80.誕生
「「オギャー。」」
「元気な男の子と女の子ですよ。」
「ああ、ありがとうライラ。早速レティに抱かせてあげて。」
あれからしばらく経過し、レティが産気づき、オロオロするロバートを尻目に、ライラ達が速やかに出産準備に入り、想像したより安産で、双子を出産した。
レティの頭の方に立って、レティの手を握り続けていたロバートは、無事生まれたことを確認してやっと落ち着くことが出来た。
初乳を与えたレティが、愛おしそうに生まれたばかりの2人を抱っこしている。
「お疲れ様、頑張ったね。元気に生まれたし、何よりレティが大丈夫そうで安心したよ。はい、喉乾いたでしょ。」
ロバートが、自家製果実のジュースを渡す。
「あ、ありがとうございます。旦那様の子を無事に産めてホッとしました。」
「こちらこそありがとう。レティに何かあったらと思うと気が気じゃなかった。」
と言って、ロバートは子供ごと優しく抱きしめる。
少しの間そうしていた後、レティがロバートに提案する。
「この子達を抱っこしてもらえませんか?」
「そうだね。まだこの子達を抱き上げていなかった。エルザも抱っこする?」
「いいの?」
「勿論ですよ。」
エルザが聞き返すと、レティは笑顔で肯定する。
ロバートとエルザが壊れ物を大事に扱う様に、恐る恐る抱っこする。
腕の中で眠る我が子の温かさを感じて、ようやく父親となった実感が湧いてきた。
レティは、産後直ぐに普段の生活に戻ろうとしたが、まだ養生が必要です、とライラに強く反対された。なのでベッドに横になりながら、子供達と過ごした。2人いるので、起きているときは大変だ。
もちろんロバートとエルザも一緒の部屋で過ごす時間が長い。畑や田んぼを見回りに行くときは、レティの負担が少しでも軽くなるように子供を抱っこして連れていく。その時は、部屋に残るレティが寂しそうな顔をするので、
「もう少し回復したら一緒に行こう。」
と、レティにキスをして部屋を出ていくのだ。
子供達の名前も決まった。
男の子がガルシア、女の子がスウェシアだ。ロバートが、レティシアの名前の一部から付けたいと、レティの遠慮を押し切ってつけた。
2人とも、可愛い獣耳と銀色の髪と尻尾というレティの特徴を受け継いでいる。
人見知りをしない子達で、日々抱っこしてくれるエルザは勿論、ライラ、サラ、セラ達に抱っこされてもご機嫌だ。
出産以降、子供に夢中のロバートは、ほとんど敷地外に出ずに過ごしていた。
産後1ヶ月ほど経過した後、レティの体調が万全となったところで、領都へ顔見せに行くことにした。獣人だからなのか、レベルが高いからなのか、レティの回復速度はとても速かった。
そこで、以前作った内部空間を≪拡張≫した馬車を、ヨシノに引かせて領都へ向かった。今回ヨシノを選んだのは、コウカに子が出来たことに気がついたからだ。ゴーレムが何か言いたげにコウカを指し示したので、鑑定したところ判明した。全ての魔物が湧き出てくる訳では無いのか、魔物の生態はよく分からない。
カルガモも卵を温めているし、周囲で出産が続きそうだ。タイハクが付き添って一緒に過ごしたいように見えたので、ヨシノを起用したわけだ。ロバートの元に来たときは小柄だった体躯も、今では成長して親に引けを取らない程になっている。
そして、子供達の世話もあるので、ライラ達も同伴する。無人になるが、ゴーレムもいるし、どちらにしろ誰かがいてもスレイプニルの出産に役立つ訳ではないだろう。
領都に入り、城に到着すると、辺境伯夫妻がご機嫌で待っていた。
早速、ロバートは両親に子供達を抱っこしてもらう。初孫ということで、エリックのデレデレ具合がかなり不気味に見え、抱っこされているスウェシアも泣きはしていないものの普段の笑顔が無い。クリスティーナは流石に手慣れたもので、腕の中のガルシアはご機嫌だ。
ロイが、自分にも抱かせてと、微妙な反応のスウェシアをエリックから受け取ると、途端に笑顔になり、ご機嫌でロイの顔をペシペシ叩く。それを見たエリックの顔が絶望に染まるが、ロバート達は敢えて触れないことした。
しばらく、3人で交互に抱っこしていたが、流石にもうそろそろということで、サラとセラが受け取って、赤ちゃん用のベッドに寝かせ、玩具であやす。2人とも、子供達の扱いに慣れてきたようだ。
一時落ち込んだエリックも、ガルシアが腕の中で笑顔を見せてくれたことで、何とか気持ちが浮上していた。
ゆっくりしよう、ということで6人でテーブルを囲みお茶を飲む。
「改めて、元気に生まれてきておめでとう。レティちゃんの体調はどうかしら?」
「ありがとうございます。体調の方は完全に回復しました。徐々に鍛練をして、カンを取り戻そうと思います。」
クリスティーナの問いにレティが答えると、今度はエルザに
「エルザちゃんの方は、もう少しかかるのかしら?」
「母の言う通りなら、あと200日くらい後だけど、その100日前くらいには霊山に戻って準備する予定よ。」
「そうなのね。待ち遠しいわね。」
「そう言えば、ミスリル鉱とポーションは助かった。かなりの金になったから、それを元手に長城の計画を進めることにする。お前の言った通り、流民の雇用も含めて腰を据えてやることになるだろう。」
エリックが、以前話し合った大氾濫対策の第一歩を語る。
「分かった。金策が必要なったらまた言って。ミスリルは肉を確保しに行くついでで、大した手間じゃないから。」
「その時には頼む。ただ、当分は控えた方がいいだろう。短期間に大量に出回ったから、各所から探りが入ってきている。別に入手方法にやましいところは無いが、簡単に到達できる階層じゃないからな。知られたらお前達が利用されることになる。ポーションも同じだな。上級を安定して大量に作れる者なんてそうそういないからな。」
「そうか・・・、まあ大量に出たら値も下がるし、しばらくは控えようか。となると、次は、商会を設立しての大量交易計画と、開墾と大規模農業計画かな。」
ロバートは、領地全体としての収益増加計画に頭を巡らせた。




