勇者研修
研修場に移動した。役場の近くに体育館がありそこの一角を研修場として利用させてもらっている。
「更衣室で練習着にまず着替えてくれ。サイズは恐らくMサイズで大丈夫そうだな。2着支給するから洗って使用してくれ。着替えた後からタイムカードを切るから。」
勇者研修は体を動かしたり演習を行ったりと通常の服だと損耗が激しい。今まで全てを勇者側が負担していたが、こういう細かいところから直していくのが重要なのだ。そして研修もきちんと給料を支払う。
「はい、ありがとうございます。ここでは何の研修を行うんですか?」
「まずは、実際にどれくらい動けるのか見たい。元勇者の方を指導官としているので心置きなく暴れてくれ。」
元勇者も積極的に採用している。こちらはボランティアで募集はしている。削るとこは削らないと正直厳しいのだ。元勇者だけあって人の役に立つことに対して積極的な人が多い。交通費とあと備品に関しては経費で支給させてもらっている。
「わかりました。じゃあ着替えてきますね。」
レイが更衣室に入っていく。
今の間に指導官のガイアさんに研修場に着いた報告を入れる。
「もう着いたのか。」
背後から声がする。
「驚かさないでくださいよガイアさん。流石ですね。引退されても一瞬でここまで来れるんですね。」
瞬間移動の魔法でここまで来たんだろう。空間系の魔法適性を5持っているガイアさんは人の背後を一瞬で取れる。丁寧に揃えられた白い髭を触りながらガイアさんは笑う。
「まだ現役には負けんよ。ところで今回のやつはどうなんだ?少しは見所ありそうか?」
細身ではあるが正直現役勇者と並べても全く遜色はないくらい強い。というか上位に食い込む。後輩育成に専念すると引退をした。そんなガイアさんだが最近の勇者研修にくる人たちの物足りなさに不満気だ。
「やる気はありそうですよ。魔法適性も火と風を2持っています。その上で魔法使いではなく勇者を選んでくれたんですから、頑張って育てていきましょう。」
「魔法適性があるやつなんて久しぶりだな。久しぶりに腕がなるな。」
ガイアさんが嬉しそうに腕まくりをする。
「着替えてきました。あれ?そちらの方は。」
着替えが終わったレイが更衣室から出てくる。かわいい顔をして意外と逞しい体をしている。無駄な肉がない。
「ワシは指導官のガイアという。これから君の指導をさせてもらう。よろしく。」
「こちらこそ、よろしくお願いします!ひょっとして空間魔法使いのガイアさんですか?瞬間移動の使い手の!!」
レイのテンションが爆上がりしている。この子ひょっとして勇者ファンなのかな?
勇者ファンというのは一定数存在する。特に目立つ功績がある人や美しい人はファンが多い。
「ああ、早速だが君の実力を見させてもらいたい。」
少し照れ臭そうにしながらガイアさんは研修場にレイを誘導していく。