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王宮への招待 5


 踊り終わったとき、会場がざわめいた。

 私の目の前には、王弟殿下がいる。

 そして、騎士に囲まれた。


 制服からして、王族の直属部隊なのだろう。

 私のことを騎士団長様が背中にかばった。


「――――殿下、どういうことでしょうか」

「……魔女、そして魔女と内通している騎士団長を断罪しようと思ってな」


 会場の端には、かつての婚約者ギリアム・ウィアー子爵令息、そしてピエーラ・ジュリアス男爵令嬢の姿が見える。


「……魔女、ですか」


 会場に、低く冷たい騎士団長様の言葉が響き渡る。


 確かに、魔女は異質な存在だ。

 けれど、人々の生活は、不思議な素材や魔法薬を提供してくれる魔女の存在なしには成り立たない。

 それなのに……。しかも、私の魔力は、魔女と言うにはあまりにも貧弱だ。


「リティリアが、魔女であると?」

「その紫色の瞳が証拠だ。紫の瞳は、魔女の証拠だろう?」


 確かに、私の知っている魔女様の瞳は、美しいアメジスト色をしている。


「捕らえよ」

「――――はあ。では、こちらも」


 淡いグリーンの瞳を一瞬だけ閉じた騎士団長様が、パチンと指先をならす。

 途端に、会場中を吹雪のように白い紙が舞い散った。


「な……」

「不正の証拠です。王弟殿下であろうと、さすがに隣国とまで内通されては……罪は免れないでしょう」


 その中の一枚が、私の手に舞い落ちる。

 そこには、王弟殿下がレトリック男爵領への支援を着服した証拠が記されていた。

 そして、男爵領が潰れたあと、魔鉱石の採掘権を手に入れるための方法、婚約破棄された私にかつて打診が来たのは、王弟の息がかかった高位貴族ばかりだった。


「――――アーサー様」

「ふむ、こちらにはギリアム・ウィアーのことも書かれているな。……レトリック男爵領の災害の一部はやはり人為的なものだった」

「……そうですか」


 会場中の貴族たちが、紙を拾い上げて食い入るように見ている。

 ばらまかれた用紙全てが、証拠だとでも言うのだろうか……。


「これで、終わりだな」


 膝をついた王弟殿下を冷たく見下ろし、騎士団長様はそのまま国王陛下が座る壇上へと上がった。

 なぜか、私の手を引いて。


「陛下、申し訳ありませんが、血が繋がっていないとはいえ、我が母ヴィランド前伯爵夫人も加担していたようです。いかようにも処分を。騎士団長の職を辞して領地に隠遁するなどいかがでしょうか」

「……ふふ。王国の淀みを片付けておいて、何を言う。恨みも買ったことだろう。身を守るためにも、騎士団長の職位はこれからも必要なのではないか?」

「ふふふ……」

「ははは……。悪いが、お前のことを離す気はない。さあ、代わりに若い二人の婚約を祝ってやろう」

「ありがたき、幸せ」


 二人でお辞儀をしながら思う。

 騎士団長様は、明らかに騎士をやめて領地でのんびりしたかったのだと。

 こうして、私たち二人の婚約は、公式に認められた。



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