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6.出会い

 今、俺は、森の中に入っている。別に道に迷った訳ではなく、ポーション作成用の薬草採取が目的だ。

 今後、他人に対しておおっぴらに治癒魔法を使いまくるわけにはいかないだろうし、“錬金術”スキルの上位スキルである“創造”スキルを実際に使って確認をしようと思ったからだ。このスキルは、全く無の状態からでも物を作り出せるものだが、それだけ魔力消費も大きい(もっとも俺の魔力回復量は桁違いに早いので問題ないっちゃないんだが)。そこで、“錬金術”スキルと同様に素材からポーションを作る確認をする。

 必要な薬草と瓶の材料となる鉱物を集めてきて、“創造”スキルを使う。


 結果としては、簡単に作製できた。鑑定すると、上級ポーションだった。これだけだと不都合があるかと思い、調整をしつつ作製を続けたところ、中級、下級ポーションも思ったとおりできたので、調子に乗って、それぞれ50本ほどつくり異空間収納へ入れておいた。

 なんか、これだけで暮らしていけるんじゃないか俺。


 その他に材料となる素材を収集して収納していたところで、≪探知≫の端っこに悪意を放つ人間が複数引っかかった。鑑定すれば、盗賊とそれに襲われる奴隷商人らしい。ふー、行ってみるか。




 賊の襲撃現場に到着して樹の陰から様子を伺う。奴隷商人の護衛と思われる冒険者が全て地面に転がっている。このまま放って置いたら死ぬな。

 一番いい服を着ているのが奴隷商人で、その部下が3人、合わせて4人が土下座して命乞いをしている。商人の荷馬車は無傷のようだ。盗賊の目当てが商品なら当然なのだが。

 盗賊は、20人程度だが、ほとんどがレベル15前後で、頭目らしき男のレベルが26と一人だけ高い。護衛は5人だから数の暴力でやられたか。


「そこの商人さん。助けた方がいいか?」

と、おもむろに近づきながら聞く。

「なんだてめえはっ!?」

 頭目が叫んでいるが、商人は声が出せないようだな。

 盗賊達が一斉にこちらに武器を向ける。

 

 おっ、盗賊の区分が全員敵対に変わったな。確かに、面識が無い人間がいきなり敵対ってことは無いしな。明確に暗殺目的で狙ってくる場合は別として。

 とりあえず、戦闘不能にするか、≪麻痺≫ と盗賊全員に向け魔法を放つ。

「「「「ぐあぁぁ!」」」」

と、頭目を除いて盗賊の部下達が地面に倒れこむ。

「てめえ、質問を無視した挙句、何しやがった?」

おっと、頭目は状態異常耐性でもあるのか、魔導具か、≪麻痺≫が効いてないな。

よし、力押しで、≪麻痺≫≪麻痺≫≪麻痺≫≪麻痺≫ パリン!

「がああぁあ!」

魔法を重ね掛けした結果、魔導具が壊れたみたいだな。無事頭目も悶絶している。

冒険者になって初めて人の悪意と敵意に触れ交戦したが、意外と落ち着いていたな。

頭では、問題なく対処可能と分かっていても経験値が圧倒的に足りないからな。


「えーと、大丈夫か?」

と商人の方を向く。

「は、はい。ありがとうございます。ただ、護衛の方々が我々を守って重傷なんです。」

「ああ、じゃあこれを護衛全員に飲ましてやって。あんた達は怪我はないのか?」

と、ダミーのバッグがあたかも収納量の多いマジックアイテムであるかのように見せかけ、収納から中級ポーションを人数分取り出した。

「私どもは守ってもらったので大丈夫です。早速手分けして飲ませましょう。」

と、部下に指示して護衛の冒険者にポーションを飲ませる。



「すまない。助かった。我々は護衛依頼を受けたDランクパーティーの<銀の翼>だ。俺はリーダーのバッシュという。当然ポーション代は払わしてもらう。」

「俺は、ロバート、ランクE冒険者です。ポーション代は気にしなくてもいいですよ。もし、頂くとしても護衛中の必要経費を負担するのは依頼主でしょうし。それよりも、今は麻痺させただけなので、賊を全て縛ってしまいましょう。」

「あれでランクEなのか・・・。」

とバッシュが呟きながら賊の捕縛に向かう。


「改めましてありがとうございました。私は、王都で奴隷商を営むリカルド商会の商会長のガリアスと申します。あと少しで王都に到着するというタイミングで盗賊に襲われるとは運が悪かったですが、お助け頂き死亡者0とは、何度お礼を申し上げても足りません。助けていただいたお礼とポーション代として如何ほどお支払いすればよろしいでしょうか?」


 俺は、先ほどから荷馬車の中にいる奴隷の一人が気になっていた。他の奴隷は全員愛玩奴隷としての扱いのようだが、その奴隷は獣人の魔法剣士となっており、欠損がある。ただ、レベルが24!。これは惹かれるものがある。

「今、一人旅なのだが、連れがいればいいとも思っていたところなんだ。そこの荷馬車の奴隷を見せてもらい、気に入った奴隷を値引きしてもらうことは可能か?」

「もちろん可能です。ではこちらにいらしてご覧ください。」


「彼女は?」

と、さり気なく獣人について聞く。

「ああ、とある獣人の里から引き取ったのです。なんでも族長争いで傷つき、事実上の追放みたいなものだそうで、村に残っても殺される運命らしく、欠損が右目、左足。右手ですので、買い手はつかないかもしれませんが、殺されると聞いては寝ざめも悪く。王都は義肢の開発が盛んなので、殺されるよりは先があるかと思ったのです。」


「あんたは、善良な商人のようだな。よし、この娘を買い取りたい、いくらだ?捕えた賊を王都に連れて行ってくれれば、その報奨金もそちらで受け取ってくれてもいいし。」

「い、いえっ、それではこちらが貰い過ぎです。そのまま引き取って頂いて問題ありません。でも欠損がありますが、大丈夫ですか?」

「それはこちらで考えがあるから心配無用だ。」

「わかりました。恩人に対して余計な詮索は無用ですな。では、奴隷紋のマスター変更をしましょう。」

ということで、ガリアスの奴隷契約呪文の後に、背中にある奴隷紋に俺の血を垂らし変更登録を終え、奴隷を手に入れたのだった。



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