一緒に過ごす夜 2
食堂に着くと、もう当たり前になってしまったように、騎士団長様は自分の隣の椅子を引いて私に座るように促した。
「ありがとうございます……」
お礼を言うと、騎士団長様は、とても嬉しそうに笑った。
それだけで、再び私は心臓を鷲づかみされた気分になってしまった。
「――――すごい」
最初に運ばれてきた前菜は、細く切った色とりどりの野菜が、大きな貝柱の上にリボンのようにクルクルと飾り付けられていた。すでに鞘が開かれて覗いているお豆も、薄く切られた色鮮やかなカブ、一つ一つの食材は、よくあるものなのに、とにかく可愛らしい。
カフェフローラのメニューは、材料が特殊なので自宅で作ることは出来ないが、こちらであれば真似することが出来そうだ。
「冷める前に食べようか」
「はい。いただきます」
ほどよく焼き上げられた貝柱。
フォークを刺すと、柑橘系の香りが漂う。
そう言えば、ソースがオレンジ色だ。
パクリと食べれば、想像通り、口の中に爽やかな風味が広がる。
「おいしいです」
「そうか、料理長に伝えておこう」
その後も私は、次から次へと食べ進み、結局デザートまで完食してしまった。
小さくて、少しずつ出てくるから、つい食べ過ぎてしまう。
ちなみにデザートは、パフェだった。
ピンク色のチョコレートで蓋をされたパフェ。開けると、ムースで出来たウサギとハート型の苺が並んでいた。
料理長さんは、見た目は強面。
可愛らしいパフェを作っている姿を想像すると、少し微笑ましい。
「――――さ、行こうか」
「は、はい」
「何をそんなに緊張して……。ああ、すまない。先ほどの失言か」
口元に指先を当てた騎士団長様が、フワリと微笑む。
南洋の海みたいな淡いグリーンの瞳が、優しく細められるのは、いつだって心臓に悪い。
きっと、騎士団長様は無自覚だ。
私の少し前を歩いていた騎士団長様の腕に、そっと腕を絡める。
いつの間にか、窓の外は真っ暗になっていて、どこか空恐ろしい。
ふと浮かんだのは、魔女様が逆さまにして見せた恋人のカードだ。
「……何を怯えている?」
その言葉にドキリとして顔を上げる。
少しだけ眉を寄せてこちらを見下ろした騎士団長様。
見えない不安を言葉にしてしまったら、きっともっと不安になりそうで……。
「そうですね」
「…………リティリア」
「一緒に寝ましょうか」
それにしても、料理長さんは確信犯なのだろうか。
最後に出てきたウサギのパフェには、やはりアルコールが入っていたらしい。
フワフワする思考の中で、騎士団長様の手を引いて、無理矢理一緒にベッドに横になったことまでは記憶している。
けれど、私が覚えているのはそこまで。
つまり、寝落ちしてしまったらしい……。
朝日と、小鳥のさえずりに目を覚ましたとき、私のことをじっと見ていた騎士団長様と目が合った。
ちゃっかり腕枕をされて眠っていたらしい私の心臓は、あまりのことに一瞬だけ鼓動を止めた。
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