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62.実家へ

 ロバートは、最後に3人組を激励して、ガリアス達と別れた。

 ガリアスは、ヒルデガルドにロバートへの依頼が終了したことを告げに、3人組と一緒に宿へ向かった。

 ロバート達は、もう夕方に差し掛かっていた為、以前泊った宿--結局はガリアスの常宿--の部屋をとることにしたのだった。



「明日は、領都に行ってロイに報告をしておこう。手土産として海産物は大量に買い込んであるし。報告の後、家に帰ることにしよう。」

「うん。分かった。また一飛びね。」

「ああ、よろしく。」

 以前ガリアスにご馳走になった料亭の個室で夕食を食べながらロバート達は話す。


「それと、さっき、あのお嬢様に、俺達にパーティを組んでくれって言われたよ。」

「「えっ!?」」

 ロバートは、先ほどの会話の内容をそのまま全部2人に話す。


「旦那様♪」

 レティは、自分の事をしっかりと考えて貰えていると、目を潤ませてロバートを見つめている。

「へぇー、あの侍女よりはマシかと思ったけど、やっぱりお貴族様なのね。」

「帝国は人種差別、身分差別が激しいから、平民の俺達なら言うことを聞いて当たり前って刷り込まれているんだろうな。態度を見る限り性根の悪い人間では無いと思うけど、どうしても周りが自分の為に動いて当然っていう感覚はあるんじゃないかな。まあ、それは王国の貴族にもたくさんいるけどね。」

「でも、もう関わり合いになる必要はないんでしょ?」

「ああ、辺境伯家の暗部が張り付いたから、後はお任せで。俺達は家に帰ってゆっくりしよう。」

「はい!帰ってゆっくりしましょう。」



 昨晩、久しぶりに思う存分仲良くなってご機嫌の3人は、朝食を食べ終わると町の外に出て、エルザに乗って飛び立った。勿論≪認識阻害≫を掛けることは忘れない。

 特に急いではいないので、それ程早く飛んだわけではないが、昼前には領都が見えるところに降り立った。そこからは歩くことになるが、ロバートの様子がなにやらおかしい。


「旦那様?」

 それに気が付いたレティが顔を覗き込む。

「ああ、ゴメンね。変な顔してた?2人にも見えると思うけど、領都に王女がいる・・・。」

 2人とは≪探知≫魔法と“地図”スキルを≪共有≫しているので見えるはずだ。

「えっ!?・・・ああ、この人ですか?私達は面識が無いので言われなければ気にしてませんでした。」

「それで、どうするの?もちろん会いたいとは思って無いでしょうけど。」


「・・・まだ、俺に用があるのかわからないけど・・・、こっそり城に入って情報収集だな。ロイに≪式神≫を飛ばしてもいいけど、万が一にも王女側の目に触れると厄介だし・・・。とりあえず、いつも通りフードを目深にしていこう。」

 そこから城門まで歩き、領都の中に入った。


 以前と同様に面会申請場所に行くと、丁度前に担当してくれた受付の女性がいた。ロバート達がそちらに向かっていくと、受付女性も気がついたようだ。

「すまないが、あまり他の人に知られないようにマークを呼んでもらえないだろうか?」

 小さな声でささやく。

「しょ、承知しました。こ、こちらでお待ちください。」

と、隣の小部屋へ案内したあと、なにやら顔を赤くして部屋から出ていった。


「どうしたのかな?」

 ロバートが呟くように言うと、

「むぅ、知りませんっ!」

と、レティが拗ねたように顔を背ける。

「クスクス、旦那様がさっきの娘に顔を近づけ過ぎて囁くから・・・。」

「えーっ、だって仕方ないじゃないか。人に聞かれたくないんだから。」

 ロバートが不本意だと抗議する。

「まあね。ほら、レティもそんな直ぐ拗ねない。でもそんな仕草も旦那様の大好物だから・・・。」

「えっ」

と、レティがロバートの顔を見ようとしたとたんに抱き締められた。

「そんな感じも可愛いよ。本当に。」

 レティは顔を真っ赤にして俯いている。

 エルザはそれをいつものことと微笑ましく見ている。


「ゴホン。よろしいでしょうか?」

 いつのまにか到着していた執事のマークがやや呆れ顔で戸口に立っていた。

「ああ、すまない。暫くぶりだね。扉を閉じて中で話そう。」

「承知しました。」


「それで、王女が来ている件だけど・・・。」

 皆でソファに座った後、ロバートが話を振る。

「はい。名目上は視察ということでエリック様クリスティーナ様のお帰りと同行なされまして。型通りの視察後は、ライアン様に会いたいと仰せで・・・、領都にいないと説明しても会うまで帰れないと仰っておられます。」

「はぁ・・・、やっぱりそうか。王女側に知られないようにして父上達と話せるかい?」

「はい。殿下方は、貴賓来客用の離れの塔にご滞在されておられますので、エドワーズ家の家族区画なら不意の遭遇も無いかと。流石にご自身の我儘であることは自覚なされているようで、会いたいという発言以外は自重なされているのか、おとなしくされておられます。」

 ロバートの懸念をしっかりと汲み取って答える。

「よし、じゃあ父上達と話そう。レティとエルザはどうする?」


「うーん、私達が旦那様に寄り添っていると、拗れそうだから街でも見学しようかな。」

「私もそれで構いませんよ。」

「分かった。何かあったら≪式神≫で連絡することにしよう。マーク、彼女達が自由に出入りできるように手配してくれないか?」

「承知しました。」

 ロバートは、冒険者ギルドに寄るかもしれないというレティにボス部屋で収納したオーガを渡しておいた。食べれないから素材を買い取ってもらってと。



 ロバートは、城中の家族用の居間で待っていると、両親とロイが入ってきた。

「お帰りと言えばいいか、ただいまと言えばいいか。」

「どっちでもいいんじゃない。久しぶり。」

 ロバートがエリックに答えながら、クリスティーナとハグをする。

「元気そうでよかったわ。ところで貴方の可愛いお嬢さん達は?会えるのを楽しみにしていたのよ。」

 クリスティーナがキョロキョロしながら尋ねる。息子達ももういい年齢だというのに、その仕草も可愛らしい。

「今は街に出ているよ。まずは王女の件を片付けようと思ってね。事情を聞かせてくれない?」

 そう言いながら、みんなでソファに座った。


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