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91.おしおき

「ぎゃぁーーーー!!!」

 足首を握り潰されたアランは、床に倒れこみ、先程とは比べ物にならない痛がりようで悶絶する。

 レティは、それでも足首を掴み続けている。

 割って入った仲間の男も声が出ないようだ。

「大袈裟ですね。足首が砕けただけでしょう。」

 それを聞いたガイが、静かに呟く。

「いや、あれは相当痛い。」


「まあ、そんなに痛いなら、直しますか?≪治癒≫」

 レティは、魔法で砕けた足を治す。

「「「なっ!!」」」

 アランの仲間たちは、常識的には魔法が不得手である筈の獣人のレティが、無詠唱で一瞬で怪我を治したことに驚愕している。

「あの、その、なんと言うか・・・。」

 割って入った仲間の男が何かを言おうとするも、まともに言葉にならない。

 そうしているうちに、アランは、痛みから解放されて余裕が戻ったのか、レティを睨みつけながら拘束から逃れようと足を必死で動かす。レティは、そうした反省の態度が見えないアランを見て、バキッ!!っともう一度同じように足首を砕いた。


「ぎゃぁーーーー!!!」

 これも先程と同じようにアランの悲鳴が響く。

「全く反省の色がありませんね。何回か繰り返しますか?≪治癒≫」

 少し間をおいた後、また治す。


「お、俺が悪かったーー。だから・・・」

 バキッ!!

「ぎゃぁーーーー!!!」

「口先だけですね。あなたのように、幼子を蹴り飛ばすことに何の躊躇もしない人間は、また同じことを繰り返しますよ。」

 ドスッと、掴んでた足首を無造作に離した為、足が床にぶつかり、そのショックで、アランは最早声も出せない程悶絶し、失禁した。

 レティは、それを蔑んだ目で見た後、クルッと反転して、先程の凍り付くような目つきから一転、子供達に優しい笑みを向けた。


「ガルシアに危害を加えたバカは、母さまが退治しましたよ。」

「「かあしゃま!」」

 ロバートの腕から飛び出て、ガルシアと、スウェシアがレティに抱きつく。

「かあしゃま、つおい!!」

 子供達は、目をキラキラさせながら、レティの顔を見つめる。

「大人しく待ってて偉かったわね。でも、ガルシア。あんな汚いものにわざわざ近寄って行ったのは良くなかったのは分かるでしょ?」

「あい!」

 ある程度分別のつく年齢の子供に諭すように言うレティに対し、ガルシアもしっかりと返事を返す。

「そうだな。汚いものに近づかないのも勿論だし、知らない人間にすぐ近寄っていくのも良くないぞ。」

 ロバートも、2人の頭を撫でながら優しく諭す。

「「あいっ!」」


 子供達のかわいい様子に、ナディア達は、悶えているアランの事など無かったかのように和んでいる。自分達も子が欲しいなぁと、改めて感じている。


 一方、全くの自業自得とはいえ、足首をへし折られ悶絶しているアランに、仲間が駆け寄り

「ポーションはあるか?」

「ここに着くまでに使ったから、下級が2本しかないわ。」

「それでもいい。取りあえずかけて、残りは飲ませろ!」

と、慌ただしく介抱するが、下級ポーションでは、複雑な骨折までは完治できない。

 仲間には、回復系の魔法が使えるものはいないようだ。


「あんたもここまですることないじゃないか!」

と、途中で止めに入った仲間の男がレティに抗議をする。

「ふざけたこと言うな。」

 ロバートが落ち着いた口調で言いながら立ち上がり、男を極々軽く威圧する。本気で威圧しようものなら、実力差から言って、失神させてしまうどころか、心臓を止めてしまいかねないが、そこまでやる気はなかった。

「うっ!?」

 抗議した男が、顔色を青白く変え、一歩後退る。


「お前は、これまでの経緯を全て見ていたんだろう?それでよくそんな事を言えるな。大切な我が子をいきなり蹴り飛ばされた母親が、暴漢に立ち向かい排除した。それだけの事だろう?子供を襲うような変質者が反撃されてどうなろうが、被害者側が知った事か。寧ろ殺されなかったことを感謝するべきだろう?」

 ロバートは、冷静なようでも怒りを貯めていたようで、一気にまくし立てた。


「そうよね。仲間の悪行を必死になって止める様子も無くヘラヘラしているだけだし、ランクだけで相手を見下すのは正直どうかと思うけど、その年でランクC止まりなのは、人間的な問題が大きいんじゃないかしら?」

「全くだ。」

 成り行きを眺めていたナディアが、呆れながら言えば、ガイが妻の言葉に同意を示す。

 レティは、子供に向けていた優しい目が一転、冷たく差すような目で、軽率な言葉を吐く男を睨んでいる。


 抗議した男は、ロバートの正論に対し、全く反論する余地も無かったが、それでもナディア達に馬鹿にされるようなことを言われて頭にきたのか、

「だ、だが、結局その子に怪我は無かったじゃないか!なら、アランの足を治してくれてもいいじゃないか!こっちは、護衛依頼がまだ継続中なんだ!」

と、自分を見る周りの目が益々冷たくなっていくことにも気づかず、アランの怪我を治せと、自分達の事情を押し付けながら、図々しい事を言ってくる。


「はあ~。じゃあ、仮に大切な人が理由もなくいきなり襲われて重症を負ったとしよう。お前は、それを自腹で大金を払って回復してもらった後に、何もしなかった加害者から『治ったんだからいいだろ。怪我も残ってないし、何の問題もないじゃないか。』って言われても笑って許すのか?子供が怪我をしなかったのは、こっち側で対応したからだ。お前達は何もしていない。自分がどれだけ図々しいことを言ってるか、よく考えて口に出すことだ。」


「だ、だが、これでは護衛依頼が・・・」

 そこまで言われても、まだ言い募ろうとした時、

 バタンッ!

「お前たち!いつまでグズグズやっているんだ。モーリスを呼んで来いと言ったのに、いつまで待たせるんだっ!!」

 まだギルドの入り口が勢いよく開かれ、二人の男が入ってきた。

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