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74.霊山にて

「おおっ!婿殿!よう来られた。さ、さ、こちらへ。レティ殿も一緒に。」

 ロバートは、レティと共にエルザに乗って久しぶりに霊山にやってきた。

 かなり大きな洞窟の入口までやってくると、何故か妖艶な美女に歓迎された。

 ロバートを婿殿と呼ぶということは・・・

「も、もしかして・・・、古龍様ですか?」

「まぁ、水臭い。お義母様(かあさま)と呼・ん・で。」

 豊満な胸を押し付けながらロバートの腕を抱きしめ、耳元で囁く。

 古龍が人化したらしい女性は、人族としては30歳前後くらいの見た目で、胸の谷間が強調され、体のラインがよく分かるドレスに身を包んでおり、何というか、ハッキリ言ってエロい。


「お、お母様!何してるの!?旦那様から離れて!!」

 エルザがロバートとの間に入り込み、母親を引き離す。

「まあまあ、この娘がこんな風になるなんて・・・。婿殿に託したのは大正解だったみたいね。こんなにも早く子も授かって・・・。よっぽど毎日可愛がって貰ったのね。」

「な、な、な、何を言って・・・。」

 エルザが普段と違い、顔を真っ赤にして酷く狼狽している。

 ロバートとレティも、以前に会った時の古龍の態度と全く違う為、戸惑っている。


「フフッ、ちょっと揶揄い過ぎたわね。改めて妊娠おめでとう。レティ殿もおめでとう。」

「あ、ありがとうございます。」

 レティは、突然祝福され、戸惑いながらもお礼を返す。

「さて、まずは椅子とテーブルは用意したから、座って。」

 さっきの悪ふざけの態度から一変して、優しい笑みを浮かべながら、椅子を勧める。

 どこからともなくお茶セットを取り出し、4人分のお茶を用意した。

「すみません、お茶の準備なら私が・・・。」

「いいのよ、お客さんなんだから。それよりも、貴方と娘が良好な関係のようで良かったわ。貴方も我のことをお義母様と呼んでくれると嬉しいわ。」

 お茶の準備を手伝おうとしたレティを制して言う。


「お、お義母様・・・。」

 レティがモジモジと照れながら言うと、それを見た3人は同じことを思った。

(((なんだ、この可愛い生き物は)))

「まあ、なんて可愛いのかしら。」

 古龍はレティの頭を抱きしめてその豊満な胸に押し付ける。但し、お腹は圧迫しないように気を付けている。

「お義母様、レティが困っていますのでその辺で。」

「婿殿は全く照れないのですね。なんか面白くないわ。」

 ロバートが古龍を窘めると、拗ねた様に言う。

 

 やはり、ロバートとレティは、以前の態度との差が激しくて、落ち着かない。

「・・・ああ!ほらっ、お母様は前回の時は呪いで我を忘れてたでしょ。我に返った後、恥ずかしくて、照れ隠しでああいう堅苦しい話し方をしてたのよ、きっと。今日のお母様が普段通りよ。」

「そ、そうなのか・・・。」

 ロバートは何とか自分を納得させようとする。

「まあいいわ、そろそろ真面目に話をしましょう。」

 エルザが場を仕切り直そうと両手をパンッパンッと叩いた。



「それで、何を聞きたいのかしら?」

 改めてお茶を入れ直して、椅子に座り、気分を落ち着けた後、古龍が質問をする。

「えーと率直に言うと、エルザが身籠ったので、どうするのがいいのか助言を頂きに来ました。」

「どうするとは、龍の姿で産むか、人化状態で産むかということ?」

「まずはそれですね。後は生まれた後の育児方法ですね。」

 ロバートが質問に答えていくと、少し考える様にしてから古龍が話始める。


「まずは、我の経験からすると、この娘が産むまでに、まだ400日ほどかかるわね。人化状態で産むことは可能だけど、子供も人化状態で生まれると聞いたことがあるわ。その場合、龍の姿になることが出来ないそうよ。理由は分からないけどね。本来の龍の姿で産めば、子供も龍の姿で生まれる。我が産んだ時もそうだったし。どちらにする?我としては、龍を産んで欲しいと思っているけど。」

 

 そう聞かれたロバートは、

「自分としては、龍として生まれた方がいいと考えています。単純に人の姿で生まれて龍になれないのと、龍として生まれて後に人化できるようになるのを比べれば、子供の可能性として考えれば・・・。」

「そうね。私も人化してしばらく人と暮らしてみて、特に不自由は感じなかったわ。それなら龍として生まれた方がいいわよね。」

 ロバートの意見にエルザも同意する。


「それなら、ここで産むといいわ。ちゃんと我が見てあげるから。あと、300日くらいしたらまた戻ってきて準備を整えなさい。あとは、産んだ後、1年は龍として育てて、その後人化を教えることになるから、産んだ後もしばらくはここで育てることになるわよ。」

「まあ、龍の寿命なら、1年くらいはあっという間でしょうね。」

 ロバートが、何気なく呟くと、

「ああ、そうだ。忘れてたわ。」

と、古龍が何かを思い出したように言い、聞きなれない言語を高速で呟き始めた。

 古龍の周囲がキラキラと光り始め、その光が2本、ロバートとレティに向かっていき、あっという間に彼らの体に吸い込まれた。ブレスレットが反応しないということは、害は無いのだろうが。


「「えっ!?」」

 ロバートとレティが慌てて自分達の体を確認し、その後ロバートが“鑑定”すると、ロバートとレティに、“古龍の祝福”という項目が増えていた。

「これは?」

「我からの祝福よ。貴方達は、この先もこの娘と共に生きてくれるのでしょう?それに子供も生まれるとなると長生きしてほしいじゃない。この祝福は、所謂『不老長寿』を与えるものよ。我が夫、この娘の父親にも与えて、3000年は生きたかしら。ただ、長寿であって不死ではないわ。首を落としたりすれば簡単に死ぬから過信はしないでね。」

「そんな貴重な物を・・・」

「旦那様はともかく、私まで頂いていいのでしょうか?」

「いいのよ。我の負担はないから。貴方だけ先に逝かせるなんて、そんなに性格悪くないわよ。フフフ。」

「あ、ありがとうございます!!」


「それと、不老といっても、貴方達2人は、まだ今は肉体の最盛期ではないでしょうから、もう少し年をとるかな。人族だと、おそらく20歳台前半くらいで見た目の成長は止まるはずよ。まあ、エルフ等の長命種もいるんだから、それほど奇異ではないでしょ。」

「冒険者をしながら、人里離れた拠点でひっそり暮らすのなら良いことしかないですね。」

 貴族社会にどっぷり浸かって生きるなら不都合はあるが。

 ロバート達は、次々出てくる情報に驚くしかない。


「ちなみに、この祝福を得たレティ殿が産んだ子供も、多少影響を受けて、長命種並みには寿命が延びるはずだから。」

 最後にもう1つ重大な情報があった。

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