勇者研修2
研修場は体育館の外の広場を貸してもらっている。
ある程度無茶をしても大丈夫な広さだ。ただ安全面を考慮してガイアさんの空間魔法で結界を張ってもらう。
「さあ、レイ。まずは魔法の実力から見せてもらおうか。」
「はい!じゃあ行きますよ!ファイアアロー」
基本的な魔法だがうまくコントロールができている。ぶれが無く安定している。
ガイアさんは空間ごとファイアアローを打ち消す。
「まずまずと言ったところか。魔法はもういい、武器の腕を見せてくれ。」
「はい、わかりました。」
レイは腰にかけている弓を構える。だが矢はない。
ファイアアローを出し、それを弓につがえた。珍しいな、魔弓使いか。
そもそも魔法使いが遠距離武器を使う意味がないからな。魔法機能増幅なら杖の方が汎用性が高いのでそちらを使う方が多い。
レイの集中力が高まっているのがわかる。
ファイアーアローが完全に矢の形に切り替わっていく。
「すごいな、あの歳で魔力を実体化させるにまで至っているのか。」
そもそも魔法は曖昧なものだ。火の魔法も火のような機能に魔力を変換しているだけだ。
だが実体化させるということは魔力や魔法を物質に変換している。その分威力も増すし現象も具体的になるのだが技術と集中力と魔法に対する理解が必要となる。
「ファイアーアロー」
レイが囁くように魔法の名前を発する。途端に目で追うことができないスピードでガイアさんにファイアーアローが飛んでいく。とんでもない完成度だ。
「ディメンションシールド」
異次元へ攻撃力を飛ばす魔法だ。だが、レイのファイアーアローは次元を突き抜けていく。
ガイアの目つきが変わる。
これは・・・まずいっ!!
「てめえ、今何しようとしやがった?」
ユーリは一瞬でガイアの前に現れ、頭を掴む。
「アガッ、クッ....」
「殺す気だったな?魔力の流れでわかる。新人相手に自分の最大の魔法を使うなんて意味わかんねえ。」
ガイアはユーリの手を振り払う。
「コイツも俺を殺す気だったぜ。目を見りゃわかる。あれは狩人の目だ。獲物を見る目だ。そんな奴に手を抜いていたら俺も殺されんだよ。」
ガイアはもう一度レイに魔法を放つ。だが。。
「魔法がでねえ。」
「危ないから、しばらくは魔法を封じさせてもらった。俺も魔法を発動されると手が出ないからな。」
ガイアがこちらを向いて言う。
「何もんなんだ。アンタ。なんでそんなに強いんだ。」
「そんなもん、勇者守るやつが勇者より弱くてどうするよ。」
ユーリの言葉にガイアが崩れる。
「あんた、無茶苦茶だよ。」
さっきまでの剣幕が嘘のようにガイアが笑顔になった。