術式
「腰掛けるって……これ耐久性は大丈夫なのか? 座ったとたんに壊れるんじゃ……せめてどんな素材で作ったかくらいは教えてくれないか?」
「素材の詳しい説明は事情でできないけども耐久性の方は大丈夫よ。そこら辺の雑貨屋よりかは頑丈にできているわ。」
取り敢えず座らないとまた彼女の不満を買いそうなので恐る恐るその椅子に腰を掛ける。多少ギシギシと怪しい音はしたものの思ったよりちゃんとした椅子だった。
「それじゃ、本題に入るわ。まずあなたに知っていてほしいのは術式の種類、そしてあなたが遭遇したあの影の獣について二本立てで説明するわね。」
彼女は改まって姿勢を正したため釣られてこちらも姿勢を直す。面接みたいだな、これ。
「まずは術式についてね。まあ、簡潔に言うと「術式を扱うための通路」みたいなものね。人には生まれつき術式回路が存在していてそれは何らかの【刺激】を受けることによって発現するものになっているの。外部や内部からの【刺激】を受けなければ術式回路は発現することもないし、ほとんどの人間は術式を知らずに生涯を終えるのだけれど稀に【刺激】を受けていないにも関わらず術式回路が発現する人間もいるけど生まれが特殊だったり家系の影響で生まれてすぐに発現するケースもあるわね。」
魔法……この言葉は小説やアニメだけの常套句だと思っていたが、現代でも存在するのだなとしみじみと感じる。表向きは半信半疑だが反対に心躍っている自分がいるのもまた真実である。
「その術式っていうのは【術式回路】があれば誰でも発現できるものなのか? 体質とかによって回路があっても発現できない奴ってのはいたりするんかな。」
「……そうね。稀に体質異常又は【特質系】の影響によって術式回路が正常に機能していても術式が使えない人間もいるし、その反対もあり得ると思うわ。私の場合、数人しか見たことはないけどね。」
回路がしっかりしていても魔法……いや、術式は使用できない人間もいるし術式が使えたとしても術式回路を元々持っていないものもいるということか。しかし、ここで疑問に感じる点がひとつ浮かんでくる。
「質問ばっかで悪いんだけどその……先天性の生まれつき扱える人間と後天的に術式が【扱えるようになった】人間もいるってことだよな?」
彼女の目が丸くなる。あれ、そんなに変なこと言ったかな……