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97.実は・・・

「オホン。よろしいですか。」

 デボラが、改めて切り出す。


「改めて申し上げますと、ギルドの建物内でも、食堂においての多少の怪我程度では暴力行為として認定されません。また繰り返しますが、冒険者同士の争いにも基本ギルドは関知しません。なので、今回の件では、幾ら抗議をされても、当事者同士で決着してくださいとしか言えません。」

「骨折が多少の怪我って言うの!?」

「大きな声を出さないでください。骨折を恐れる冒険者はここではやっていけません。それに・・・」

 デボラが、言おうか言うまいか躊躇していたが、

「何?言いたいことがあるなら言って。」

 

「分かりました。そもそもの確認ですが、貴方の仰る高ランクの冒険者が、あの女性に苦も無く捻られ骨折したということですよね?高ランクの冒険者様が?」

 その言い方に、食堂の方から、ああ、ハッキリ言っちまったぁ、と冒険者の失笑が聞こえてくる。

「そ、それは・・・、ふ、不意打ちされたからよ!」

「ということは、不意打ちでなければ、怪我しなかったと?」

「当り前じゃない!!」


「と、仰ってますが、“竜殺し”の方々は、どう思われますか?」

と、デボラが、ダン達の方へ話を振る。それを聞いた女性冒険者達が、驚愕の表情で固まる。

「おいおい、こっちにいきなり振るかぁ。まあ、あんた達も、いくら何でもものを知らなすぎだろう。ランクCが高ランクだなんて話は初めて聞いたし、ここにいる連中も誰もそんなこと思っちゃいない。むしろ、ここでダンジョンに挑む最低ラインがランクCってとこじゃないか?それでも相手の力量が分からない奴には無理だろうな。あんた達は、ここにいる冒険者の力量をおおまかにでも把握できているか?あそこらであんた達の話を酒の肴にしている奴らだって、あんた達よりも明らかに強いぞ。不意打ちじゃなきゃやられなかったっていうレティシアはランクBって聞いてるが、完全にランク詐欺だからな。そんなもんじゃ収まらねぇ。むしろ、俺から言わせれば、殺されなくて良かったな、っていうのが本音だ。」


 彼女達は、次々と聞かされる情報に、嘘、と呟きつつ顔が真っ青を通り越して真っ白になっている。本当に、目の前の遥かに格上の力量も見極められていなかったようだ。

 そこに、デボラがダメ押しをする。

「貴方の言い分からすると、高ランクである方が発言の信憑性が高いということになりますが、ロバート様はランクB、ダン様はランクAです。それに基づいてギルドで判断を下しても宜しいですか?」

「もういい・・・。」

「はっ?」

「もういいって言ったのよ。行くわよ。」

 メインで文句を言ってた女が吐き捨てるように言って、もう1人の手を引っ張って、そのままギルドから出て行った。

 その背中を見送ったダン達は、皆、苦笑を浮かべるしかなかった。




「おい、護衛達はどこに行った?」

 しばらくして奥から出てきたエクムントが、カウンターのデボラに尋ねる。

「先程出ていかれたようですが。特に言伝は承っておりません。」

「クソッ!全く使えない奴らだ。この際、交替させるか。」

と、言いつつ周囲に目をやり、ロバートを視界にとらえた瞬間、ヒィッ!っと叫んで後退って尻餅をついた。

 その後、顔を真っ赤にし、周囲の目から恥ずかしさを誤魔化すように、

「い、行くぞ!」

と、モーリス達に声をかけ、返事も聞かず出ていった。

 モーリスは、それを見て溜め息をつきつつ、お騒がせしてすみませんと頭を下げて出ていった。


「どうしたんでしょうか?」

 エクムントの態度に、レティが不思議そうにロバートに尋ねるが、

「さぁ?どうしたんだろうね。」

と、どうでもいいことだと流したロバートは、ダンの方に向き直り

「それで、ダンさん達は、この後どう動くんですか?」

 

「まあ、さっきの話を皆で共有してからだが、ダンジョンには元々入る予定だったし、それは変わらないだろうな。そのついでに、これらの素材が手に入れば、買取金額次第だな。」

と、モーリスから受け取っていた紙をヒラヒラさせながら、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。そして、

「俺達と一緒に行くか?ディー達とも昔馴染みなんだろ?」

と、ロバートをダンジョンに誘う。ディーも期待するようにロバートを見る。


「面白そうだけど、まだ子供達と長期間離れたくないので、今はちょっと・・・。」

「そうか、まあ仕方ないか。」

 ロバートの答えにそれ程残念そうな様子もなく納得する。ディーは残念そうだが。

「それはそうと、お前達は、ここのダンジョンはどこまで踏破しているんだ?俺達がそこに追い付いてから一緒に行くってのはどうだ?」

 ロバートは、周りがそれなりに聞き耳を立てている気配を感じ、

「じゃあ、そちらのテーブルで少し話しましょうか。」

と、隅の人気のないテーブルを指さす。


 ダン達のパーティーとロバートの身内が、1つのテーブルについたところで、ロバートが音が漏れないように小さな≪結界≫を張る。不特定多数に自分達の情報を漏らす気は無かった。特に、ギルマスが敵対的な態度を取っている間は。


「最初に結論を言ってしまうと、俺達は、大森林東のダンジョンは51階層まで行ってますよ。」

と、ロバートがこともなげに言うと、

「あれっ?確か45階層が最高だって聞いたけど。」

 既に情報は集めていたのか、ヨナが疑問の声をあげる。

「ああ、報告してないんですよ。煩わしい手合いが湧きそうなので。文字通り美味しい素材があるんですが、それは到達してからのお楽しみで。」

「お前の言う美味しいは、食材のことだよな、きっと。ダンジョンであんなに呑気に食事をしているのを見たときは衝撃を受けたからな。」

と、ダンは初めてダンジョンで会った時のことを思い出した。


「でも、あのダンジョン内での美味しい食事を知ったから、私達も高い金を払って大きめの収納バッグを買ったんでしょ。そのお陰で竜の肉や素材もいっぱい持って帰れたしね。竜の肉って、本当に美味しかったのよ。あの味を知らないなんて人生損しているわよ。」

と、ヨナがロバートにやや挑発するように言うが、ハハハと乾いた笑いを浮かべるロバートを見て、

「もしかして、もう倒していたのか?」

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