魔鉱石の色を染めて 3
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あれから一月が経過した。私は、ものすごく気合いを入れて、魔鉱石の採掘場に行く準備を進めている。
一緒に来ていただく予定の方々は、信頼においては弟のお墨付きだ。
ようやく整った準備。
騎士団長様と夜会に参加するためには、もう時間がない。
「姉さんは、人を信じすぎるから、人選は僕に任せてよ」
それに関しては、ぐうの音も出ないので、しっかり者の弟に全てお任せすることにした。
騎士団長様とオーナーまで、同意している様子だったし……。そんなに信用できないのだろうか。
そして、オーナーは、一足早く王都へ帰ってしまった。
さすがに、騎士団長様とオーナー不在のままでは、王都の安全を守ることは出来ないらしい。
「騎士団長様、オーナーは大丈夫でしょうか」
「…………そうだな。まあ、先日のようなことが起こったときには、リティリアが助ければいい」
長い沈黙は、きっと騎士団長様やオーナーが、完全に安全ということなどあり得ないという意味なのだと思う。
「そうですね」
頭を撫でてくれる騎士団長様は、私のことを好きだと言いながら、いつも子ども扱いしてくる。
お役に立つところをたくさん見せれば、大人の女性として見てもらえるのだろうか。
そうであれば、いつも以上に今日はがんばらなくては!!
「……がんばります! 採掘できる人が増えれば、魔鉱石の供給も安定するでしょうから!」
「ああ……。そうだな」
私と一緒に入れば、次からは妖精たちは、その人たちを通してくれる。
もちろん、妖精たちは人間とは違う思考をしているので、お気に召さなければ入れてもらえなくなるけれど。
「では、行ってきます!」
出かけようとすると、騎士団長様は無言のまま私が背負おうとしたリュックを取り上げて、片方の肩にかけた。
「…………え?」
「一緒に行くに決まっているだろう?」
「……特に楽しいことはないですよ? 黙々と掘るだけですから」
「分かっていないな。リティリアと一緒に過ごせるだけで、すでに俺は楽しい」
「うく!?」
さらりと告げられる言葉に、今日も私はノックアウト寸前だ。
「それに、リティリアに贈る魔鉱石をせっかくだから自分で探したい」
「ふぁっ……!?」
見慣れてしまったと思っていたけれど、こうしてみればやっぱり騎士団長様は、信じられないほど見目麗しい。
淡いグリーンの瞳を細めてニッコリ笑った騎士団長様は、その笑顔にどれだけの破壊力があるのかなんて知らないのだろう。
密かに呼吸を整える。私だって、もちろん騎士団長様がそばにいてくれたなら、嬉しいし楽しい。
「…………わかりました。行きましょうか」
「…………」
「あの?」
少し眉を寄せたあと、騎士団長様は、ゆるく首を振って、なにもなかったかのように微笑んだ。
「何でもない」
「……そうですか?」
だからそのときは、気にもとめなかったのだけれど……。
騎士団長様の嫌な予感はよく当たる。
だから、あとになって思えばきちんとそのことを伝えて欲しかったけれど……。
聞いたところで、結果は変わらなかったのだろう。
私はあきらめのため息とともにそんなことを思うことになるのだった。
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