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77.対策

 古龍から聞いた大氾濫の情報共有の為、ロイに訪問する旨を先に伝え、2日ほど準備をした後、タイハクに乗って領都へ出掛けた。

 残念だが、今回、妻達は留守番とした。タイハクなら長くても1泊で帰ってこれる。

 



「というわけで、まだ先の話だけど心の準備と、現実的な対応を考えなきゃいけないと思って来たんだ。」

 ロバートは、領都に着くなり、古龍からの大氾濫情報を、両親とロイに説明した。 


 一通り話を聞き終えたエリックは天井を見上げ、その後目をつぶって何やら考え込んでいる。

 クリスティーナは、あらあら困ったわね、と呟きながらお茶を口にする。なんだか非常に肌艶が良く、機嫌も良さそうだ。

 ロイは、何やら書き留めている。


「まあ、実際に起こった時に、俺が生きているかどうか分からないが、何をどう準備すべきかだな・・・。」

 エリックが、自分に言い聞かせるように呟く。

「それに関しては、大森林の境目から少し距離を離して、領内へ侵入させないような防壁というか、長城のようなものを築いて備えるしかないんじゃないかな。魔物が見晴らしのいい場所へ出てきてから、壁の上から攻撃出来れば、接敵する前に数も減らせるだろうし。初動が大事だけど、こちらから大森林に入り込んでまで先制するのは危険だし。」

 ロバートは、幅広い防衛ラインの構築を提案する。

「俺が魔法で築いてもいいけど、まだ時間があるから、雇用対策も含めて公共工事でやれば?他領から来て結構な数が流民化してるんだって?」

「でも兄さん、かなりお金がかかるね。」

「そうだな・・・。」

 ロイとエリックが財政面での心配をする。


「金策については、全面的に協力するよ。まず、大森林東のダンジョンの51階層でミスリル鉱床を見つけた。50階層のボスが火竜10頭だったから、並みの冒険者は辿り着けないけど、俺達はボスを倒した後で登録してきた。次からはその階層に直ぐに行って採って帰ってこれるから、短期的にはこれを金に換えて間に合わせよう。」

「か、火竜10頭・・・?」

 ロイが呆然と呟く。

「あっ、肉は食べるから売らないぞ。レティが不機嫌になる。まあ、でも少しはここに置いていくから食べてよ。」

「あ、ありがとう。いや、気にしたのはそこじゃなくて・・・。」


「あとは、俺が“創造”した上級ポーションや≪付与≫した収納バッグを売ってもいいな。収納バッグは、うちの領を拠点としている商人に使わせれば、領のものを他領で売ってきて、金か別の商品を持って帰ってくるから、大量の物流でドンドン経済が動くし、合わせて税も増える。新鮮な海魚なんか、他領だと滅多に食べられなかったから飛ぶように売れるよ。・・・いや、やっぱり容量の大きい収納バッグは影響が大きいから、辺境伯家として商会を作ってきっちり管理して使わせないと。商人に際限なく自由に使わせると、大量の食料が買い占めで領外に流出したり、軍事利用されるかもしれない。そこは今後の課題だな。」

「う、うむ。分かった。とりあえず金の心配は要らないということだな。」

 エリックも色々と突っ込みたいところはあったが、無理矢理納得させたようだ。


「長期的には、食料の備蓄を徐々に増やした方がいいと思う。時間経過のない容量の大きな収納バッグに貯めることにして、耕作地を増やして、収穫量を上げよう。岩だらけとかで不毛だと手をつけられていない土地でも、俺が土魔法でいくらでも開墾して、土質の改良もできるから。そして、こんな構造の農機具を作って効率的な農作業をすれば、1人当たりの収穫量も格段に増やせるはずだ。」

と言いながら、予め用意していた農機具の設計図を取り出して見せる。


「こんな道具をどうやって思いついたの・・・。」

 もうロイは考えが追いつかない。

「今すぐ全てやって、今すぐ普及させようって訳じゃないから、少しずつ効果を見ながらやればいいと思うよ。」

「ああ、そうだな。領主が無理やりやらせて、嫌々領民が従っても駄目だからな。領の役人も育てながらじっくりやろう。」

 ロバートが慌ててやる必要は無いと言うのを受けて、エリックもじっくり取り組むつもりになった。


 その後、雑談程度に、高速伝令用にスレイプニルを繁殖させてみるとか、もっと牛を繁殖させて農業に使いつつ牛乳を得るだとか、古龍から貰った米を育ててみるだとか、ロバートが自宅で取り組もうと考えている構想を語る。上手くいけば領に広められるかもしれない。

「領の為を思って新しいことに挑戦してくれるのはありがたいけれど、子供も生まれるんだから、貴方が無理し過ぎては駄目よ。」

「ありがとう、分かってるよ。勿論一番大事なのは家族だからね。」

 クリスティーナの気遣いに、ロバートも感謝する。


「そうだ、馬車の揺れを緩和する機構を馬車に付けてみたんだ。バネっていうんだけど、多分鍛冶職人なら作れるから、量産してみたらどうだろう?権利も領主の管理にすればいいし。馬車移動が苦痛でなくなれば、人の往来、特にご婦人の移動が増えて、護衛の依頼も増えて、領に落ちるお金も増えるかもしれない。」

「それ!見せて!」

 意外にもクリスティーナが一番喰い付いてきた。

「本当に、王都との往復で何が嫌かって、馬車でお尻が痛くなって、それを庇って更に他の体調も悪くなるのよ。」

「冒険者時代は平気でいくらでも歩いてたくせに・・・。」

 エリックが余計な事を言おうとするも、クリスティーナの冷たい目で押し黙る。

「じゃあ、下に行って乗ってみる?」

「行きましょう。」

 

 クリスティーナの勢いに押され、中庭にバネ付き馬車を取り出す。

 人を遣って馬を連れてきて、エリック、クリスティーナ、ロイが乗り込んで中庭をグルグルと走らせる。

「これはいいわね。悪路も試して問題なければ導入しましょう!!」

 辺境伯家でこの勢いのクリスティーナに逆らえるものはいない。

「確かに、この乗り心地なら、ご婦人方の長距離移動が増えるかもな・・・。領都と港町の間の移動が増えるだけでも金が動くな。」

 導入効果を期待したエリックの指示で、鍛冶職人に緊急依頼が出されるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ママン、肌艶が良いのは早速 色々実践していらっしゃるご様子 パパンの体力が尽きるのが先か? 弟妹が増えるのが先か?
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