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73.サラ<双子の姉>2

「「お、美味しいーーーー!!」」

 魚のフライを食べた瞬間、思わず叫んでしまいました。

「こんな美味しい物、食べたことありません。な、なんですか!?この美味しさは??」

 セラが興奮してレティ様に詰め寄っています。

「セラ!落ち着いて。」

 急いで、セラの肩を掴んで引きはがします。


「す、すみません。興奮してしまって。」

 落ち着いたセラが、しゅんとして謝罪しますが、

「いいわよ、気にしなくて。旦那様の発想を聞いて料理にすると、まあ驚かされることが多いから。」

 エルザ様が慰めてくれます。

「そこまで感激して貰えると作る甲斐がありますね。」

 レティ様も蕩けるような微笑みで仰います。

 私もそうですが、セラもぽぉっとして顔を赤らめています。


「さあ、ドンドン揚げていきましょう。これは護衛騎士達にも届けましょう。エルザ、角煮はどう?」

「うん、もうトロトロに仕上がってる。こっちの野菜スープの方は護衛騎士に持っていくから、オーク肉を大量に入れておくわ。大きめの方が食べ応えがあるでしょ。」

と、仰って、肉の塊を豪快に拳大(こぶしだい)に刻んでスープに投入されている。


「ああ、いいですね。この位の色になったら油から上げてこっちの油切りの網の上に置いてください。」

 私達は、魚の揚げ方をレティ様に教えて頂いた後、魚を揚げるところまで任されました。

 セラと一緒になって、次々と揚げていきます。

 レティ様はその間に、また何処からともなく大きな肉の塊を取り出され、ある程度の大きさに切り分けられています。そちらに何回か視線を飛ばしていると、

「ああ、これは主菜となるステーキ用の肉ですね。いい感じに脂がのってます。でも、ライラさんはあまり脂の多くない方がいいですか?」

「はい、そうだと思います。本人に言うと怒られますが、もう年なので。」

 レティ様はクスッとされながら、

「では、こっちの部位にしましょうか。」

と、言われながら、また別の肉を調理台の上に出されました。


「すみません。先ほどから食材が突然現れているのは・・・。」

 セラが恐る恐るレティ様に質問すると、

「ああ、この収納ポーチから出しているのですよ。」

と、腰の辺りを示されました。

 物を大量に入れることが出来るという収納用の魔導具ですか・・・。

 ここに来てから驚かされることばかりです。



「じゃあ、出来たものから配膳していきましょう。ここの皿から持って行って貰っていいですか。」

「えっ?でも人数が・・・」

 皿の数が多いことに疑問を持ったセラが指摘しますが、

「お客様4人と私達で7名分ですよ。」

「わ、私達もご一緒させて頂くのですか!?」

 私も思わず叫んでしまいました。

「勿論ですよ。皆さんの歓迎会なのですから。」

「「ありがとうございます。」」

 改めて感謝しながら配膳をしていきました。



「「お、美味しい・・・。」」

 先程このステーキ肉が地竜のものと教えられ、呆気に取られてしまいましたが、一口食べてまた驚愕です。

「美味いな・・・。竜種の肉を食べたのは久しぶりだが・・・、これは焼き方も上手いんだな。」

 辺境伯様も驚きながら勢いよく食べておられます。


「この角煮は、長時間煮込んでいるから柔らかいよ。フォークだけで切れるから。」

 ロバート様にそう勧められましたので早速フォークで切ってみました。

「「本当です!!すごく柔らかい。」」

 フォークが何の抵抗もなく肉を通り、皿にカツンとあたりました。

 早速口に入れてみると、本当に柔らかい肉でどんどん食べれます。

 

 大おばあさまも魚のフライを口にしてとても美味しそうに食べています。

 

 こちらに来ることを憂鬱に思っていたのは何だったのでしょうか。

 皆様もお優しい方ばかりで、ひょっとすると今日が特別なのかもしれませんが、これほど美味しい料理をこんなに揃えられる環境で働けることが楽しみになってきました。

 しかし、まだまだ驚くことはありました。



「ひ、広い」

「髪がこんなにも艶々に!!」

 とても広く綺麗なお風呂に温かいお湯が大量に張ってあり、泳げそうなくらいです。

 また、髪を洗う洗髪剤の効果が凄くて自分の髪ではないようです。

 レティ様とエルザ様の髪のお美しさの理由が分かりました。

「お風呂は毎日入るようにして下さいね。」

「「毎日入っていいんですか?」」

 レティ様のお言葉に、またセラと重なりました。

「ええ、身体は、簡単な生活魔法で綺麗に出来るかもしれませんが、こうして温かいお湯に浸かることで、疲れが取れていくように感じませんか?」


 仰る通りかもしれません。こうしてお湯に浸かっているとすごく癒される感じがします。

 セラと大おばあさまを見ても、目を瞑って気持ちよさそうにお湯に浸かっています。

 でも毎日って、貴族のお屋敷でもそれが当たり前とは聞いたことがありません。

 下世話な話ですが、冒険者でかなりお金を稼がれているとは聞いておりましたが、貴族よりも贅沢なのではないでしょうか。



 疲れているだろうということで、私とセラは先に就寝するように言われました。

 2人で使うようにと案内された部屋は、とても使用人が使っていいような部屋ではありませんでしたが、エルザ様に、いいから遠慮なく使いなさいと促され、何度もお礼を言って部屋で休むことにしました。


「もう寝た?」

「まだ、興奮してて眠れそうにない・・・。」

 セラの問いに、私は正直に答えます。

「色々と凄かったね。食事もお風呂も・・・。」

「そうだね。こんなに良くして貰ったら、頑張ってお仕えして応えないと。」

 明日からも頑張ろうと決意を固めつつ、フカフカの布団の中でいつの間にか眠りに落ちていました。



「「ええええええーーーーーー!!!」」

 私達がロバート様のお屋敷に来てから5日経ち、ゴーレムさんやスレイプニル一家へ紹介してもらったり、私達がようやくここでの仕事を全て把握したところで、以前から予定していたというエルザ様のご実家訪問に3人でお出かけになるとのことでした。

 何故か屋敷裏の広いスペースに移動され、

「驚かないでね。」

 エルザ様がそう仰られた後、エルザ様のお姿が消え、大きな生き物が現れた為、セラと共に絶叫してしまいました。


「やっぱり驚くよね。エルザは、霊山の古龍様の娘なんだ。両親とロイ以外には言ってないから、内緒にしておいてね。それじゃあ留守をよろしく。」

「畏まりました。」

 動揺を表に出さずに、一見冷静にそう応えられる大おばあさまは流石です。

 ロバート様は、レティ様をエルザ様の背に抱え上げて飛びたって行かれました。

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