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87.≪幕間・元王子2≫

「ところで、」

 デイビッドが、落ち着いたところで話題を変えた。

「ここにお邪魔した目的の1つではあるのですが、今ライアン殿は、どうされているのでしょうか?私自身、王宮ではいつも彼に気にかけてもらってばっかりだったので、もし今の状況が彼にとって・・・。」

「ああ、落ち着いて下さい。ライアンは元気にやってますよ。」


 エリックが、興奮し始めたデイビッドをなだめて、クリスティーナと顔を見合せた後、

「ディー殿であれば、特に隠す必要はありませんな。あいつは、今冒険者として人並み・・・、ではないな、かなり稼いで悠々自適といった生活をしております。」

「えっ!?そうなのですか?私が聞いた話では、大怪我をして片足を無くされたとか。姉のやらかしたことで恐縮なのですが、王都では、婚約破棄されて失意のうちに出奔され行方知れず、と噂されておりましたので。」


「ハハハッ、そんな噂がありましたな。しかしその程度、貴族籍から外れた今、本人からすればどうでもいいでしょう。それに片足を失ったのは事実ですが、既に完治しておりますよ。」

「「完治?」」

 デイビッドと、エレクトラまでもが驚きの声をあげる。

「ええ、そんな事があったか?というくらい普通に行動していますよ。いや、普通ではないか・・・。」

「そ、そうですか。でも、それならよかったです。それで、ライアン殿は今何処に?」


「おそらく自宅にいると思いますよ。領都ではないので、場所の説明がし辛いのですが。今は、子供達にデレデレになってましたから、しばらく冒険者活動はしないんじゃないでしょうか。」

 ロイが、デイビッドの疑問に素直に答える。

「子供?」

「ええ、この子より半年ほど早く、兄さんに双子が生れまして。この子は年下の叔父になっちゃいました。つい先日まで、この子の誕生を祝いに子供達を連れて城に来てましたけど。」

 デイビッドの呟きに、ロイがブルーノに目をやりながら答える。


「子供ということは、ご結婚されたんですか?いつの間に?」

「冒険者として旅をしながら出会ったみたいで、ここに戻ってきた時には、2人の美女を妻として紹介されましたよ。」

「そのうちの1人とは模擬戦をやったが、俺が完敗してな。」

 ロイが答えたところに、エリックが余計な追加情報を入れる。

「え!?エリック、貴方が負けたのですか?」

 エリックの強さを知るエレクトラの顔が驚愕に染まる。

「ああ、速さは勿論、純粋な腕力でも負けてたな。まあ、これ以上は冒険者の情報だからあまり言わんほうがいいか。」

「そうですか・・・。今一緒に行動しているパーティも相当な実力を持ってますし、若い冒険者が育ってきているということですか。今回、母とも会ったのですが、2人組の冒険者のランクBの試験を直々にやったところ、あっさりと負けたそうです。魔法も込みの母をあっさり倒すような猛者も出てきているようですし。」

 エレクトラが、見かけに合わない年寄り臭いことを言う。


 エリックは、それを聞いて思い当たることがあり、

「エルの母ってことは、ギルマスのアレクサンドラ殿だろう・・・、その2人組は間違いなくライアンだと思う。そんな話をしてた記憶がある。」

「ああ、そんな話もしてたわね。」

 クリスティーナも同意する。

「そ、そうなのですか?でも名前が・・・。」

 エレクトラが、釈然としない風なので、

「ライアンは、今、ロバートと名乗って冒険者活動をしている。その試験の時に一緒に受けたのが、俺をボコボコにしたレティだな。」

「ああ、確かそんな名前でした。なるほど、ライアン殿はそれ程の実力を隠していたのですか・・・。」

 エレクトラが、若干誤解をしているが、別に正す必要も無いかとエリックはそれ以上言わなかった。


「まあ、そんな感じで問題なくやってるし、肉を調達にダンジョンに、魚介類を調達に港町にちょくちょく行ってるようだから、そのうちひょっこり会うかも知れませんな。それで、ディー殿達はどんな冒険を?」

 なんとなく強引に話を逸らされた気もしたが、デイビッドは、聞きたいことは聞けたので、自分達の話を始めた。


「・・・・・・・・・・・・という風に、なんとか50階層のボスである火竜を倒すことができ、初の51階層到達者になったのです。」

 デイビッドが、草原のダンジョンでの成果を語る。

「あそこは、私達が時間切れで泣く泣く断念した場所だったので・・・。」

 20年ほど前に、エリックの家の都合で断念したこともあり、エレクトラも感慨深げに言う。

「勿論、一緒に行ったパーティの力が大きかったのですが、彼らの方も私達の参加で漸く倒すことが出来たと言ってくれたので・・・。まあ、実際はエルの力が大きくて、私は魔法で補助するだけでしたが。」


「ディー殿。実際はその地味に見える補助がキモなのです。卑下することはありません。」

 やや自嘲の入ったデイビッドに、クリスティーナが、優しく説く。

「そうです。俺達が出来なかったことを成し遂げたことに賞賛しかないですよ。現地では大騒ぎになったことでしょう?」

 エリックも成果を肯定する。

「そうですね。果たされて来なかった初の50階層突破なので、町全体でお祭り騒ぎになりました。」

「ま、まあ、そうでしょうな。」

 エリック達は、実はロバートとレティによって、既に50階層は突破されていたのだが、そのまま古龍の元に行ったこともあり、ギルドへの報告をしないままズルズルきていたことを知っており、微妙な感じになっている。

 なんなら、大森林東のダンジョンで、フロアボスの火竜10頭を肉狩場にしている為、火竜討伐の偉業も若干色褪せてしまった感があった。


 とはいっても、そのような心の内を表情に出すことなくデイビッドの冒険譚をじっくり聞き、またいつでも訪ねて下さいということでお開きとなった。



「一応、ライアンには伝えておくか。」

と、今日のデイビッドの訪問と、今後しばらくこの領で活動するらしいこと、伝えたり聞いたりした情報を纏めて≪式神≫で送ったのだった。

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