勇者採用面接
課長室に移動する。勇者課は他の役場とは別棟で建てられている。役場でも独立した機関となっている。ハブられているとも捉えられるが。
幸いある程度の予算が割り当てられている。勇者への待遇は悪いがそういうところには金がしっかり割り振られるのだ。公務員万歳だな。
「どうぞ、かけてください。」
ソファに少年をかけさせる。まだ幼い印象があるし、こういう場所には慣れていないのだろう、緊張が伝わってくる。
「楽にしていいよ。勇者スタッフの応募ということでいいかい?」
「はい、そうです。昔勇者に村を助けられたことがあって、それ以来勇者に憧れてきたんです。」
「であれば、早速だが君を雇いたい。その前に雇用形態をどうするかだな。短時間勤務か長時間勤務どちらがいい?研修期間は一週間でその間は時給は900円になる。そこで適正をみて本採用するかどうかを決定する。」
「えっと、いいんですか?何も聞いていないのに採用で。」
流石に性急すぎたか、確かに名前すら聞いていない。人が足りていないのと久しぶりにまともな人が面接に来たのでテンションが上がってしまった。
「すまない話が飛んだな。正直にいうと今は勇者全体の人が足りていない状態で急いでしまった。まずは君のことを聞かせてくれ。名前は?」
「なるほど、そうなんですね。名前はレイと言います。15歳です。」
「レイか、私はユーリという。戦闘経験や魔法の適正などはある?」
「はい、戦闘経験は父と一緒に動物を狩ったことがあるくらいです。魔物と戦った事はありません。魔法適正は火が2と風が2です。」
魔法適性があるのに勇者に応募してきたのか。これはちゃんとやる気があるな。
ちなみに魔法適性2だと魔法使いでも採用される。魔法使いでの採用であれば適性2でも時給3000円が最低ラインだ。
「魔法適正があるなら魔法使いでの採用もある。そちらの方が給料は高い。それでも勇者としての採用で問題ないか?」
若者の時間を無駄に奪うわけにもいけないので念押しをしておく。
悲しいがそれだけ勇者の待遇は良くない。魔法適性があっても手当がつかないのだ。
以前はそれを知らないで勇者に応募してきて、すぐに辞めた者もいた。
「はい、僕は勇者になりたいです。」
レイは真っ直ぐ俺の目をみて答えた。
「よし、もう一度いうが君を雇いたい。雇用形態はどちらにする?他の仕事もしているなら慣れるまで短時間で、その後長時間に契約の変更もできるしある程度融通はきくよ。」
長時間契約の場合はほとんどが研修期間中にやめてしまうので、この辺りは慎重にいく。必死にホワイトにしてやろうとしているが仕事内容は変わらないので危険は伴う。
「長時間で大丈夫です。今は魔道具の販売をやっていますが、そこはすぐにやめてきます。」
どこまでやる気があるんだろうこの子。憧れとのギャップでやられたりしないか心配だ。
「なら今日からでも研修を始めたい。研修場所へ移動してもいいかい?」
「はい、大丈夫です。これからよろしくお願いします。」
研修場へ今から行くと連絡をする。指導官も暇だったのか心なしか嬉しそうだ。
「カレン、この子を採用するから手続きを進めていてくれ。早速だが研修場に言ってくる。」
レイの資料を渡しながらカレンに採用したことを伝える。
「マジですかユーリ先輩。やった!かわいい男の子だ!!これからよろしくねレイ君!バッチリ手続きしておきますよ先輩。」
カレンはレイのことを気に入ったようだ。
「いってらっしゃーい!頑張ってねレイくん!!」
俺いってらっしゃいなんて言われたことねーけどなと思いながら研修場に移動する。
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