王宮への招待 1
結局二週間もの間、スタッフたちの欠員は続き、私は朝から晩までカフェフローラで働き続けていた。
しばらく通っていた騎士団長様は、やつれた副団長シード様が、有無を言わさず連れ去ってしまった。
あれだけ働いて前もって仕事を片付けたはずなのに、やはり騎士団長様がいないと、スムーズに騎士団のお仕事は回らないらしい。
ふと、カフェフローラの在庫管理もバックヤードの整理整頓もそつなくこなしてしまった騎士団長様のお姿が浮かんだ。
きっと、騎士団でも様々な業務を一手に引き受けているに違いない。
改めて、多忙すぎるであろう騎士団長様のことが心配になってしまう。
けれど、私には気になることがもう一つあった。
「……もう、明日は夜会」
あれ以来、ギリアム様にも、私との婚約破棄のあとに新たに婚約したかつての友人ピエーラ・ジュリアス男爵令嬢とも会っていない。
でも、明日の夜会は全ての貴族家に参加が義務づけられている。
レトリック男爵家の代表、そして騎士団長様として参加すれば、二人にも会うことになるのだろう。
「心配ないと、騎士団長様は言っていたけれど」
因みに、オーナーは、貴族ではないので参加の義務はない。
その代わり、貴族が多い騎士たちの代わりに、王宮の警護にあたるそうだ。
オーナーは、騎士団長様に負けず劣らずいつも忙しい。
魔力が不安定なのに心配になってしまう。
今日は、騎士団長様の迎えがない。
代わりに、ヴィランド伯爵家の馬車が迎えに来ていた。
「お疲れ様」
ダリアは、私服に着替えて見送ってくれた。
先ほどまで着ていたのは、襟元のリボンと白いフリルのついたブラウス。裾が広がった水色のスカートと紺色のブレザー。
どこか遠い国にある学園の制服をモチーフにしているらしい。
巨大なステンドグラスから、カラフルな光が降り注ぐ学園は、私の知っている学校とは違って別世界みたいだった。
けれど、ピンク色のリボンがついた私服姿のダリアは、先ほどの制服姿に負けず劣らず可愛らしい。
「それにしても、裏口とはいえ、目立ってしまう……」
「ふふ。愛されているのね」
「か、からかわないでっ」
「そう? どう見ても騎士団長様は、リティリアに……。でも、馬車を待たせてしまうのは悪いわね。あと少しだから、つい寂しくて」
「ダリア……」
結婚しようと言った騎士団長様。
もちろん結婚してしまえば、今までのように働くなんて出来ないことは理解している。
ダリアの言うとおり、この場所で働くことが出来るのもあと少しだ。
「カフェ、フローラ」
オーナーは、私のためにこの場所を用意してくれたと言っていた。
走り出した馬車の窓から見えたのは、ピンク色の可愛らしいレンガ、ちょこんとした小さなお店。
その外観は、相変わらず私の好みのど真ん中だった。
そのまま走る馬車は、騎士団長様の邸宅へ。
すっかり、ここが帰る場所になっている。
出迎えてくれる使用人は、みんな笑顔で待っていてくれた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま帰りました」
夜会は不安だけれど、その場所で騎士団長様の婚約者として正式にお披露目される。
そのあとは、この温かい家で、きっと幸せな毎日が、待っている。そんな予感がした。
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