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強者だらけの祭り  作者: 大錦蔵ANDハデス
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ダンジョンの戦闘

※新キャラであるエリア・コート・ストラ・光竜は、『ハデス』さんの考案キャラです。

 晴天の昼下がり、四十代後半のおっさんが羊皮紙を眺めながらとことこ林道をのんびり進んでいた。

 彼の名は ハイアラダニ ブラックメタル ・・・・・・刀の柄部分である目貫のがらをモチーフにした鉢巻きを額に着けているのが特徴。

 そして彼の左腰に日本刀、右腰にレイピア・新月刀、背中部には巨大な諸刃の西洋剣、最後に身に着けている着物の懐には脇差が装備してあった。

 代わりに防具は何も身に着けていない。


 「さて、久しぶりに隣国に来たものの、ここら辺は土地勘があまりなくってね・・・・・・砂漠龍の住処である枯草山の居場所はどこだろうか・・・・・・?

 誰か住民を見つけられれば、道案内を頼めるのに」


 ハイアラダニは数時間前に、彼の出身国の冒険者ギルドから、名指しで龍討伐の依頼クエストを依頼されたのである。

 今は国境線を抜けたところ(ちゃんと外壁門番にパスポートよろしく通行手形をていして合法的に入国している)


 そよ風が流れている時に、何の脈絡もなく何者かが、広葉樹の太い枝からハイアラダニの元まで猛スピードで飛び降り、両手に持っている薄く異様に長い諸刃の剣を、彼の首めがけて容赦なく薙ぎ払う。

 いきなりの奇襲に、ハイアラダニは羊皮紙を懐に入れ、「よっと」と呟き、屈んで難なく避けた。

 敵の剣戟を見上げるよう観察した彼は、剣が通過した部分の景色がずれて歪んでいることと、素振りしたことによって本来生じるはずの風切りの音と風圧が一切無いことに気づく。


 これで敵の攻撃が止む訳もなく、膝立ち状態のハイアラダニの頭を狙って何者かは着地した瞬間に右手の剣を勢いよく振り落とした。

 面打ち攻撃に対し、ハイアラダニは右側に横転しながら語る。


 「奇襲なら相手の死角から狙わないとあんまり意味ないよ?

 それともおじさんの事を舐めているから正面から見え見えの攻撃を仕掛けてくるのかな・・・・・・。

 お嬢さん?」


 敵の正体は、腰まで伸びている金髪を持つ高身長でグラマラスな女性だった。

 戦闘時特有の気の引き締めのせいか、常に仏頂面を保っている。


 尋ねられている彼女は、ハイアラダニの質問を無視して無言のままその二つの刃で左上から右下へと袈裟斬りを繰り出す。


 「やれやれ、しかととはおじさんのハートが傷つくよ・・・・・・ところでお嬢さんの名前は?

 手前はハイアラダニと申しますよ」

 屈んだままの姿勢で右に横跳びで回避したハイアラダニは名乗る。

 

 猛攻の手を止めない彼女は、彼の問いに、やっと閉じていた口を開く。

 「すぐに貴方の命が散りますから、名乗る必要もないと思いますが・・・・・・エリアと申します」


 「エリアちゃんっていうの? 可愛い名前だね。

 ところでエリアちゃんが攻撃した場所の景色が歪んでいるけどもしかして君は空間を・・・・・・いや次元そのものを斬っているよね?

 すごいなぁおじさんも剣の修行に励んでいるけど次元なんて斬ったことないよ?」


 「軽口とは余裕ですね」

 

 木々の陰に隠れたハイアラダニを狙って、エリアは複数の木の幹ごと中段の横薙ぎで払った。

 複数の重い木が鋭く切断されて倒れ、落下音を発し、土煙を微かに巻き上げながら地面に伏す。

 しかしエリアの視界に、狙って攻撃したはずのハイアラダニの死体が見当たらない。

 そう、彼は彼女が刃を振るう直前に、猛スピードで木々の幹を蹴り上げ三角跳びで移動したことによって、凶刃から逃れたのであった。


 一向に反撃してこないハイアラダニに痺れを切らしながら、見失った彼を探すエリア。

 (逃げられたら厄介だ・・・・・・本気でなかったといえ、音速を遥かに超える剣戟を軽々避けられるとは・・・・・・奴はキョウカ、いやゴブリンや竜王クラスの強さに匹敵・・・・・・)

 「おや、おじさんのことを探しているのかな?」


 クールな雰囲気を漂わせたエリアは、表情を崩してはいないが、顔を青ざめ、額に脂汗をにじませている。

 なぜなら自分の左背後・・・・・・それも至近距離からハイアラダニらしき野太い声が聞こえたからだ。

 彼女はなりふり構わず双剣を、声の元目掛けて全力で斬り下げる。

 しかしその攻撃で敵を討つことはできなかった。

 いつのまにかハイアラダニは、エリアの右傍に並んでいた。


 「うむ、次元破壊系の効果は実は千差万別あって、触れたとこしか壊せない又は攻撃の軌道先ごと破壊できるとか、破壊効果をしばらく残せることができる・できないとか、異空間に通ずる穴を生み出せる・生み出せないとかいろいろあるんだ。

 君のはどのタイプかな?」と、長々と語りながらハイアラダニは着物の袖口から手拭ぬぐいを取り出し、歪んでいる空間目掛けて投げる。

 特に斬られた空間に通過した手拭いは切断されることもなくふわふわと漂った。


 「繰り出された『この剣戟』は、切断効果を長時間残すことはないみたいだね?」

 と口にするハイアラダニに、エリアは突きで攻めようとする。まあ彼は後方に跳んで避けたのだが。


 ハイアラダニが草むら上に着地する直前、エリアは叫んだ。

 「コート! 今だ!」


 「おや?」と、声を漏らすハイアラダニの足元にある草むらは消失し、代わりに巨大な正方形の落とし穴が瞬間的に出現した。

 大型馬車を丸呑できる程広く、底が見えず光が届かない程の深さを持つものだ。落ちれば飛行能力を持たない限り脱出不可能だろう。

 ハイアラダニは確かに落とし穴に引っ掛かり地中に入る。

 しかし彼はただ茫然自失になり、あきらめてるわけではない。

 彼は落下しながらも石壁に寄り添い、その壁に蹴りを入れた。

 蹴られた部分は抉り潰される。簡易的な足場の出来上がり。

 それを利用し、ハイアラダニは蹴りを入れた足に力を入れ、上空目掛けて高く飛翔した。

 そして地表にまで届き地面を片足をのせた彼であったが・・・・・・。


 「ん? うわっぷ! 煙!?」

 いきなりハイアラダニの顔面に、どこからともなく飛来してきたカプセルタイプの弾が衝突。その弾はすぐに崩れ、そこから白い煙が広がる。


 「ゲホッゲホッ! うわっ目がかゆい!! たまらないっ」

 そうそれは催涙弾。

 激しく咳き込み涙を流すハイアラダニは、先程の涼しい顔が嘘のように取り乱し、千鳥足になっている。


 「よくやったストラよっ!」

 エリアは、その絶好なチャンスである彼の隙を見逃す訳もなく双剣の下段の横薙ぎを、彼目掛けておもいっきり繰り出そうとした。

 やむをえずハイアラダニは落とし穴に入り、撤退しようとする。


 穴に落下していくハイアラダニを見下ろすエリアは、独り言とは思えない言葉を述べた。

 「コート。ダンジョンの別の入り口を開け、私は再び剣聖に奇襲を仕掛ける。

 ストラは鉛玉を連射し、剣聖の体力と精神力をできるだけ削げ」

 エリアが言い終えた頃に、彼女の傍に、ハイアラダニが落ちたのとは別の地下入り口が開いた。

 それは階段で安全に降りれるようになっており、天井には通気口があり、壁には等間隔で光を放つ水晶がはめ込まれてあった。


 

 ※舞台はうってかわって地中の奥底の通路へと移ります。

 

 「やれやれまんまとはめられたよ・・・・・・」

 地表からハイアラダニが今いる地中の通路まで、12階層分の高低差があるのにもかかわらず、落とし穴に落下した彼は無傷であった。

 先程彼は猫みたいに何度も宙返りをして落下スピードを抑え、通路の地面に衝突する前に壁を脇差で突き刺してぶら下がり、次に脇差を壁から取り外し降りたのであった。

 まあそんなことしなくてもその程度でダメージを受ける彼ではないのだが。


 ちなみにこのダンジョンも、エリアが通行した階段と同じように所々に光を発する水晶が、壁に埋め込まれている。ダンジョン内の温度は地表よりも少し低く肌寒いが、遺跡や洞窟特有のかび臭さは一切ない。

 

 「おや?」

 自分の周囲に、大量の鉛玉が蠅みたいに縦横無尽のごとく飛び回っていることに、ハイアラダニは気づく。

 喉元や眼球や鼓膜を狙って襲ってくる弾丸を、彼は虫でも払うかのように素手で難なく弾いた・・・・・・が。

 彼の空拳で崩れたかに思えた鉛の塊が落ちることはなく、執拗にハイアラダニを目掛けて殺到する。


 (ふむ・・・・・・必中効果を持っているっぽいね?

 多分避けたり防御しても意味はないだろう・・・・・・ならば対策方法はただ一つ・・・・・・)


 ハイアラダニは口元を曲げて呟いた。

 「被弾しても痛くならない程、弾丸を粉々に砕ければいいだけの事っ!!」

 彼は手刀で、数多の飛び交う鉛の塊をこれでもかと衝撃を加えた。

 ほんの数秒で、ほとんどの鉛玉は粉末状になり、力なく標的であるハイアラダニに当たる。

 しかし何者かの連射の攻撃で、ハイアラダニも少しはダメージを受けた。

 「うわっ!? 粉が目に入ったっ!」

 そう、彼は紛れもなく人間。目や口内は脆いのである。

 まあ何の奇遇か、ハイアラダニは今回砂漠地帯に住むドラゴンを討伐するために入国してきたので、防塵マスクとゴーグルを所持していたのだ。彼はそれらを装備する。


 (うーん耳当ても欲しいな・・・・・・さて、そろそろかな?)

 何の脈絡もなくハイアラダニは高く側転宙返りをした。

 なぜなら・・・・・・。


 「チッ! 足音を抑えるよう忍び寄って死角から狙ったのに、これを避けるんですかっ!?」

 エリアがゴーグルを装備しているハイアラダニの首めがけて右方の剣を薙いだからである。


 「やあ何分ぶりかな? お嬢さん。

 なぜ避けれたかって? 応えは単純。勘。あと、少し空気が乱れてたのを肌で感じ取ったからね」


 (さて・・・・・・)

 ハイアラダニはエリア・・・・・・ではなく彼女の後方にある出入口を眺める。

 彼が着地した時には存在しなかったものだ。


 (大方この地下通路・・・・・・もといダンジョンそのものを操れる者がいるみたいだね)


 考え事をしているハイアラダニに、エリアは声を荒げて尋ねる。

 「ハイアラダニ・・・・・・貴方は私達が住む国でも名が轟いている剣士ですよね?

 なぜ剣士が戦闘時に剣を抜かないのですか? 私達を舐めてらっしゃるのですか!?」

 

 そんな質問に彼は、きょとんとした。

 「え? いいのかい? 剣を使っても・・・・・・素手ごろの状態なら君達にも勝機はあったはずなのに・・・・・・」

 その時だった。


 「ひゃはははっぁハイアラダニ~っ!!

 隙だらけだぜっ! 今度こそ雪辱の恨み晴らしてやらぁっ!!」

 ハイアラダニの真横の空間に穴が現れたかと思えば、そこからキマイラを丸呑みにできそうなエラを持つドラゴンが猛烈な速度で這い出て、彼をその牙で襲う。


 エリアは、その怪物の情報を知っていた。

 奴は海竜皇シーサーペントエンペラー・・・・・・竜王の軍門に下らず、ウェーデンス海海域のヒエラルキーの頂点にたっているモンスターだ。

 そして奴は獣王クラスの相手を瞬殺できるほどの魔力と筋力を有し、生半可な攻撃ではびくともしない強固な防御力を有している。【ちなみにLV81】

 その海竜王シーサーペントエンペラーを、海域の頂点に君臨する化け物を・・・・・・。

 ハイアラダニは相手に一瞥べつもくれず奴の牙を素手で掴み、その腕を反対側へと思いっきり振りぬいた。

 

 「ぐぎゃぁっ! ・・・・・・またかよ・・・・・・」

 それによって、奴は容易く首を引きちぎられたのである。


 この光景を終始眺めていたエリアは開いた口が塞がらなかった。


 呆然としているエリアをよそに、ハイアラダニは呑気に長考する。


 「う~む・・・・・・妙齢の女性を傷つけるのは控えたいところだが、モルセヌ【法王】さんに頼めば生き返らして傷も治してもらえるし、本気出しても大丈夫かな?」

 考えがまとまったハイアラダニは、海竜王の首を傍に投げ捨て、隠している闘気を露にした。


 その闘気に当てられたエリアは正気を取り戻す・・・・・・が、次に彼女の肌全体から汗が流れ出てくる。

 そのころ、ここからはるか遠くに離れた場所にいるガトリング砲を構えた狙撃手と、幼い男の子の喉が干上がり、腹の底から震え上がった。


 ハイアラダニは、刀の柄に軽く手を添え、居合の構えを取った。

 「体術の訓練は終わったよ。

 次からは本格的な剣の修行だ・・・・・・!」



 ***


 

 「何なんだあいつはっ・・・・・・!?」

 ガトリング砲を構えた軍服姿の少女は、千里眼と呼んでも差し支えないような遠隔視の機能を持つモノクルに映る光景を眺め、顔を青ざめながら震えて吐き捨てた。

 彼女の言葉に、近くに椅子に座っている幼年の男が、冷や汗をハンカチで拭いながら答える。


 「先程もおっしゃったはずですよね。彼はウェーデンス国の剣聖ハイアラダニ。

 トックホルムス同盟に加盟している剣士ですよ」


 「それは聞いたから知ってるっ!

 あたしが言いたいことはそこじゃねえっ! 奴は人間なんだろ? 何だあの出鱈目な禍々しい殺気はっ!

 というか、武器も構えずにエリアの猛攻を避けまくるなんて何の冗談だっ!」


 「落ち着いて下さいストラ」


 「落ち着け? 糞餓鬼お前落ち着けってほざいたか?

 落ちついてられるかっ! 竜王軍のゴーレムめ・・・・・・こんなムリゲーをたった前払い金白金貨二百枚払って押し付けやがって・・・・・・もしやあの冷酷軍団の事だ・・・・・・本来の目的は世界征服に邪魔な剣聖を片付けることじゃなく、人間サイドのあたし達を消すために依頼してきたんじゃねえのか?」


 「ストラさん取り乱しては勝てるものも勝てませんよ!」

 そばかすが特徴的な幼年の男が、幼げな外見と相反して仕事仲間を諭す。

 「確かに魔王軍側にとっては剣聖・ボク達傭兵どちらかが倒れても有益な事は変わりません。

 だがしかし、竜王は明らかにボク達傭兵よりも剣聖を警戒していることも確かです。

 貴方は白金貨だけを受け取ったわけではないでしょう・・・・・・『あれ』を使いますよ」


 コートの案に、ストラは「え~・・・・・・」と渋り、苦い顔で返す。

 

 「嫌がる暇などありませんよ。本来『あれ』は、剣聖に奇襲を仕掛ける前にエリアに撃ち込むべきだったんですよ・・・・・・それなのに貴方が『エリアが本気出せば、弱小異国の剣聖など取るに足らないぜ』などと余裕をかますもんですからこんな危機的な状況に陥るんです。

 大方貴方は高く売れるであろう『あれ』を剣聖戦に使わずにどさくさに紛れて後でちょろまかそうと企んだんですよね」


 「うっ・・・・・・!」と、図星を突かれて呻くストラは一回ため息を付いた後、「やれやれ、しょうがないな、出し惜しみしてもあたし達も殺されるだけだし、いいぜ?」と覚悟を決めた。

 次に彼女は先程使用したガトリング砲を脇に置き、アポートの能力で自分の手元にライフルを召喚した。

 そのライフルに装填するのは鉛玉ではなく・・・・・・。

 彼女は、胸ポケットから『あれ』を取り出した。



 ※次からはストラ達がいる地下部屋から、エリア達がいる地下通路へと舞台を戻します。


 (ストラは何をやっているのでしょうか・・・・・・なぜさっさと『あれ』を使用しないのですか。

 剣聖が居合の構えを取っているっていうのに・・・・・・!)

 敵から少しでも離れるよう後退りするエリアの脳裏に、コートの声が届いた。テレパシー魔法だ。


 『エリアさん。先程ストラが『あれ』を射出致しました。数秒であちらに届くはずです』


 コートの伝令にエリアは少し安堵した。ようはほんの少し時間稼ぎすればいいだけの話である。

 剣聖が刀を振るう前に、エリアが技を繰り出した。


 淡く妖しいオーラを纏う双剣で彼女は後退りを続けたまま、自分と剣聖の間にある虚空を乱れるように素振りする。

 ハイアラダニは、エリアが自分に向かって次元切断の効果を付与された斬撃を飛ばしているのだと解釈し、彼女の剣先を避けるように駆け抜けながら刀を抜く。

 しかしすぐに自分に向かって迫りくる斬撃が実は無かったことに彼は気づいた。もしも斬撃を飛ばしているのなら、そこらじゅうの床や壁に深いきずがつくはずだから。

 怪訝に思ったハイアラダニはスピードを緩め、足元の石畳の一つを、エリアが素振りした空間めがけて蹴り飛ばす。

 その四角い石塊は、見えない刃物にでも衝突したみたいに真っ二つに切断され、エリアの足元に落ち、粉々に砕けた。

 いや、みたいではなく本当に目に見えない刃を喰らったのである。


 「・・・・・・ばれてしまいましたか。次元切断能力者の牽制用の技『人蜘蛛アラクネネット』を・・・・・・」

 

 立ち止まったハイアラダニは、後ろ髪を掻きながら喋る。

 「いや~危ない危ないおじさんあともう少しで刃のある空間に突っこんでバラバラになるところだった、斬撃を飛ばすのではなく蜘蛛の巣の形みたいに斬った箇所の斬撃性をしばらくの間維持するトラップ系の術だったんだねさっきの・・・・・・なんだ、実はそういうこともできたんだね」


 「その通りです。私と貴方の間の空間に罠を張り巡らすよう仕掛けました。不用意に近づくことを控えた方がよろしいかと・・・・・・」

 (これで時間を稼げれば・・・・・・!)


 「でも残念・・・・・・」

 ハイアラダニは、刀を納め、代わりに細く鋭いレイピアを抜く。

 「剣で斬る技は、あくまで『面』ではなく『線』での攻撃・・・・・・肉弾やレーザーとは違い、空間を攻撃で満たすことは難しい・・・・・・」

 次に彼はレイピアを握っている腕の方の脇を締め、腰を少しだけ低くし、足を広げ力強く踏ん張る。

 「線と線の間にある隙間を縫うよう攻撃すれば問題ないっ! π線消費1%!!」

 そして彼はエリアに向かって何の変哲もない刺突を虚空【ただしエリアが斬ってない箇所】めがけて思いっきり繰り出した。


 (まずいっ!?)

 魔力が付与されてないただのその突きの余波は、異様な速度を持ち、近くの空気をかき乱し、衝撃波を纏ったものへと昇華している。

 これを喰らえばひとたまりもないと本能で察してるエリアの背後に、正方形の堀が床に出現するようすぐに開いた。コートの能力だ。

 エリアは躊躇いもせずすぐに穴の中に避難する。なんか弾状らしきガラス瓶も彼女の後を追うよう飛来してきたが。

 ハイアラダニが撃ち込んだ暴風は穴の中にも流れ込み、エリアの背中を叩きつけたが、彼女は直撃を受けてないので大事には至っていない。もしもエリアが穴の中に避難しなければ無事では済まなかったであろう。

 そのレイピアが撃ち込んだ空気の弾丸・・・・・・いや大気の津波は広大なダンジョン通路のはるか奥の奥まで突き進むばかりか、衝突した行き止まりの壁すらも押しのけ、深い地下から地表まで膨大な量の土砂事思いっきり吹き飛ばした。


 「さて・・・・・・」

 土煙に包まれたハイアラダニは、エリアが立っていた通路とは反対側の通路へ向かうため踵を返す。

 エリアが避難したことを眺めていた彼は踵を返し、次元が切断されてない道を進む。本来の目的であるドラゴン討伐に向かうため、ダンジョンから脱出しようとしているのだ。

 「後で回復術師をここまで派遣しとけば大丈夫だろう。おじさんは去らせて頂きますよ」

 たとえエリアが先程の風圧を喰らって動けたとしても、ハイアラダニを追うために、皮肉にも自分が繰り出した斬撃の罠を潜り抜けないといけないから。追い討ちを受ける可能性は低いだろう。

 

 ハイアラダニが数歩進んだタイミングで、彼の背後から、針が肌に突き刺したような音が微かに生じた。

 すぐに音の方へと首だけ振り向いたハイアラダニだが、とくに薄暗い通路と避難用の堀しか見れない。

 その時彼の立っている石畳に亀裂が走り・・・・・・。

 

 「っ! 次は下からかっ・・・・・・!」

 エリアがハイアラダニの前方地中から、床を切り刻んで通路へと突き登り、彼に三度の奇襲を仕掛けた。

 後ろに下がれば、斬撃性の罠に引っ掛かる危険性があるので、ハイアラダニは、エリアの太刀筋を見切って彼女の肩を踏んで飛び越えそのまま進んで距離を取る。

 ある程度敵と離れた彼は刀に手を添えながら、抉れている床によじ登り上がったエリアの方へと体を向かせた。


 「くっ・・・・・・肩に激痛がっ・・・・・・何の変哲もない蹴りでここまでの威力とは!! まあすぐに回復できますけど」

 どうやら先程、避難堀から上層部にハイアラダニがいる地点までの通路をコートが開通しエリアを誘導し、次に彼女が天井目掛けて突き上げるように攻撃したのだ。

 そしてエリアの首元には、弾丸ほどの大きさの注射器が刺さっている。さっきまで彼女になかったものだ。


 「・・・・・・ポーションかっ!」


 「その通りです・・・・・・ストラめ、序盤からこの薬を私に刺しとけば楽に彼を討伐できたのに・・・・・・っ!」

 恨み言を吐いたエリアは、首に刺さったままの注射器を床に投げ捨てる。


 (ふむ・・・・・・エリア君の仲間であるスナイパー君は、注射器の弾も射出できるみたいだね・・・・・・つまり毒系の攻撃も可能ってことだ。気を付けよう)


 その頃、ハイアラダニ達がいる廊下から離れたとこにある部屋では、注射器射出ライフルを装備しているストラがグチグチ文句を言っていた。

 「ああ全くもったいないよ。一時的にだけど摂取した対象者のLVを25もアップし、自然治癒付与・筋力とスタミナ増強・動体視力を異様に高める効果を持つポーションを、魔王ではなく人間サイドのおっさんと闘う時に使うなんて・・・・・・売っただけで絶対残りの人生遊んで暮らせるよ、あれ・・・・・・」

 

 「文句を言っても仕方ないでしょう。それより、エリアさんのサポートを続けてください」


 「わかってるわよっ・・・・・・!」

 ストラは自分の右側に、多種多様な銃火器を能力で呼び寄せた。



 ※エリア達の方へと舞台を戻します。


 (ああ、舞い散る瓦礫の動きが緩慢に見える。自分の体がとても軽くなって、めぐる血液の力が一層にも二層にも高まっているのを感じる、・・・・・・これなら・・・・・・勝てるっ!)

 桁違いにパワーアップしたエリアは、自分の双剣を握り直し、一息深呼吸を入れた。

 「『幽界タルタロス蜃気楼ミラージュ』っ!」

 ハイアラダニが仕掛ける前に、エリアが今までと違う太刀筋で攻め立てる。

 動きが予測しづらいような緩急が激しい走法で相手に近づき、これまた手元が捉えにくい揺らめくような曲線状の斬撃を浅く、しかし手数過多に斬りこむ太刀筋で、彼女は後退りをしているハイアラダニを壁際まで追い込んだ。

 


 すぐに彼女は、ハイアラダニの懐に入り、左の剣を中段に、もう片方の剣を上段にそれぞれ彼の側部に突き出し、挟み撃ちにするよう同時に双剣をおもいっきり水平に薙いだ。

「『砂漠竜サンドドラゴンバイト』っ!」

 (いける・・・・・・っ! 振るう速度も前とは段違いだっ・・・・・・!)


 「おお双剣の特性を活かした技だねっ」

 ハイアラダニはすぐに右を向いたと思ったら、エリアの左の剣を背面跳びでぎりぎり避け、着地時に後転して屈み、もう片方の一閃も潜った。


 「逃がすかっ『蟷螂マンティス凶鎌サイズ』!」

 双剣を一瞬よりも早く滑らかに逆手に持ちかえたエリアは、地面に向く二つの剣で、低姿勢のハイアラダニの背中目掛けて飛び掛かり突き刺そうとする。しかし彼はヘッドスライディングで彼女から距離を取った。


 (ああもうっ! ・・・・・・全然仕留めきれないっ!!)

 剣を床から抜き取ったエリアは、逆手から双剣を通常の持ち方に戻し、ハイアラダニ目掛けて薙いだり振り下ろしたり切り上げたる様に虚空に何度も多様な素振りをする。

 その多数の素振りの軌道先にある床や壁が例外なく抉られた。

 「次元切断の斬撃飛ばしは、体力が浪費する・・・・・・『シャープ連射砲ガトリングキャノン』で決めるっ!」

 ハイアラダニは、(やっと次元切断の効果を付与した斬撃飛ばしを披露したね)と内心呟き、ある時はハサミ跳び、ある時はスライディング、ある時は腹這はらばいにジャンプして避けながら、エリアへと接近する。


 (もう涼しい顔で私の攻撃を避けまくるなんて・・・・・・次は大技で彼を討つ!)

 エリアは素振りをやめ、軽く片足で飛翔し、体を何度も回転ターンさせながら双剣を下段から上段まで切り上げるように繰り出す。もちろんこれも次元切断の斬撃を飛ばしている。

 「螺旋状に斬撃を展開させる『戦乙女ワルキューレ舞踊ダンス』はどうでしょうかっ!」

 その攻撃と攻撃の隙間が、前のものとは全然違うように狭く速いエリアの大技を、ハイアラダニは体が水平になるよう飛翔し、ぎりぎり斬撃を回避した。


 (これもだめなんですかっ!?)


 「次はこちらの番だね・・・・・・?」

 ハイアラダニは抜刀の構えをし、大きく踏み込んだ。

 そして、エリアが「え・・・・・・」と驚愕する程の速さで彼女の懐へと入り、刀と新月刀を抜き出し技を放つ。

 「『砂漠竜サンドドラゴンバイト改め土着龍のあぎと』っ!」


 (まずいっ・・・・・・!)

 とっさの機転でエリアははるか後方へと跳んで距離を取り、ハイアラダニの太刀筋を何とか見極めた。

 彼が繰り出した技は、刀を上段に、新月刀を中段に突き出し、同時に振るう技。

 その型に彼女は見覚えがあった。

 (私の独自の技を・・・・・・一回目にしただけで模倣っ!? いや自身流に合わせたのですねっ!? どんな洞察力があればこんなことが・・・・・・)

 一瞬の間考え事をしているエリアの首にいつの間にか鮮血が流れる・・・・・・が、一瞬で傷が塞がった。彼女は先程の凶刃を回避し損ねたのだ。先程摂取したポーションの自然治癒の効果が無かったら、致命傷になっていたであろう。

 

 エリアが唖然としていても、ハイアラダニは攻撃の手を緩めてはくれない。


 「『シャープ連射砲ガトリングキャノン改め鎌鼬鈍』」

 新月刀と刀を鞘に戻したハイアラダニは、諸刃の大剣を遠くにいるエリアに向けて思いっきり素振りをする。

 その素振りの余波だけで、前に彼がレイピアの刺突を繰り出したみたいに、膨大な風を巻き起こす現象が起きた。

 風圧をもろに喰らっているエリアは、双剣を地面に突き刺し、吹き飛ばされないよう堪えている。

 (くっ・・・・・・! 物凄い威力、距離を取られて攻撃されると厄介ですねっ・・・・・・!)


 ポーションの効果で脚力が桁違いに上がったエリアは、ハイアラダニがストラの砲弾に衝突して怯んだ際の隙を見逃さず、常軌を逸した速度で一気に距離を縮める。彼女の地面を蹴り上げる力はまさに爆破に匹敵する程。


 顔面にぶつかっている砲弾を、彼は剣の柄頭で潰した後、両刃剣を鞘に戻して新月刀の柄を掴み、エリアから距離を取るよう後退りをする。


 「逃がすかっ!」と叫ぶエリアだったが、次の瞬間、自分が血だらけになっていることに気づいた。


 「『人蜘蛛アラクネネット改め、土蜘蛛の髑髏飛来』・・・・・・」

 

 (くそっ! カウンター技か、あらかた後退りしながら剣を乱れるように振るう技みたいですね・・・・・・このままではらちが明かない)


 「さて、おじさんは妙齢の娘さんをナマス斬りにして楽しむ趣味は無いからね、一気にかたを着けさせてもらうとするよ・・・・・・!」

 そう宣言したハイアラダニは、新月刀を鞘に納め、代わりに刀を抜き、振り上げる。


 (ここは刺し違える覚悟で、確実に仕留めるしか・・・・・・)

 エリアが苦渋の決断をしようとしたその時・・・・・・。


 「え?」 「おやっ?」

 二人は驚嘆の声を漏らした。なぜなら、ハイアラダニにやられた海竜シーサーペントエンペラーの首の断面から、ぬめぬめした触手と蔓が出てきて伸びて、彼の刀を持っている方の手元に巻き付いたからだ。



 その頃、ストラやコートがいる部屋では・・・・・・。


 「なっ!? 誰ですか貴方はっ・・・・・・! いつの間にこのダンジョンに侵入を・・・・・・」

 コートが取り乱しながら、何者かに尋ねる。

 その何者かは、右サイドの頭部から王冠の形をした白い角が生えてある赤髪の少女だ。


 彼女は、不敵に笑みを零してこう名乗った。

 「わしの名はサタン。竜王軍に所属しているバハムートの旧知の仲といえば、分かりやすいだろう」


 ストラがハンドガンをサタンに向けながら言う。

 「何しに来た・・・・・・てめぇ・・・・・・」


 「ふん。身の程知らずの無礼者が・・・・・・。

 何しに来たか? ・・・・・・共闘の申し出に決まっておろう」



 「共闘の申し出・・・・・・? そりゃあこっちは願ったり叶ったりだが、本当にあんたは信用できんのか? ましてや悪魔の知人の言うことを鵜呑みになんかできねえぜ」

 ストラは、ドレスアーマーとマントを身に着けている少女から発されている常軌を逸した高圧的なオーラに呑まれそうになりながらも、自分の主張を通す。


 サタンは言葉で返す代わりに、黒い霧の塊を自分の近くに生み出し、不審に思っているストラ目掛けて放った。

 

 「ああっストラっ!?」


 「うっせーコート。魔法弾であたしが死ぬかよ」

 アポートや必中射撃とは別に持っているストラの能力が発動。

 自分が知覚してる範囲内で、魔導士が射出魔法を繰り出した時、それを逆流させて相手の脈を狂わせるものだ。

 悪魔の王サタンも例外ではなかった。

 ストラを狙っていた黒い霧は彼女の肌の寸前に止まったかと思えば、次に術者であるはずのサタンに向かって殺到する。

 自分の術をもろに喰らったサタンは不自然に顔を上に向け、痙攣を起こし、白目をいて泡を吹いたのだが、ほんの数秒後、自動的に彼女は緑色の淡い光に包まれ、元通りに回復した。

 口の泡を、異次元から取り出したハンカチで拭っているサタンは微かにそして意地悪そうに微笑む。

 「やはり情報通り『逆撃バックショット』の使い手だな。これは使える」


 「神経やリンパ管そして魔力管をズタズタにしたのにいけしゃあしゃあと喋り出したぞコイツ・・・・・・あと、使えるっつったか? 誰かてめぇと組むとほざいたか、ん?」


 「拒否権などあると思うたか?」


 お互い魔力波とは違うどす黒いオーラを漂わせ、まさに一触即発な中、サイズに合わない帽子を被っている男の子が慌ててサタンに伝える。

 「サタンさん、貴方の申し出を承諾します。ストラ・・・・・・このままではエリアが危ない」


 「ぐっ」・・・・・・と呻くストラを、サタンは無視して腕を組みながら諭す。

 「金髪の少女の身を案じるなら、まずは剣聖から離さなければならないのではないか? 軍服の無礼な娘よ・・・・・・閃光弾を持っているならさっさと撃て。それとわしはちと一策謀っておる。聞け」


 ※次からはエリア達がいる通路へと舞台を戻します。


 エリアは、敵の得物に目を凝らしている。

 正確に言うならハイアラダニの刀に巻き付いてくる謎の触手にだ。


 「くっ・・・・・・! アマサキス君の分裂体だね・・・・・・」


 (あれ? 状況はよくわからないが、今絶好のチャンスなのでは!?)

 隙だらけの剣聖の首を狙い、駆け抜ける。そして右の剣を標的目掛けて水平に薙ぐ。


 「大人しく斬られるつもりはないよ!」

 しかしハイアラダニは、エリアの攻撃が届く直前に、体を捻らせて彼女の右籠手に中段回し蹴りを喰らわせた。


 (ぐっ、ただの体術が、なんて威力・・・・・・だがっ!)

 右手に激痛が走り痺れが生まれたエリアだが、まだ左手が残っている。彼女は左の剣をハイアラダニの心臓目掛けて刺突を繰り出した。

 だが。

 「投げ技習っておいてよかったよ!」

 ハイアラダニはハンマー投げの要領で、自分の掌に纏わりつく触手を頭上から膝下まで振り下ろす。そうすることにより、触手とそれに接続されている海竜皇シーサーペントエンペラーの頭をエリアにぶつけることができるのである。


 「舐めるなっ!」

 エリアは海竜皇の頭を踏んで蹴り、そのままバク転宙返りを披露し、無事着地。

 

 ハイアラダニは続けて竜と接続されている触手を振り回そうとしたが・・・・・・。

 「ん!?」

 いきなり彼の眼前に、飛来する金属の筒が現れる・・・・・・それは閃光弾。それの上部についているレバーがひとりでに外れてすぐに、そこから瞬間だけ強い光が彼らのいる通路を満たし、彼らの視界を白に染めた。

 

 眼の自由が奪われたハイアラダニは、自分の片手に絡みつく触手を強引に噛みちぎり、焦ったようにほんの一瞬で数十メートルまで後方に幅跳びし逃亡する。

 光が止んだ後、視力を戻した彼は、実は撤退したのは自分だけではないことに気付いた。


 「やられたね・・・・・・」


 そうエリアは、コートから戦線離脱するようテレパシーで伝えられ、彼の能力で出現した隠し通路に向かったのだ。もちろん隠し通路はハイアラダニの視力を取り戻しきる前に閉じている。


 ハイアラダニが今いるダンジョンから去るため右往左往して十数分経った頃。

 「・・・・・・まだ手前おじさんを逃がすつもりはないらしい・・・・・・っ!」

 彼の足元に、石造塔を丸呑みできるほどの広さと深さを持つ穴が一瞬にも満たない時間で開通する。

 いきなりの地面の消失にも涼しい顔を保っている彼は大人しく落下する。


 十数秒後ハイアラダニは、何の対策もせずに無傷で着地。

 周囲を見渡せば、彼が立っている場所は、先程の廊下よりも足元が見えずらいほど薄暗く、幅が狭い一本道だ。

 なんか近くの地面から、ピチャピチャと汁気の音が微かに発せられている。


 (・・・・・・背後か)

 ハイアラダニは側転跳びで自分の向きを変えた。彼の視線の先にはエリアが双剣を振り回しながら後退している。


 「次元切断の斬撃を飛ばしているわけではないね。大方『人蜘蛛アラクネネット』だろう。だけど君のあの技はもう破られているはずだが!?

 π線2パーセント消h・・・・・・」 

 ハイアラダニは刀を掴んでいる方の脇をしめて構えを取る。つまりはエリアが張り巡らせた空間切断の罠と罠の隙間めがけて大気を押し出す突きを繰りだそうとしているのだ。

 だが・・・・・・。

 (エリア君の方から素振り音が聞こえる・・・・・・次元切断の剣戟ではない普通の振り下ろしかい・・・・・・?)

 怪訝に思った彼は遠距離攻撃を中断しようとする。

 その時。


 (ハイアラダニさん。攻撃しないんですか? もしエリアさんを討伐できずに逃がしたら、次はあなたのご家族が狙われますよ・・・・・・ウェーデンス国のトックホルムスに住む緑髪のお嬢さんをエリアさんが・・・・・・)

 コートのテレパシーがハイアラダニの脳裏に滑り込んだ。

 

 「・・・・・・トルネ・・・・・・・・・・・・っ!!」

 そのテレパシーだけで充分だった。ハイアラダニが情も思考力も鈍る程激昂し、全力で力を振るう理由としては・・・・・・彼は今、緑髪の少女の後ろ姿を思い出し、柄を握っている方の腕の筋肉をこれ以上ないくらい引き締めた。

 口調も変わる。

 「てめぇらっうちの家族に手を出そうとしてんじゃねぇっぶち殺すぞっ!! π線消費百パーセ・・・・・・」

 そう喉が張り裂けそうになる程叫び、刀を振り上げた。その時・・・・・・。

 「ぐわっ!? ・・・・・・ゲホッゴホッ!!」

 いきなりハイアラダニは不自然に痙攣し、吐血。それによって彼の攻撃は中断された。今彼は片膝を地に着け肩で呼吸している。汗も肌全体から異常に流れている。


 ハイアラダニの千載一遇の隙を、エリアは見逃さなかった。彼女は彼の首を獲るため急いで駆け抜ける。


 「てめぇ・・・・・・てめぇら、一体何しやがったぁあぁあああああああああっ・・・・・・・っ!!」


 ※次から十分程時間を巻き戻し、舞台をストラとコートがいる部屋に移ります。


 「剣聖にあたしの秘術『逆射バックショット』を喰らわせて怯ませる・・・・・・?

 奴が言ってた『なんちゃら線1%消費』とかっての事を逆流させることだろ・・・・・・だがあれ魔法か? 魔法じゃないとあたしの『逆射』は発動してくれない」


 「確かに貴様のほざく通り剣聖の使う特殊能力は魔法でも超能力でもないものだ。

 『π線』という特殊な金属から常に出てる放射線を剣聖は摂取し、奴はそれを消費して筋力やスタミナを底上げしているのさ」


 放射線という単語に、コートとストラは首を傾げるが(魔力に似ているエネルギーだろう)と解釈した。コートが尋ねる。

 「ちなみに放射線と呼ばれるものをエリアが受けてもパワーアップしないのですか?」


 「無いな。わしが知る限り剣聖しかその放射線を生命エネルギーに変換できない。

 あっそうだった、銃使いよ、ペイント弾を持っているか? 

 ペンキ玉を射出し、それを指定した場所に魔方陣を描くようできるのか? 剣聖の足元に魔方陣が無ければ作戦は達成できない」

 サタンは、描いて欲しい魔方陣の紙を異次元から取り出し、ストラに見せつける。


 ストラは「もちろん持ってるし、できるわよ」としぶしぶ自分の手元にエァーソフトガンを出現させ、すぐにペンキが詰められているカプセルを射出した。

 「さっきも言ったけど、あたしの『逆射』は魔法射撃にしか発動できないわよ」


 「安心しろちゃんと考えてある。

 実は剣聖が放射線を消費しているのと同時に自身にあった別種の放射線を体外まで排出している・・・・・・・それは本来魔法波ではないのだが、わしが使える魔法『曲解【本来魔法でないはずの特殊能力を強引に魔法として扱う】』を付与それば、奴に小娘ストラの『逆射』の効果を適用させることができるようになるのだ。

 奴がそれで怯んだ時に、エリアのとっておきの一撃必殺技で片をつけろ・・・・・・っ!」


 「よし、小僧。エリアの小娘にわしが今から言うことをテレパシーで伝えろ」


 ※場面を剣聖が術にはまったとこまで戻ります。


 (これでとどめだ・・・・・・剣聖ハイアラダニっ!!

 周囲の環境を気にして使わなかったが、もう手加減は不要・・・・・・)

 

 エリアの双剣の刃全体から禍々しいオーラを纏いはじめた。斬られたことによりできた空間の穴に向かって、空気が緩やかに流れだしている。

 遂に彼女はこの土壇場で最終奥義の技を繰り出そうとする。


 「『終の太刀 終わりの一撃』」


 剣聖の首めがけて右手の剣を、おもいっきり彼女は水平に振ろうとする・・・・・・彼女から放たれるこの斬撃は、次元を完全に切り裂く防御絶対不可避の絶技であり、この空間と別の空間を繋ぐ特徴を持つ。


 一秒よりも遥かに短い時間が経てさえすれば、剣聖の首と胴は本来エリアの剣戟で別れるはずだった・・・・・・本来ならば!


 「トルネ・・・・・・お父さんが絶対護り抜いてやるからなっ!! π線消費100パーセント。

 『傾国流奥義・・・・・・底挙げ』っ!」


 技名を叫んだ剣聖を、終始聴いてたコートは、慌ててエリアの脳内に届くよう精神的に叫ぶ。

 (まずいっエリアさん後ろに一旦退避をっ・・・・・・!)


 ただ剣聖は、絶対防御不可能なエリアの横薙ぎに対し、ただ単純明快に刀を右下段から左上段めがけて全力で虚空に斬り上げたのだ。

 彼が繰り出したこの技は、技巧も戦術もあったものじゃない、軌道が読みやすく素人臭い攻撃なのだが。


 ただ威力が、剣聖が前にレイピアで大気を押し出した攻撃の比ではない。

 かき乱された大気はもはや強固な壁となり、剣聖が刀を素振りした軌道先全域を無慈悲に押しのける。

 彼らのいる戦場は、地表から約二十階分程の高低差があるのにもかかわらず、山脈に匹敵する程質量を持つ土砂ダンジョン全体が地下深くから地表・・・・・・いや、大気圏の外まで森ごと容易く吹き飛ばされた。

 ちなみに飛ばされた一本の木が、音速越えで回転しながら大陸間弾道ミサイルみたいに飛来し、たまたま雲上にて羽根を羽ばたかせているワイバーンロード【ちなみにLV91で防御力カンスト状態】の腹を貫き破った。全くもって不慮な事故である。


 剣聖の攻撃により、ダンジョン廊下に陽の光が差し込んだ。土煙がもうもうと立ち込める。もはや彼らのいる場所には天井など存在しない谷の底となった。


 エリアはというと・・・・・・。

 「けほっ・・・・・・滅茶苦茶だ・・・・・・コート、感謝する」

 土埃に咳き込みながら、重い岩の蓋を押しのけ、堀の縁によじ登っている。

 そう、彼女はコートが機転をきかせて作り出した蓋付きの堀に入り、難を逃れたのだ。

 ただ、現在彼女の左手に剣が無い。片方遠方に吹き飛ばされたのだ。


 「くそっ! 本来の十分の一も力を発揮できなかった・・・・・・この妙な状態異常のせいか・・・・・・っ!!」

 剣聖は息を乱しながら、地に突き刺していた刀を杖代わりに利用した。

 彼は今、ストラの能力で本調子ではない。叩くなら今しかない。


 (ストラの『逆射』は、発動成功させたら、ほぼ勝ちが確定するはずなのに、この化け物めっ・・・・・・!

 私が勝てるのか・・・・・・? 彼が倒れるところが一切想像できない・・・・・・)


 膝が恐怖で震え、怖気づいているエリアの脳裏に、ある記憶がよみがえる。


 それは数年前、エリアが鍬で畑を耕している時の事だった。

 剣技のけの字も知らない非戦闘員の頃の話。


 『お嬢さん、お嬢さん・・・・・・。精が出るね・・・・・・何を育てているのかね?』

 あぜ道に立っている見知らぬ老人がエリアに話しかける。


 エリアはぶっきらぼうに答えた。

 『知らない』


 『いやなんで知らないのかね!?』


 『知人の農家に頼み込んで鍬を握らせてもらっている。本来なら私は土いじりをしなければいけない程低い身分にいるわけでもない』


 『ではなぜこんな骨の折れそうなことをしているのかい?』


 『ダイエットに良さそうかなと思って・・・・・・おじいさんは、私に何か用?』


 老人は口元を曲げ、顎に手を添え勧誘する。

 『まぁ、用らしい用ではないがのぅ・・・・・・ただ、お嬢さんは筋が素晴らしい・・・・・・鍬を振るう方ではなく剣を扱う方だがな。

 ワシが見る限り、お嬢さんは剣士に向いている。どうじゃ? 剣術に興味はあるかのぅ?』


 『興味ない』

 畑作業に戻るエリア。


 『いや、もうちょっとわしの話に耳を傾けてくれないのかい? う~ん、どうすれば興味もってくれるのかのぅ・・・・・・おっ! そうじゃお嬢さん、じ・つ・は・・・・・・剣の修行はダイエットに最適だということを知っているのかの?』 

 

 その言葉に、エリアは背筋をピーンと伸ばし、瞬間的に老人の方へと向いた。

 『その話を詳しく・・・・・・』


 *二年後。


 『やはりわしの見込んだ通りじゃ、貴殿は剣神の寵愛を受けている。

 もう、わしが貴殿に教えることはのうなった!』


 『そう』


 『本当に常に不愛想じゃな、まあいつも冷静沈着な所は剣士にとって強みだ。

 たとえどんな強敵を前にしても、常に落ち着くことを忘れてはならぬぞ。

 貴殿はワシが知る限り、純粋な剣の腕においては、竜王や鬼人すらも超えると思っている・・・・・・』


 『そうかしら? 過大評価じゃないの。私なんて大したことないわ』


 『次元を切断できる時点で、大したことあるんじゃないかのう・・・・・・貴殿の剣の腕は、とうにわしを超えておる。そう・・・・・・わしが成しえなかった隣国の剣聖撃破すらもできるかもしれんな・・・・・・』


 『剣聖・・・・・・師匠がいつも言っている彼ですか・・・・・・そんなに強いのですか?』


 『強い・・・・・・! 特に彼の得意技である左から右へと袈裟斬りの技、『荒振り』を近くで眺めたわしは、どんなに鍛錬を積んでも勝てぬ相手がいることを悟ってしまった・・・・・・だが・・・・・・』

 師匠は、エリアに向けて微笑んだ。

 『貴殿なら、絶対に勝てる。

 常に冷静に物事を分析し、怖気づくことなく勇猛果敢に剣を振るうエリアなら・・・・・・』


 過去の記憶から、現実に意識を戻したエリアは、気を引き締めなおし、残った剣の柄に、両手でしっかり掴んだ。

 (師匠・・・・・・励ましてくれたこと感謝いたします)


 剣聖が刀を鞘に戻し、次に巨大な諸刃の西洋剣を取り出し、構える。

 「もう出し惜しみは無しだよお嬢さん。π線消費100パーセント・・・・・・」


 「こちらもこれで最後です『終の太刀・・・・・・』」


 剣聖は、先程の『底挙げ』よりも格段に威力を持つ袈裟斬りを、エリアも右上から左下へと斬り下げる技を同時に繰り出した。


 「『荒振り』っ!!」


 「『終わりの一撃』っ!!」


 お互いが至上の技を繰り出した後、彼らは少しの間、立ったまま静止している。 

 戦場が静まり返る。しかしそれも長くは続かなかった。

 土煙が舞う中、血の雫が一滴土に滴り落ちる。



 軍配が上がったのは、エリア。


 そう、エリアは、剣聖の両刃の剣や放たれた衝撃ごと呑み込むよう切り伏せた。


 「ごふっ・・・・・・まさか、手前は負けたのか? ・・・・・・まるで君が手前の技を事前に知ってたかのような見切りだった・・・・・・?」

 吐血をしているハイアラダニは、左上半身と右下半身が少しずれている。切断口から血液が大量に流れていた。

 「なんだい君の次元切断の技は・・・・・・今まで手前が戦ってきた次元破壊系の能力者の攻撃とは一線を画すように鋭かった・・・・・・」


 剣聖の言葉を無視し、(まだ死なないんですか、しぶといですね)と思いながら彼を眺めるエリア。


 「・・・・・・トルネ」

 巨大な剣を左腕で掴みなおしたハイアラダニは、

 「トルネには絶対手を出させねえぞぉぉぉおぉおぉぉおぉぉぉおおおおおおおおっっ!!」

 体を切断されたにもかかわらず、剣を振るおうとした。


 剣聖の最期の悪足掻きである横薙ぎを、エリアは受ける直前で宣言する。

 「大丈夫です。私達は貴方の娘に手を出すつもりはありません」

 その言葉を聞いた彼の手は止まった。


 「・・・・・・本当かい?」


 「ええ、本来の私達の目的は、剣聖の首のみ。あなた方のご家族には興味がありません」


 それを聞いた剣聖の左手は、力なく垂れ、剣が床に落ちる。安堵しきった彼は、乾いた笑いを少し漏らした。次に優しい口調で遺言を述べる。

 「強いな・・・・・・お嬢さん。

 名前は、エリア君と名乗ってたね。そうだ、おじさんに勝ったから、次は君が剣聖を名乗r」


 語っている途中の剣聖の首を、エリアは躊躇なく斬り落とした。

 「死人のくせに話が長いんですよ」

 次に彼女は、ハイアラダニの髪を掴んで持ち上げ、自分の顔に近づけた。

 「全く貴方は本当に信じられない位強かったですよ。剣聖ハイアラダニ」


 「おい、マジで勝ちやがったぞっ!!」


 「はぁ~気疲れしちゃいました・・・・・・」


 「ふむ・・・・・・まさか本当にあの忌々しい剣聖の討伐を達成させるとはな・・・・・・」


 エリアが複数の声の方に振り向くと、コートとストラ、あと見知らぬ王冠角が生えてある娘が、こちらに歩み寄っている。

 そう、彼女らはコートの能力で、エリアの近くにある魔法石の元までテレポートしたのだ。


 「やったっ・・・・・・! 本当にやりやがったっ!! 怪我はねえか?」


 「剣聖の素振りを受けて、軽く全身を擦りむいているくらいですね」

 ストラの質問に、エリアは息を乱しながら答える。彼女は今、疲労困憊だ。

 ストラやコートも魔力を浪費してしまっている。


 「とにかくご苦労様でしたエリアさん。さて、少し休みましょう。

 そしてその後は、剣聖の首を依頼主のゴーレムの元まで運べば・・・・・・」


 「それはならん」

 コートがこれからの予定を説明している時に、悪魔の王サタンが彼の言葉を遮った。


 「それはならんって・・・・・・やっぱりお前・・・・・・剣聖の首が目当てであたしらと組んだんだなっ!」


 「当たり前だろう。それ以外に何の目的がある。

 さて、命が惜しければその首を渡せ。今わしは、憎き敵が死んだことで上機嫌だ。今ならわしの言葉に従えば見逃してやる。

 まあ、反抗してもよい・・・・・・その場合は、ただ単に弱ってる貴様らを皆殺しにし、悠々と首を持って帰ればいいだけの話だからな」


 サタンの全身から禍々しく歪んでいる質の高いオーラが異様にあふれ出した。

 そのオーラに炙られたコートとストラは、脂汗を肌全体から流し、頬が引き攣り、膝が激しく震える。

 (やばい、絶対勝てねぇ。あいつこんな秘めた魔力を隠しもってやがったのかっ!?)

 

 (まさしく竜王と肩を並べる程の実力者・・・・・・! 要求をのめば見逃してくれる保証なんてないのですが、断ったら百パーセント殺されます・・・・・・ここは大人しく退くしか・・・・・・)


 「断る」


 「何?」


 ストラとコートが降伏の選択を取ろうとする前に、エリアが断言した。

 その返答に、サタンは口元を軽く曲げる。ついでにコートとストラの心内は絶叫した。


 「断るっか・・・・・・それもまたよし、できるだけわしを楽しませるために抵抗しろ。

 どうせ、貴様らには無様に散るしか残されてないからな」


 「それはどうかしら・・・・・・今の私は貴方はもちろん、竜王や竜神にすらも勝てる気がすr」


 「ほう、興味深い言葉だな」


 エリアが語っている時に、誰かが彼女の言葉を遮った。

 今回横槍を入れたのはサタンではない。


 声の元に視線を向ければ、一人の十代後半と思しき少年が、エリアの『終の太刀 終わりの一撃』で空間を切断したことによって生まれた次元の隙間を潜っていた。

 どうも彼は、たまたま自分の近くに次元の穴が開いたので、興味本位に覗いてきたのだ。

 彼の特徴は、赤いチャンパオを着こなしている。髪は艶やかな金髪で、後頭部に三つ編みおさげが一つ垂れてあった。

 そして癖なのか、古代中国官僚みたいに、チャンパオの右袖口と左袖口を常に合わせている。


 (誰・・・・・・?)と、三人が不思議がる中で、ただ一人、魔界の頂点に君臨するサタンが、この世の終わりみたいに顔を青ざめ、震えていた。


 サタンが、チャイナ男に向けて土下座しながら、テレパシーでエリア達に伝える。

 (貴様ら、すぐにあ奴に向けて頭を下げろ。機嫌を絶対に損ねるなっ!!)


 彼女のテレパシーを、エリア達は無視した。


 チャイナ男は周囲をきょろきょろ見渡した後、頭を下げているサタンを見下ろした。

 そして次の瞬間・・・・・・。


 サタンの体全体が、服と王冠型の角を除いて、瞬きよりも桁違いの速さで破裂した。

 ミンチよりも細かく分裂された骨と血肉が、ボタボタと降り注ぐ。


 疵一つついていない王冠クラウン型の角を片手でキャッチしたチャイナ男は、魔界の王だった血肉を踏みにじりながら、忌々しそうに吐き捨てる。

 「我の前で堂々と(角とはいえ)王冠を見せびらかすとは、なんと不遜で不敬で無礼極まりないことだ」


 自分達より格段に次元が違う程の実力を持つサタンが瞬殺されたことを目撃した、ストラとコートの脳内は真っ白に染まった。


 サタンの王冠つのを、チャイナ男は被り、尋ねる。

 「さて話を戻そう。そこの金髪の小娘、先程竜神を倒せると申していたな・・・・・・もう少し詳しく聞かせてくれないか?」


 「え・・・・・・いや、もしかして貴方は竜神?」


 「質問を質問で返すでない。

 まぁ答えてやろう。我は竜神共を束ねる竜の王 光竜だ」




 ※次からは光竜達がいる場所から少し離れた場所に舞台をかえます。


 荒れ果てた坂に、海竜皇シーサーペントエンペラーの頭部が転がっていた。

 その断面から、見た目がまんま人間な、二十代後半の女性が這い出て、地に立つ。


 前髪を紐で止めている緑髪の女性は、妖艶な笑みを浮かべながら独り言。

 「剣聖にちょっかいかけに来ただけなんだけどぉ~、まさか光竜ちゃんまで現れるなんてねぇ~。

 みんなを呼ばなくっちゃっ!」



 そして次に女性は、首筋から無数の触手と虫の足を生やしながら、楽しそうに呟く。

 「さあ、魔王や勇者ですら手が付けられない正真正銘強者だけが楽しめるお祭りの始まりよ・・・・・・♬」


 緑髪の女性アマサキスが独り言を興じている時、他の誰かは・・・・・・。

 ダーティー魔王と竜王は光竜の魔力を感知して即、同時に自分がいる大陸を強化する魔法『大陸カンティネント防壁プロテクト』を慌てて発動し、レベルがカンストしているゴブリンは、理由は知らないが胸が躍り出し、バハムートは今自分がいる世界から逃げる為石畳に魔方陣を描き、リリスも彼の手伝いをし、杏華と獣王は急いで竜王の元へと馳せ参じ、スリーカードと呼ばれた勇者達は城の警護を始め、ウェーデンス国国王はトックホルムス同盟員を自分の城に召集するよう騎士長に命じ、法王は遠くに感じる異様なオーラに興味を示さず、やんちゃ天使はスイーツ巡りに興じ、チンピラは公園のベンチで昼寝し、地球にいるプロレスオタク娘は準備体操をし、両目眼帯男は別の世界を跨ぐテレポートを発動し、変な錫杖を掴むコーンロウ爺さんは魔導書とメモを取り寄せ、どこかの宇宙人はUFOに乗りこみ、清廉潔白な王が民間人を安全な場所まで避難誘導し、背信の神は純白な法螺貝を掴み、炎の姫は、眉をしかめ、土の術師は不敵に笑い、最悪最強の魔女は茶を嗜んでいた。

 もちろん神界・魔界・冥界全体に、光竜が姿を現したことによって緊張が走った。


 さあ、剣聖の全力の攻撃がしょぼく感じてしまう位、激しい祭りの始まりだ。

 

 


 

 

 

 

 

 



 


 

 

 

 

 



 

 

 

 

 



 

 

 

 

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