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71.歓迎会

 応接間に残ったロバートは、ライラとしばし昔話に興じた。

 ロバートが王女の婚約者となった後は、ほとんど王都で暮らしており、たまの帰省の時にしかライラと会うこともなかった為、王都で暮らしていた時の様子もライラに話す。正直言って領地での暮らしに比べ、楽しい記憶があまり無いが。

「ええ、ご苦労なさったのですね。でも今は大変お幸せそうで何よりです。あの奥様方のおかげでしょうかねぇ。」


「そうだね。色々なしがらみから解き放たれて、自由にやらせてもらって、最高の女性達にも出会えた。

そして、子供が生まれようとしている。今は本当に幸せだよ。」

「ようございました。生まれるお子様の為にも、この老骨に鞭打って務めさせていただきます。」

「いやいや、全然老骨って感じじゃないよ。まだまだ若々しいし。」

「まぁ、坊ちゃんの口からそんなお世辞が聞けるなんて!長生きはするものでございますね。」

「もっと長生きして、子供の成長も見守ってくれると嬉しいよ。」



 そうこうするうちに、食事の準備が整い、レティが呼びに来た。

 食堂に着くと、全員分の料理が配膳されていた。

「本当に私達も同席していいのでしょうか?」

 サラが遠慮がちに聞いてくる。

「君たちの歓迎会みたいなものだから。というか、俺はもう貴族じゃないから、今後も食事は出来るだけ一緒に取るよ。」

「「えっ!?」」

 ロバートが事も無げに言うと、サラとセラが一緒に驚く。双子だけあって息もぴったりだ。

「坊ちゃん、いいんですか?」

「いいよ。だって、みんなで一緒に食べた方が美味しいし、手間も少ないでしょ。」

「分かりました。このお屋敷内だけということで、お言葉に甘えさせていただきます。」

 ライラはロバートの意図を汲んでくれ、あっさりと受け入れた。



「旦那様、護衛の人達にもスープとパンと魚料理を置いてきたわ。量は沢山あるから大丈夫だと思うわ。」

「ああ、ありがとう。あの者達も一応自分達で食料を持ってきてはいるが、やはり旅用の携帯食は味気ないんでな。温かい食事を貰えれば、疲労も回復できるだろう。」

 食事を届けに行って、戻ってきたエルザに、エリックが礼を言う。


「それでは、そろそろ頂こうか。折角温かく美味しそうなご馳走が並んでいるんだ。」

 エリックの声で、皆が着席する。

「じゃあ、父上とライラにはお酒を、君たちは果物のジュースでいいかな。」

 レティが、エリックとライラにお酌をしているうちに、エルザが手動の絞り器で、収穫したばかりのブドウを次々に絞ってジュースにしてドリンクピッチャーに入れていく。

「お酒に関しては、買ってきたものだけど、野菜、果物、パンの小麦なんかは、うちの畑で収穫したものだよ。肉に関しては・・・、今日は何?」

「今日は、地竜とミノタウロスですね。ステーキが地竜で、角煮がミノタウロスです。」

 ロバートが食材の説明をし、レティがフォローする。

 レティは、ロバートの知識にある料理の説明を聞いて、色々と試行錯誤を重ねて作れる料理の種類を着実に増やしてきている。

 地竜と聞いて、ライラ、サラ、セラは目を丸くしているが、ここに居ればその内慣れるだろう。


「それじゃあ、乾杯!」

 ロバートの音頭で料理を食べ始める。

「「お、美味しい・・・。」」

 サラとセラがステーキを一口食べて、ハモっている。

「美味いな・・・。竜種の肉を食べたのは久しぶりだが・・・、これは焼き方も上手いんだな。」

 エリックもステーキを勢いよく食べている。

「ライラさんのステーキは柔らかくて脂っこくない部位を選んだので、食べやすいと思いますよ。」

「奥様にお気を遣って頂き、勿体無いことでございます。」


「この角煮は、長時間煮込んでいるから柔らかいよ。フォークだけで切れるから。」

 ロバートが勧めると、サラとセラが早速フォークで切ってみる。

「「本当です!!すごく柔らかい。」」

 やはり息がぴったりだ。


「これは魚を油で揚げたものですか?」

 ライラが魚のフライを一口食べて尋ねる。

「ええ、港町の食堂で、油で素揚げしたものを食べたことがあったので、少し手を加えてパン粉を付けて揚げたものです。サクッとした感触が旦那様のお気に入りです。それほど難しくないので、先ほどもサラさんとセラさんに作り方を見て貰いました。」

 レティが、ライラに料理の説明をしていた。


 こうして、美味しい食事に舌鼓を打ちながら、新たに同居する者達と打ち解けていった。


 

 夜、毎日風呂に入っていいという話をすると、サラとセラが歓喜する。

 成人前でもそこは女の子であり、素直に喜びを表していた。

 エリックとロバートが先に入浴した後、レティとエルザが案内して女性陣皆で浴室に連れ立って行った。

 ロバートの知識を元にして、従来からある洗髪剤を改良したものを使ったからか、入浴後は明らかに髪の艶が増し増しとなっており、双子の機嫌が爆上がりしていた。

 ちなみに、護衛騎士達が泊る別棟にも風呂は作ってあり、自由に入っていいと伝えてある。

 就寝時は、護衛1名が交替しながらエリックに張り付くようにするとのことだ。

 正直、敷地全体と建物にそれぞれ≪結界≫を掛けているので、護衛も必要ないのだが、彼らの役目なので、ロバートも敢えて何も言わない。


 サラとセラは、一足早く部屋へ案内し、就寝してもらった。疲れもあるし、まだまだ十分な睡眠が必要な年齢でもある。

 大人たちは、お酒を飲みながら(妊婦はジュースだ)、昔話をする。レティとエルザがロバートの話を聞きたがったからだ。

 幼い頃の失敗談や恥ずかしい話をライラから暴露され、ロバート1人が辱めを受ける羽目になった。


 

 翌日、ロバートはエリックを案内して敷地内を回った。今のところ建物以外は、畑と厩舎がある程度なので、直ぐに回り終わった。

 ただそこで、エリックがポンプに食いついた。

 畑を拡大したので、井戸とポンプも増やしており、ゴーレムが農作業でポンプを使っているのを見て、領内に広めたいと言い出した。

 ロバートとしては、別にポンプで稼ごうという気は無かったので、設計図を起こすから辺境伯家で権利確保して、管理しながら広めればいいと言って、急遽設計図を書いた。

 

 午後、エリックは護衛騎士と共に、ポンプの設計図を抱えて、ホクホク顔で帰って行った。


 あと何日か、屋敷内で仕事の説明をして慣れて貰ったら、3人で霊山へ向かう予定だ。

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