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54.ダンジョン同行

 明朝合流ということで、今日は解散となった。

「ごめん、レティ。あんなこと言わせたままで。あの場で張り倒せば気が済んだかもしれないけど、その後の父上達への迷惑を考えると、躊躇してしまった。」

「私も頭を殴り飛ばそうと思ったけど、あのおじさんが間に入っちゃったから・・・。」

 宿に戻る道中、ロバートとエルザがレティに物騒なことを言う。

 しかし、はるかに年上なエルザにおじさん呼ばわりされたガリアスの立場は・・・。


「いえ、気にしていません。これまでも全く無かったという訳ではないので。むしろ、旦那様が怒ってくれたことが単純に嬉しかったです。」

 レティの可愛い言い様にロバートが頬を緩めて頭を優しくなでると、レティも嬉しそうに微笑む。

 王国でも他種族への差別は長い時間をかけて解消されてきたが、レティの言う様に全て無くなったという訳ではない。

「まあ、ダンジョンでレティの力を見せることも出てくるだろうから、見せつけてやればいいさ。」

「そうね。私も聞いててムカついたし。」

 レティは、自分を気遣ってくれる2人と一緒にいられる幸運を改めて感じていた。



 翌朝、しばらく野営となる為、昨晩頑張り過ぎた体に≪回復≫を掛けてから朝食を食べ宿を出た。

 

「では、よろしくお願いいたします。」

 わざわざ見送りに来たガリアスが言う。

「では、行こうか。大森林東のダンジョンまでは、徒歩で約4時間といったところだ。昼飯までにはつけるな。街道が整備されているから道中それ程危険は無いと思うが、警戒は常にするように。」

「「「分かりました。」」」

 奴隷組は、やる気十分のようだ。

 昨日調達したらしい武具を身に着け、大荷物を持っている。


 道中、警戒はさせながら、能力を自己申告させる。

 ・グルーン・・・剣士系   槍を使う

 ・ミュラー・・・戦士系盾職 元猟師の為、索敵も少しはできる

 ・フランツ・・・魔法職   回復・補助系魔法が多少できる

 ロバートが見た能力と特に齟齬は無い。このまま自覚通り成長してもらうことにした。

「これほどはっきりしていれば、基本隊形は分かるな。」

「ええ、私、グルーン、フランツの順でしょうか。」

と、ミュラーが答える。

「そうだな。索敵が出来て盾職なんて、先頭としてうってつけだしな。罠の検知が出来るようになれば更にすばらしい。グルーンは、状況に応じて、ミュラーが受け止めた敵を後ろから飛び出して攻撃だな。フランツは後方で支援しながら全体を俯瞰して指示を出せるようになれば御の字だな。」

 ロバートも、慣れてきたのか、その他にもダンジョンについて3人に助言していく。


 レティとエルザは、最後尾からその状況を眺めながら歩いている。

 ヒルデガルド達は、なんとなく居心地が悪そうだが、ロバートがわざわざ大きな声で話しているので、話は聞こえているだろう。少しでも学んでくれればいいが。



 4時間ほど歩いた後、特に問題なくダンジョン入口に到達した。

 各自用意した食事をとらせた後、冒険者の列に並び、ダンジョンへと入った。


「よし、この階層はランクの低い魔物しかいないけど、今後の練習として警戒しつつ進もう。慣れてくれば、少しは魔物の気配を感じ取れるようになるだろうから、なるべく周囲の気配に気を配るように。」

「「「はい。」」」

 奴隷組3人に先に行かせて、ロバート達は後ろからついていく。

 ロバート達は≪探知≫で魔物や他の冒険者を認識しており、彼らに何かあっても直ぐに対応可能な体勢を取っている。


 もうすぐゴブリン2体と遭遇しそうだな、とロバートが思ったところで、ミュラーが声を掛ける。

「近くに何かいる。更に慎重に行こう。」

「「分かった。」」

 ロバートは、初めてにしては落ち着いているなぁと感心して見ている。

 

「ゴブリンだな。まだ少し離れているから待伏せしよう。」

 元猟師というだけあって、ミュラーは確実に獲物を仕留めようと、逸って飛び出そうとしたグルーンを止めた。

「わ、分かった。すまん、焦っていた。」

 グルーンも素直にミュラーの言葉に従った。

 そして、十分に引き付けた後、物陰から出て、ミュラーが1体を盾でぶっ飛ばし、グルーンが槍でもう1体を一突きして仕留め、続けてミュラーが転がした方にも止めをさした。


「いいよ!いい動きだった。あと、素材を回収する場合は、直ぐに解体しないとダンジョンに吸収されるぞ。素材が嵩張って持てないなら、吸収されて魔法石になるのを待てばいい。」

「分かりました。ゴブリンは素材が安いと聞いているので魔法石にします。」

 ロバートの助言で、解体せず待つことにしたようだ。

 少し待って、魔法石を回収した。



 その後、ゴブリン、コボルトと遭遇したが、堅実に仕留めていた。何回か10匹未満の小さな群れとも遭遇したが、ロバートの助言に従い、細い通路に誘い込むことで相対する人数を絞って対応した。多少傷を負ったりしたが、フランツの魔力温存の為、傷薬で対処した。

 3人の対応能力が中々高い。

 無事、次の階層に降り、安全地帯に来た。

「ここで、水晶に触れると到達者として登録されるんだ。登録した後に水晶に触れるとダンジョン入口まで戻れるし、次から登録した階層にはダンジョン入口から同じように飛べる。だからここから出発した後も、いつでも戻れるように位置を把握しておかないといけない。じゃあ、登録してくれ。」

 3人が頷き、順番に登録した。

 ヒルデガルド達は躊躇しているのを見て、ロバートは溜息をつきつつ、登録を勧めた。

「自分たちが戦闘をしてないから躊躇しているのかもしれないけど、まだそんなことを気にするような階層じゃないから登録しておいた方がいい。別に登録したからといって、前の階層に行けなくなるわけじゃないから。」

「分かりました。」

と、素っ気なく言って、ヒルデガルド達も登録した。


「さて、今のおおよその時間は分かるか?」

 ロバートは、ミュラーに尋ねる。

「さて、腹の空き具合からすると、そろそろ18時くらいでしょうか。」

「ああ、そんなところだな。洞窟系のダンジョンだと時間経過が分かりづらく、緊張して腹具合にも注意が向かないから、気が付かないうちに無理をしてしまうんだ。でも冷静に腹具合を判断できるってことは、初めてにしては冷静だな。やはり猟師の経験があるからかな。」

「そうかもしれませんね。血塗れの魔物を見ても冷静でいられた気がします。」

 ロバートは、倒された魔物を見るたびに吐きそうな表情をしていたヒルデガルド達をチラッと見てから、皆に告げた。

「よし、じゃあ、今日は初日で疲れを残さない様に、ここで野営しよう。」


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