領地と秘密の瞳 3
なぜか、子どものように手を引かれて、用意されていた馬車に乗せられる。
「あの、乗合馬車で行こうと思っていたのですが」
「予想通りだな。……危険だとは思わないのか? 先日、屋敷に泊まった時にしても、君は無防備すぎる」
「うっ、それは言わない約束です」
基本的に早番でカフェフローラの開店から働く私の就寝時間は、とても早い。
しかも、最後に料理長が振る舞ってくれた飲み物には、リキュールが使われていたらしい。
「寝顔が、可愛らしかったな……」
「っ、!?」
真っ赤になった私を見つめて、照れるでもなくそんなことをつぶやいた騎士団長様。
馬車の中で握られた手は、まるで子ども同士がつないでいるみたいだ。
「……か、からかわないで、ください」
「そう感じたか、すまない。だが、きちんと耐えた俺を褒めてほしいくらい、あの日のリティリア嬢は、可愛らしかった」
「…………!?!?!?」
あ、なんだか、馬車の中の温度暑くないですか?
え、騎士団長様まで、自分で言っておいて、照れるのはやめましょう?
馬車の中の温度は妙に暑くて、それなのに私たちの手は握られたまま、離れることはない。
「……レトリック領か、久しぶりに行くな」
「そうですね。私も三年ぶりです」
離れるときには、私くらいの背丈だった弟も、もうすぐ成人だ。
故郷に思いをはせる。
「…………ところで、君のことを王弟の私兵が嗅ぎ回っていた。レトリック領の復興に王家からの支援がなかった件だが、王弟が責任者だった」
「騎士団長様……」
「……なぜ、レトリック領と君が目をつけられたのか、心当たりはあるか?」
「はい……。魔鉱石という意味では、思い当たることがあります」
「魔鉱石か……。レトリック領が、主な産出地域だが、採掘方法は謎に包まれているらしいな」
「はい……。幼い頃から決して秘密を漏らさないように言われて育ちました」
「そうか……」
そこまで一息に言った騎士団長様は、ほんの少し逡巡するかのように黙り込んだ。
そして、長く息を吐き、私の目をまっすぐにのぞき込んだ。
「俺は、なんとしても、君を守り抜く」
伏せられた顔のまつげが、あまりにも長いから、思わす見惚れてしまいそう。
握られた手は、そのまま騎士団長様の口元へ、そっと寄せられて口づけられる。
「……リティリア嬢、俺にすべて話してくれるな?」
甘い口づけと動作とは裏腹に、騎士団長様の目は全く微笑んでいなくて、嘘なんてつけない圧力を発しているようだった。
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