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89.再会

 ロバートとレティは、既に1歳となった子供達と、サラとセラを伴って港町を訪れた。霊山で過ごしているエルザと生まれた子に会えるまでには、あと半年程待たねばならない。

 ライラは、サラ達がしっかり勤めを果たしており、任せても大丈夫と判断し、しばらく領城に居ることになった。

 子供達は、まだおぼつかない足取りではあるが、少しずつ自分の足で歩くようになってきた。


 ちなみに、サラとセラは、仕事の合間に、ロバート達の鍛練に興味を持ち見学していたところ、レティに一緒にやってみては?と誘われ、鍛練に混じるようになった。

 すると、思いもかけずそれぞれ剣術と魔法の筋がいいことが分かり、体を鍛える鍛錬は共通だが、サラは魔法、セラは剣術というように重点的に鍛え始めた。

 これまでに何回か、子供達を領城の父母に預けてサラ達2人をダンジョンの浅い階層に連れていっている。最初こそ怖がっていたものの、慣れるに従ってそれなりの動きが出来るようになった。ダンジョンでレベルが上がったこともあり、ロバートから見てランクC~D相当の力はありそうだと見積もった。


 また、ロバートは、タイハク親子3頭と召喚契約を交わし、町に入った時などは、家に送還しトラブルを避けるようにした。残念ながら従魔と分かっていても、珍しい魔物に対し、邪な考えに至る者は一定数いるのだ。タイハクたちが危険というよりは、タイハクに反撃される者達の方が危険である。そうなると結局、従魔を管理するべき主であるロバートにも厄介事が舞い込んでしまう為でもあった。

 新たに生まれた三つ子については、シルフィーを介してタイハクの了承を取り、領城に里子に出した。今後、騎獣とする予定で慣らしている。



 そして今回は、食料-主に海産物-や生活物資調達を兼ねた小旅行のつもりで訪れていたのだが、港町に入ったところで、ロバートが≪探知≫によって、知人を見つけたことにより、会いに行ってみることにした。

 その知人-元第2王子のデイビッド-は、エレクトラと共に冒険者ギルドにいることを把握している。エリックからの連絡で彼らの事情は大方知っている為、改めて呼び名を間違えないように頭に刻みながら冒険者ギルドを目指した。

 冒険者ギルドに子連れで行くと目立つのだが、建前上、ギルド内の食堂は冒険者でなくとも食事をすることが出来るので問題はない。サラとセラについては、以前ダンジョンに潜った時に冒険者登録を済ませている。



 途中で、町に来た時にいつも訪れる教会付属の孤児院に差し入れをしてから、冒険者ギルドに到着した。ちなみに孤児院に対しては、代官の方でも補助金の予算を組んでいる為、一般的に想像されるような食べるだけでカツカツ、といった境遇ではない。それでもたくさんの食材を差し入れすれば、大歓迎を受けるのだ。


 扉を開け、ギルド内に入るも、依頼を受けて出払った後なのか、中は閑散としており、入ってきたロバート達に視線が向くことは無かった。

 ロバートの目当ての人物は、食堂の一角で、4人でテーブルを囲み、会話に興じている。

 ロバートは、そのままそのテーブルに近づいていくと、正面に座っている女性が気が付き、驚きの表情を浮かべながら、呟いた。

「あれ!?ロバートとレティ??」

 その声を聞いて、皆がロバートの方を向く。

 テーブルを囲んでいたのは、ディーこと元第2王子のデイビッド、そして草原のダンジョンで出会ったダンをリーダーとする冒険者パーティのメンバーである剣士のガイ、魔術師のナディア、斥候職のヨナだった。ちなみに声を掛けてきたのがヨナであった。


「ラッ、ライ「お久しぶりです、ディー殿」」

 ディーが、ライアンと呼びそうになるところを咄嗟にロバートが被せて挨拶し、

「皆さんも、お久しぶりですね。」

 続けて、全員に挨拶する。


「ロ、ロバート?久しぶりだね。俺も抜け出しちゃったよ。」

 ディーがその名前でいいのかといった感じで話しかける。

「以前は、何の挨拶もなく去ってしまい、大変失礼しました。」

 ロバートは、王都から出ていくとき、直接挨拶できなかったことを気にかけていた。

「いやいや、無事でなによりだったよ。あ!それと、事前に許可を取らずに申し訳なかったけど、俺達の素性をパーティーメンバーに打ち明ける流れで、君のことも話しちゃった。彼らは信用できるから・・・、大丈夫だよね?」

 ロバートはそれを聞いてちょっと呆れながら、

「はぁ、冒険者の個人情報は、迂闊に話してはいけませんよ。まあ、ダンさん達なら知られても支障は無いと思いますが。」

「ごめんごめん。でもエルとダンが・・・、その・・・、なんというか・・・」

「ああ、イイ仲になった人がいるとは、父からも聞いてました。まあ、辺境伯をあっさり訪問できるってことを説明する流れなら仕方ないですね。」

「そう言ってくれて、ホッとしたよ。あと、もう俺も一冒険者だから、丁寧語は無しで頼むよ。」

「分かり・・・、分かった。これからはそうしよう。」



「それで、レティ?その子達が?」

 ロバート達の話が落ち着くのを待っていたかのように、ナディアが興味津々といった感じで尋ねる。

「はい、旦那様との子で、ガルシアとスウェシアです。」

 レティが、少しはにかむ感じで、ロバートに視線を向けながら答える。

「ああー、可愛い!!いいなっー。私もそろそろ欲しいな。」

 ナディアとヨナがいつの間にかサラ達が抱っこしている子供達に近づいていた。

「「こんににわ。」」 

 ガルシアとスウェシアがたどたどしい言葉で挨拶すると、ナディア達が顔を真っ赤にして悶絶する。

「「か、可愛い。」」


 しばらく、子供達を抱っこしたりして構い倒してやっと女性陣が落ち着いた後、それぞれ別れた後の出来事を話し、色々と情報を交換した。

 勿論、ロバート達からは話せない事が多く、かなり割愛された内容となったが。


「では、結局、50階層踏破で回りが騒がしくなり過ぎたから、活動場所を変えようとして?」

「そうね。元々そろそろ新しい処に行ってもいいかなって話してたし。いい機会だったのよ。あとは、エルのご機嫌がね~。」

 と言いながら、ヨナがナディアの方に視線を向けると、ナディアも頷く。

「ご機嫌?」

「そう。例の伯爵令嬢のカレン様っていたでしょう?」

「ああ、あのはた迷惑な。」

 ロバートがダンジョン内での‘なすりつけ’を思い出して答えると、ヨナが苦笑する。

「50階層を踏破した後、ダンドリー伯爵が祝賀会を開いてくれたんだけど、どういう心境の変化か、そのカレンお嬢様が、ダンに秋波を送り始めて来たのよ。」

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[一言] 更新ありがとうございます。 続きを楽しみにしています
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