術式2
「察しがいいのね。取り敢えずはその認識であっているわ。ちなみにH・Jの隊員はほとんどが後者よ。生まれつき術式回路を発現できている人間はこの日本でも約10人程度でしょうね。」
「マジかよ……。」
日本ではって……世界じゃ生まれつき術式回路が発現している人間がごろごろいるってことなのか……。現実離れ過ぎてにわかには信じられないが彼女の発言に嘘は見られない。
「まあ、回路の大まかな話はこれくらいでいいかしらね。次は術式の種類について説明するから一言一句漏らさないように聞きなさい。術式には【構築術式】 【転移術式】【式神術式】 【解放術式】 【封印術式】 【天文術式】 【操作術式】 【再生術式】 【崩壊術式】の 9つの種類が存在するわ。」
彼女は一息置いて、説明を続ける。
「【構築術式】というものはさっき作って見せた椅子やこの机にも当てはまるわ。何もない空間から【有】に値するものを作り出す術式といったところね。」
「0から1を作り出せるっていう認識でいいんだよな。ただ、物を作れるのはわかったけどもその【材料】は一体どこから取り寄せてくるんだよ。それともあれか? 材料ですらその場で同時に作ってるってことなのか?」
だとしたらそれはあまりにも都合がよすぎないか。それが成立するのならば無限に物を作り出せるということになる。自動車や飛行機なども造作に作れるのはおろか、下手をすれば人間や動物を人為的に作成できるということにもなりえるのではないのだろうか。
「そうね、たしかに材料も同時進行で作ってはいるけど、それは無限に作れるというものではないのよ。【構築術式】を究極まで磨き上げることができれば無限に作成することも可能でしょうけども歴史上それをなし得たものは一人もいないわ。術式回路の説明については覚えているかしら?」
「ああ、術式を使うために必要な導線みたいなやつだってことは一応理解してる、……つもりだけども」
「その捉え方で正しいわ。まず一人一人の術式回路には限界値【リミット】があってそれを凌駕するエネルギーを使用すると術式回路自体が限界突破【オーバーアウト】する。一度限界突破した回路は伝達系そのものが欠落して二度と術式を扱うことはできないという厄介なハンデが存在するのよ」