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銀の薔薇 2



 オーナーによると、すでに止めることなんてできないほど、王都に噂は駆け巡ってしまったらしい。


「と、言うことは、騎士団長様の耳にも」

「――――入っているだろうな」


 気になることがある、と言っていた言葉は、そのことだったのかしら。

 騎士団長様ほどの方が、そんな噂を流されてしまったら、きっと困るに違いないわ。

 だから、その話をするために、迎えに来ると言ったのね……。


「実は、今日迎えに来てくれることになっているんです」

「そうか、噂は事実か」

「いいえ。全くのデタラメです」

「……しかし、冷酷無比な鬼団長が、かわいらしすぎる店に入っていく姿が多数目撃され、笑わないことで有名な騎士団長が、一人の令嬢を前にまばゆいほどの笑顔を見せていたと……」

「え……?」


 ――――事実である。


「それに、王太子殿下と婚約が内定している姫君から賜った銀の薔薇を、愛しい令嬢に捧げたとか」

「あ……」


 ――――事実である。愛しい、というのはともかく。


「王太子ではなく、姫君は見目麗しい騎士に懸想していて、二人は秘密の恋仲であるという噂は、おかげで立ち消えた」

「っ、なるほど!!」

「……ん? 何が、なるほどだ? ……ものすごく濃い、誤解の香りがしたぞ」


 昨日見かけた、姫君と騎士団長様の、おとぎ話から抜け出してきたようなお似合いの姿が目に浮かぶ。

 それだけで、胸がズキズキすると同時に、納得してしまう。


 騎士団長様と、隣国の姫君が秘密の恋仲というのは、きっと真実に違いないわ。

 だって、平凡な私よりも、姫君の方が、どう考えてもお似合いだもの。


「――――おい。俺が思うには」

「大丈夫です。お二人を応援します」

「いや…………。しまった。余計なことを言ったようだ」

「――――いえ。勘違いする前で、よかったです」


 騎士団長様は、きっと私に、真実を話して協力を依頼するために、帰りに送ると言ったに違いない。

 その時、裏口に騎士団長様が来たという知らせが来る。


「本日は補充もお菓子作りもすでに終わっています。それでは、失礼いたします」

「あ、ああ……。ヴィランド卿によろしくな? ……幼い頃からの婚約者からの婚約破棄にトラウマがあるせいで、自分を妙に卑下するリティリアに、姫君の話は余計だったな」


 後半になるほど小さくなってしまった言葉は、私には聞こえず、なぜか、気まずそうなオーナーに手を振って、私はズキズキ痛む胸に気がつかないように細心の注意を払いながら、裏口へと向かったのだった。

勘違い。たぶん、次回溺愛へのフラグです。

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