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魔女様とカフェ店員と騎士団長様 3



 ようやく離された手。……なぜなのか、少しさみしいと思ってしまった。

 両手でクマのぬいぐるみを抱きしめると、くったりとなんともいえない安心感だった。


「魔女の家に、用事があったのか……」

「騎士団長様、巻き込んで申し訳ありませんでした」

「勝手に足を踏み入れて、迷惑をかけたのは俺の方だ。魔女は、約束を破ることを嫌う……。すまないな、最近王都で不審な事件が多いから、巡回をしていたんだが、魔法の気配を感じた先に君がいて……」


 私は、顔を上げてまっすぐ騎士団長様を見つめる。

 騎士団長様は、巻き込まれただけなのに、優先して私のことを守ろうとしてくれた。


「強い魔力の気配に足を踏み入れようとするから、何かに巻き込まれたのではないかと……」


 しかも、あのとき手を掴んだのは、私のことを心配してくれたからだったらしい。


「ありがとうございます。私のことをかばってくださって、うれしかったです」

「……当然だ」


 さすが、騎士団長様ほどのお方は、高潔だ。

 自分よりも、一般市民の身の安全を優先するなんて。

 感動して見上げた騎士団長様の耳元は、なぜか少し赤い。


「さ、リティリア嬢。家はどこだ? 送っていこう」

「……ありがとうございます。でも、すぐ近くのアパートなので、大丈夫ですよ」

「アパート? ……一人で住んでいるのか?」

「ええ。王都には、私一人で来ました」


 王都に来るまでには、いろいろなことがあった。

 没落してしまったレトリック男爵家には、私に支援するほどの余裕はない。

 だから、私はカフェで働いて、自活している。


「――――最近は王都も物騒だ。令嬢が一人暮らしなんて……」

「え?」

「……やはり、送っていこう」


 籠を抱えたまま、なぜかもう一度私の手を掴んだ騎士団長様が歩き出す。

 歩幅が(の?)違うその歩みに、自然と小走りになりながら進む。


「あの、騎士団長様」

「……断るのはやめてもらえないか」

「……ふふっ、私の部屋は、反対方向です」

「……そうか」


 歩みを緩めた騎士団長様が振り返る。

 慌てて反対方向に歩き出してしまうなんて、どこか子どものような騎士団長様が急にかわいく見えてしまって、私はつい笑ってしまった。


 騎士団長様は、私を小さなアパートの前まで送ると、籠を私に手渡した。


「また……。会いに行ってもいいだろうか」

「え? いつでもお待ちしています」


 次の瞬間、なぜか冷たい表情も鋭い視線も完全に消して微笑んだ騎士団長様の顔は麗しすぎて、たぶん一生忘れることなんてできそうもない、そう思ってしまった。

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