お祭りと妖精の花冠 2
すっかりはしゃいでしまって、我に返ったときには昼過ぎになっていた。
「に、日程が!!」
「問題ないだろう。まあ、残念ながら、今夜の寝床は馬車の中になりそうだが」
「……はしゃぎすぎたせいですね。すみません、きしだ……アーサー様」
「それに、この祭りの本番は今からだ」
そういえば、花の妖精と恋人のお祭りだって、騎士団長様が言っていた。
あの、広場の中央にあるたくさんの花冠。
きっと、お祭りで使うのね。
ある人はどこか緊張したように、ある人はうれしそうに、ある人は恥ずかしそうに、花冠を受け取っていく。
「少し待っていてくれるか?」
「あ、はい……」
両手に綿あめと串焼きのお肉を持った私は、広場の端に取り残された。
少しして、騎士団長様は花冠を手にして戻ってくる。
「わぁ、綺麗ですね!」
騎士団長様の、どこかそわそわと緊張した様子に首をかしげる。
「……愛している」
「…………っ、!?」
唐突な愛の告白に驚いていると、騎士団長様の手を離れた花冠が、私の頭にのっていた。
「……えっと、あの」
「はは、柄にもないことをしたな」
「アーサー様?」
「この祭りで、花冠を渡して愛をささやけば、その恋人たちはずっと幸せにいられるらしい。だから」
顔が熱い。いくら、日が高くなったからって、いくら何でも暑すぎる。
口から心臓が飛び出しそうに苦しい。そして、泣いてしまいそうなほどうれしい。
色とりどりの花冠。
騎士団長様は、どんな表情で受け取ったのだろうか。
「うれしいです」
「ああ……」
「これで、ずっと一緒にいられますね?」
「そうだな。ずっと一緒だ」
珍しいことに、花の妖精が飛んでいるのを私は見た。
森の中でもないのに、妖精を見かけるなんてとても珍しい。
「……騎士団長様。えっと、少しの間持っていてください」
「ん? ああ」
私は、串焼き肉と綿あめを騎士団長様に渡して、花冠をそっと外す。
「少しかがんでもらえませんか?」
「……うん? これくらいか?」
それでも、まだ少し高いから、背伸びをして、手に持った花冠を騎士団長様の頭にのせる。
「……私も、愛しています」
ひらひらと飛んでいた花の妖精が、私たちに金色の光を落として遠くへ飛んでいった。
領地に着くまであと少し。
きっと、この瞬間は、年をとっても懐かしく思い出すに違いない。
「年をとっても、二人で今日の思い出話ができそうですね?」
「はは、ずいぶん先の話をするな?」
「だって、そのときも一緒にいたいから」
騎士団長様は、少しだけ眉を寄せて笑った。
安全とは言えない騎士のお仕事について考えたのだろうか。
「……そうだな。きっと、笑って話せるな。それに、年をとってもリティリアはかわいいに違いない」
「それをいうなら、アーサー様こそ、すてきに違いないです」
「そうか、期待に添えるように努力しよう」
けれど、そんな表情を次の瞬間には押し隠したように、騎士団長様は朗らかな笑みを私に向けたのだった。
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