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スピオネージ・フリューゲル  作者: レイラレイラ
1/1

1 全ての始まり

初めましてレイラレイラもといレイラです。


二次創作から始まり、オリジナルの小説が書きたくなって一念発起してみました!


頑張りますので、これからよろしくお願いいたします!

「ん…………」


 カーテンの隙間から溢れる日の光が朝を告げ、私は上半身だけを起こす。


 するりと毛布から出てきた身体には一切の着衣が見受けられず、傍目からみても私ことシャルロット=テラ=フェザートレイルは裸であることが分かるでしょう。


「すぅ…………すぅ……」


 隣から発せられた寝息に微笑みながら彼女、イリア=マスティランの陽光に照らされてきらきらと輝く腰まで伸びた銀髪に触れる。


 イリア…………親しみを込めてリアと呼んでいるこの少女は私の従妹にあたる貴族のご令嬢。


 ああ……本当に可愛いな。


 早鐘のように脈打つ鼓動が自らの衝動を後押しするように、私の唇は彼女へと吸い寄せられ―――――


「シャル様にイリア様!! また貴女たちはそんなふしだらなことを!!」


 ――――ることはなく、メイド服に身を包んだ青髪青目の幼げな少女の悲鳴にも等しいほどの大声に止められる。


「ふわぁ…………ふしだらじゃないよぉ~。裸で寝るとねぇ、皮膚呼吸とか発汗作用が良くなってぐっすり眠れるんだよぉ」


 さすがに私のメイド…………ファル=レトロイデの叫びにはリアも目を覚ましたらしく、欠伸をしながらも説明をしていた。


「だとしてもです!! それでしたらご自分のベッドでしてください!! シャル様の女の子好きがこれ以上加速したらどうしてくれるんですか!!」


「あ、これ私の提案だから大丈夫だよ。せっかく愛しのリアと(裸で)寝られる知識を見つけたんだもん。利用しない手はないよね」


「どこが大丈夫なんですか!! もうやだ、この百合王女…………」


 王女。


 それが指す言葉の意味はたった一つ。


 シャルロット=テラ=フェザートレイルはこの国の王女であり、いずれ国を治め導いていく少女だということだ。


■■■■


 王立フェザートレイル女学院学生寮の自室でのやかましくも心踊る朝の時間。


 今日の朝のメニューは薄いハムとしゃきしゃきのレタス挟んだサンドイッチとスクランブルエッグ、そして三日に一度取り寄せる高級茶葉を用いた紅茶。


 ファルの用意してくれた朝食がとても美味しいのはいつものことだけど、お礼のハグとともに感謝の言葉を述べると――――


「い、いえ。シャル様のお世話は私の役目ですから…………」


 ――――と言って顔を赤らめるその表情が可愛いのでいじめたくなるのだけど、それをするとリアが不機嫌になるから控えている。


 朝食を終えてホームルームが迫っていることに気付き、再び夢の世界に旅立ったリアを背負って教室へと駆ける。


 寮から校舎に入り、二百メートル以上はあるだろう廊下を越えて私達の二年F組の教室に到着する。


 時刻は八時二十五分、始業時間は八時三十分なので滑り込みセーフって感じ。


「おーシャルっちじゃん! おっはー」


「おっはー、ペイちゃん。今日も可愛いね~!」


 王女の私にもきさくに挨拶してくれる活発そうな印象を受けるこの女の子はペイル=カルラエラ。


 襟足あたりで切り揃えられた茶髪のボブカットが特徴的で、貴族の出でこそないものの成績は学年でも五本の指に入るほどの才能持っている。


「おーあんがとね! そういや聞いた? また国境近くで子供の誘拐事件が起きたらしいよ!」


「うん、聞いたよ。憲兵にも少なくない被害が出たんだってね」


 当然、その手の話しは王女である私の耳にも入ってくる。


 そして、下手人の情報についても。


 王女としても一個人としても不甲斐ない、そう思うが私たちにはどうすることもできないのだから。


 チャイムが鳴り、ペイと別れてリアを隣の席に座らせてから自分も適当な席に座る。


 うちの学校は決まった席はなく、基本的に自由席だ。


「ファルも座ったらいいのに」


「いえ、私は従者の身です。籍こそこの学院に置いてはいますが、通常の生徒同様の待遇を受けるのは分不相応かと」


 本当に頭が固いなぁと思考していると、教室の扉が開き二十代ぐらいのグラマラス美女が威圧的な雰囲気を放ちながら入ってくる。


 名をグレイ=リズダムといい、鬼の戦闘教官としても有名な女性だけど色気だけなら男が群がるほどだろう。


 一度あの色香に負け、少しだけ堪能しようとしたら拳骨を振るわれた。


 もっとも彼女の拳が当たる前に回避し、撤退していたために問題はなかったのだけど。


「おーっし、そんじゃ朝のホームルーム始めっぞ。その前に…………おいシャルロット、こっちこいや」


「はーい!」


 たったったと元気よく駆けていくと、予備動作もなく拳骨が振り下ろされた。


 当然予期していた私は、異空間から黄金の光を帯びた剣を取り出し拳骨を受け止めた。


 鞘から抜いてはいないから、グレイ先生の手に怪我はない。


「ちっ。相変わらず《異能》の展開の速度だけは一人前だな」


「お褒めいただき光栄だよ、グレイ先生」


 この世界には大きく分けて魔術と異能という二つの特別な力があり、国ごとにその適性は異なってくる。


 魔術は使おうと思えば修練次第で身に付けられる技術的なものに対し、異能とは天性によるもの。


 誰にでも発現するわけでもないし、逆に複数の異能を所有するものもいる。


 異能にはランク付けがされており、発現のしやすいCクラスとBクラス。


 一万人に一人の確率のAクラス。


 一国に一人いればいいと言われるSクラス。


 五十年に一人生まれるかどうかと言われるSSクラス。


 そして、私が異空間から剣を取り出した異能…………存在さえも疑われた伝説のSSSクラス。


 それがSSSランク異能【聖剣の主(ソードマスター)】。


 自らが主を決めるとされる聖剣の全てを使役し、いかなる場所にあろうとも召喚する異能。


 グレイ先生もそれを理解しているだろうし、深追いはしてこない。


 実に楽しい時間だったけど、耳に掛けているイヤーカフから僅かなノイズ音が混じった十代半ばの若い男性の声がしてくる。


『シャーレイ、時間だよ。早くいつもの場所へ』


「――――了解。すぐに向かうね」


 私はリアとファルに目線を送り、呼び出しの合図を二度のウィンクで伝える。


 普段眠りっぱなしのリアも私の合図だけはすぐに気づき、即座に行動を開始。


 ファルもそれに続いて教室から出て、私が出るまで待っている。


 その異様にグレイ先生もクラスメートも私たちがやろうとしていることに理解があるために動揺しているものはおらず、家族を送り出すような気軽さで「いってらっしゃい」と言ってくる。


「また任務か?」


「うん。今回は…………ちょっと、めんどくなりそうだけどね」


「そうか。必ず帰ってこいよ」


「はいはーい。そんじゃ、行ってくるねー」


 クラスの暖かい空気を背中に感じつつ、私たちは学院のヒラヒラとした制服を踊らせながら教室を飛び出した。




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