探索の末
一刻も早くこの【場所】から出るためにやや早歩きで辺りを捜索する。所々に扉があるがほとんどは空室か寝室だけであり、今のところ出口に値する扉は見つけられていない。兎にも角にもこの施設が広すぎる。
名古屋ドーム2~3個ほどの規模があるのではないかと錯覚するほど広大でこちらも疲れてきた。扉の数も徐々に減っていき開く扉も限られ、現在の時刻を確認しようとするも携帯や時計類はどこにもない。せめて部屋の中に一つでもあればいいのだが、それすらもないためそれがより一層自分の不安を駆り立てた。
「どうなってんだよ……ここから出るどころか出口に通じる扉すらないじゃないか……」
それどころか、進んでも進んでも扉の数が減る一方で見ている景色が一向に変わらないのも精神的にしんどい。まるで、同じ箇所を繰り返し歩いているような感じである。あのロリッ娘が言っていたのはこれのことなのだろうか、彼女はこの施設を【トロイの関所】と呼んでおり、脱出不可能とも言っていたな。 状況だけみて考えるとあのロリっ娘からこの施設への出入りの話を事前に聞いていれば状況は少しでも違っていたのではないだろうか。
「……馬鹿か……俺は……こんなところで……」
目先の目的を優先したが故にこの状況を生んでしまったことを大きく後悔する。人の話を聞かないのは自分でも理解しているつもりだが、改めてその性格を矯正するべきなのではないかと本気で考えたが時は既に遅い。取り敢えず手当を受けた部屋へ戻ろうと考えるが果たして見つかるのだろうか。戻ったところでその部屋だと判別できるわけがないため途方に暮れた。
「はあ……。その様子だと、少しは反省したのかしらね。人の話を最後まで聞かない自己チューさんは。」
「……っ!!」
「なによ……衰弱した子犬みたいな眼で見られても反応に困るのだけど。」
後ろを振り返るとロリっ娘がいた。
口調は相変わらずきついが彼女がいるという現実に安心感が湧いてくる。先程までは孤独と圧倒的な空虚感に苛まれていたが彼女に出会った瞬間視界が澄み切った感じである。
「ああ……悪い。軽く迷子になっててな……お前がいて、正直安心してた……」
「まあ、状況から見るに施設の出口を探して、あまりの広さに腰を抜かしてへたり込んでたってところかしらね。ほんと、あなたってどうしようもないわね。」
「……ははは……」
本当にな。何かしら反論しようとしても彼女の言い分は至極正論であるため、乾いた笑いしか出ない。本当に俺ってどうしようもない奴だな……
「はあ……、あんまりいじめるとオペラから苦情がくるからこの辺にしておくわ。時間ももったいないしちゃっちゃと済ませましょう。」
彼女は何もない空間へ掌をかざす。数秒も立たないうちにその場にテーブルと椅子が形成される。それもまるで最初から存在したかのように一瞬で。
「……っ!! なっ……なんだこれ……」
「その反応だと【術式】は初めて見るようね。ちょうどいい、施設外【そと】へ出る前に基本的な知識くらいは教えてあげるわ。そこへ座りなさい」
彼女はたった今作り出した? 椅子へ座るように要求し、恐る恐る椅子へ腰を掛ける。