紫色の瞳をした姉弟 2
「ところで姉さん」
ソファーに隣り合って座った、私と弟。
並べられたコーヒーは、弟がブラックで、私の分にはミルクがたっぷり入っている。
別れる前は、コーヒーなんて飲まなかったのに、と密かに衝撃を受ける。
そうよね。この時期の三年間を甘く見ていたわ。
「姉さん?」
「あっ、ごめんなさい。何かしら?」
「……そのポケットにある魔鉱石」
オーナーが魔法で作ってくれたワンピース。
たくさん詰め込んでいた魔鉱石を、着がえたときにスカートのポケットにもう一度詰め直した。
だから、今私のポケットは、不格好なほどパンパンに膨れている。
「そんなにたくさん見つけるなんて、もうあの場所に行ったの?」
「……少し、どんぐり山を散策するだけのつもりだったのよ?」
「うーん。なんて言うか、昔から姉さんは、周囲を巻き込んで、無自覚にいろいろ引き起こすからなぁ」
……そんなことは無いと思う。
そう思うのに、騎士団長様と出会ってからの日々、魔女様に妖精に魔鉱石。
……少なくとも、騎士団長様は巻き込まれているわ!?
「まあ、巻き込まれる人たちは、たいてい自分から姉さんのために飛び込んでいる気がするから、まあそのままの姉さんでいればいいと思うよ?」
弟が、どこか辛らつな言葉を告げながら、天使のように笑うのは、以前と少しも変わらなかった。
***
そのあと、弟に連れられて入った私の部屋は、あの日のまま整えられていた。
クローゼットには、真新しいワンピースといくつかのドレスが並んでいる。
「これは……」
「最低限の荷物で来ると思ったから、用意しておいた」
「ありがとう……。でも、こんな贅沢」
「もう、レトリック男爵家は、完全に持ち直した。……そうだね。何度も、あの人が支援してくれて、王家からの支援が途絶えていたことも解決してくれたから……」
「あの人って」
そう、騎士団長様と私の噂を聞きつけた弟からの手紙には、騎士団長様がずっとレトリック男爵家を支援してくれていたことが書かれていた。
私が、そんなことも知らず、カフェフローラで幸せに過ごしていた間も、騎士団長様は、私たちを助けてくれていた。
私のことを心配して、探し出して、コーヒーを飲みに来てくれていた。
「でも、僕は公平だからね。ヴィランド卿だけを応援するのは、気が引ける」
「……え?」
「カフェフローラ、あの店をシルヴァ様が作ったのは……」
弟はあいかわらず、天使みたいな笑顔で、どこか楽しそうに続けた。
その言葉を聞いてしまったら、きっともう元には戻れない気がする。
それでも、弟はほんの少し目線を下げたあと、私に告げる。
「……姉さんを守るためだ」
レトリック男爵家の、没落には、王族まで関わっていたという。
弟の言葉を聞いたとき、今も無事でいられて、とても幸せに過ごせているのは、オーナーと騎士団長様のおかげなのだと、鈍感な私は、ようやく気がついたのだった。
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