騎士団長様のおもてなし 3
黙り込んでしまった私たちの目の前に、差し出されたのは、きらきらと宝石みたいにカラフルな氷が浮かんだソーダ。
そこに浮かんでいるピンク色の薔薇の花を形づくったアイス。
添えられたさくらんぼは、魔女様からいつも分けていただくものと同じ、七色をしている。
「すごい……。この氷、本物の宝石みたいですね」
「そうだな……。手が込んでいる」
氷が溶けてしまう前に、一口飲む。
今度はクルクルとかきまわして飲む。
「思った通り……。氷が溶けると、味が変わるんですね」
溶けた氷が、ソーダをほのかに紫に染めていく。どこか、私の瞳と似た色にも思える。
「いい香り……」
パクリと食べたアイスクリームからは、華やかなベリーと薔薇の香りが漂った。
「すごい!! ものすごく美味しいです」
感動してしまった私は、思わず顔を上げて騎士団長様に笑いかける。
騎士団長様の男らしい喉元が、ゴクリと音を立てた気がして、ほんの少し首をかしげる。
「喉が渇いたのですか? 騎士団長様も飲みましょう?」
「いや、ちが……」
「え?」
「……いただこう」
騎士団長様は、氷が溶けるのも待たずに、ソーダを一気飲みした。
そういえば、騎士団長様のソーダには、アイスクリームがのっていないわ?
やっぱり、ブラックコーヒー派の騎士団長様は、そこまで甘いものが好きではなさそう。
料理長は、きっと、緊張した雰囲気を和らげるために、出してくださったのよね。
固形物だったら、こんなに爽やかに喉を通らなかった気がするもの。
アイスクリームは、冷たくて、甘さ控えめで、口の中でなめらかに溶ける。
それでいて、氷とソーダに当たっていた部分は、サクサクしている。
……この部分が好きなの。
「うう、この店に毎日通います」
こんな美味しいものが、出てくるお店。
カフェフローラも大好きだけれど、こんなお店があったら、私は常連と言われるくらい通うに違いない。
「ああ、ずっとここにいてくれ」
「………え?」
「うしろで小躍りしている料理長は、君のために毎日作るだろう」
「っ……!?」
しまった、このデザートを作ったのは、ヴィランド伯爵家の料理長だったのだわ!
まるで、催促したみたいになってしまったわよね。
「……あの、今の言葉、なかったことに」
「いいや。……料理長、そんなところからのぞいていないで、リティリア嬢に挨拶するといい」
私に挨拶をするために出てきてくださった料理長に、挨拶を返す。
聞くなら今だわ!
「……あの、この氷に使われているベリーは、何という種類でしょうか?」
「お目が高い!! それはですね……」
そこからつい、使われているベリーの種類や、宝石みたいな氷の作り方など、気になることを質問してしまった。
それを皮切りに、料理長と意気投合してしまった私は、騎士団長様を置き去りに料理談義に長時間花を咲かせてしまったのだった。




