それはお揃い 2
「リティリアが望んだとおり、お揃いだ」
「えっ……」
すっかり、騎士団長様のお屋敷に住み着いてしまった私。
朝早くから仕事だという騎士団長様に合わせて、眠い目をこすりながら朝食の席に着く。
そんな言葉とともに私の目の前に差し出されたのは、大きなリボンが結ばれた、小さな箱だった。
促されて開けてみると、そこには淡いグリーンの宝石が小さく輝く日常使い出来そうな髪飾りが入っていた。
「えっと……」
チラリと見てみるけれど、騎士団長様がなにかを身につけている様子はない。
お揃いではないと思いながらも、その可愛らしい贈り物をそっと髪につける。
「ありがとうございます」
「ああ」
「……瞳の色」
「そう」
それは、少し意味が違います、と思わなくもなかったけれど、騎士団長様の可愛い贈り物が嬉しくて、おもわず笑顔になる。
「ありがとうございます!」
「その笑顔が見られただけで、贈った甲斐がある」
そのあとは、手早く食事をして、騎士団長様は出掛けていった。
玄関でその広い背中を見送りながら、いつの間に用意したのだろう、と首をかしげる。
ずっと一緒にいたのだから、前々から用意してくれていたのだろう。
その時は、それで片付けた。
部屋に戻った私は、鏡の前で小さな髪飾りをいろいろな角度から何度も眺めた。
キラキラ輝くそれは、高級な石が使われているに違いない。
けれど、その小ささからものすごく高いというわけでもないだろう。
お揃いの品物をお願いしたのはいいけれど、騎士団長様の隣に立つのにふさわしい装いはとても豪華で高いものばかりなのではないかと密かに不安に思っていた私は、ほっと息をついた。
――――問題だったのは、そこからだ。
私は、昼食を軽くすませて、騎士団長様の部屋の隣に用意してもらった部屋へと戻る。
そして、開ききらない扉を不思議に思いながら部屋の中に入り呆然とした。
「…………」
そこには、ドアが開かないほどのたくさんの贈り物の山があった。
「…………」
一度扉を閉めてみる。
騎士団長様のお屋敷は、とても部屋数が多いから、間違った部屋に入ってしまったのだろうと、廊下の左右を確認する。
けれど、部屋を間違えてしまったわけではないようだ。
それでは、見間違いだったのではないかと、期待を込めてそろそろと扉を開けてみる。
「…………」
部屋をのぞき込まなくても、扉を完全に開けることが出来ない。
ああ、つまり完全に見間違いなどではなかったのね……。
そんなことを思いながら、私は改めて部屋の中に入る。
「ひぇ……」
やはり、扉が開かないほどたくさん積み上げられた贈り物の山がそこにはあった。
たぶん贈り物なのだろう。でも、ここまでたくさんなんて、いったい誰が予想できただろう。
「騎士団長様が帰ってくるのを待とう……」
ベッドの上には、今日も森のクマさんぬいぐるみが置かれている。
騎士団長様が、私にくれた初めての贈り物だ。
あの時には、ほんの少しのクッキー、そのお礼にこんなに大きなぬいぐるみを貰うなんて貰いすぎだと思ったけれど……。
「クマのぬいぐるみなんて、子どもへのお土産みたいな感覚だったに違いないわ……」
私は、そっとクマのぬいぐるみを抱きしめて、ベッドにお行儀悪く倒れ込んだ。
そのまま、フワフワと極上の肌触りのクマのぬいぐるみに誘われるように、つい夕方近くまでお昼寝をしてしまったのだった。
最後までご覧いただきありがとうございます。『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。




