見ても良いものでしょうか?」
「うん? どんな姿かわからないから、なんとも言えないな。しかし、あの時の服装か? リティリア嬢は何を着ても似合うが……」
そう、チラリと見えるスカートの布地や、触ったときの頭の上のクマ耳の感触からいって、今の私は騎士団長様にクマのぬいぐるみをもらった、あの日と同じなのだろう。
勢いをつけて、クルリと後ろを振り向く。
「と、トラ!?」
目の前には、トラ耳を着けた騎士団長様がいた。騎士服はそのままに、トラ耳を着けた騎士団長様は、可愛らしく、かつ格好良い。
「もしかして、尻尾もあるのですか?」
「これか……。ん? 不思議なことに触った感じがわかるな」
前回は、騎士団長様と私の姿を子どもにしてしまったオーナーの魔法。今回のこれもオーナーの時空魔法がもたらす影響なのだろうか。
「さ、姉さん。とにかく行くよ」
「まあ、行ってみなければ何もわかるまい」
「え、ええ」
こうして、シリアスな展開にもかかわらず、少々可愛らしくなってしまった私たちは、妖精が創り出す雲の隙間を抜けたのだった。
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