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52.ガリアスの頼み

 今日は、出品物の代金を受け取る日だ。

 ロバート達は、とりあえず朝食を食べる為、宿の食堂へ向かった。

 習慣化したかのようにガリアスと会う。オークションは終わったが、まだ町を離れないのだろうか?

「おはようございます。実はロバート様に依頼を出させて頂きたいと考えているのですが、夜にでもお話を聞いて頂けないでしょうか?了承頂ければ、ギルドへ指名依頼をお願いしようと思いますが。」

「まあ、話を聞いてみないと何とも言えないから、夜に話を聞いてからだな。」

 ロバートは、安請け合いは出来ないと返す。

「では、18時に、4軒隣の料亭で如何でしょうか?ご馳走させて下さい。」

「ご馳走になると断り辛くなるじゃないか。」

 ロバートは、ため息をつきながらも断ることまではしなかった。


 

 事前に連絡を受けていた時刻にオットーの事務所を訪れると、オットー本人が待っていた。

「この度は貴重な物を多数出品して頂きありがとうございました。お陰様で大盛況でしたが、お客様方の次回への期待値が跳ね上がり過ぎてつらいですね。」

 言葉とは裏腹に満面の笑みで挨拶する。

「こちらも、出品者を秘匿してもらって騒ぎにならず助かってますから。まあでも次回は未定ですね。」

 次回の出品も言外に匂わせたオットーへ釘をさしておく。

「そうですか。可能なら次回も是非ともお宝の出品をお願いしたいのですが・・・。では、代金のお渡しです。」


 机の上に碧金貨と大金貨、金貨が並べられる。大金貨が端数扱いされる取引額だ。

 結局、竜の素材各種と古龍の鱗、エリクサーの合計落札額は、30億550万ゴルドとなり、事前説明通り、手数料と寄付を除き、24億440万ゴルドとなった。数百年は遊んで暮らせる金額だ。

 金銭感覚がおかしくなってきているロバートもこれだけの現金を目にして、やや引き気味だった。


「それでは、次回の参加も心待ちにしております。」

「まあ、巡り合わせがよくて、出品できる物を持ってればね。」

 答えを濁したロバートは、オットーの事務所を出ると、少しでもこのお金を領地に還元するために、魚市場で魚介類を更に買い漁った。




 その夜、ガリアス指定の料亭を訪れると、速やかに部屋へと案内された。

 頼み事をするガリアスが用意した席なので、美味しい食事にありつけるだろうと、レティとエルザはご機嫌だ。

「ご足労をお掛けしました。早速料理を持ってこさせましょう。」

 部屋に入って席に座ると、ガリアスが店の女給に声を掛け、料理を準備させる。

「飯が不味くならない話なら、食べながら聞こうか。」

 料理に手をつけ始めたところで、ロバートが話を振る。

「そうですね。ご覧になっていたとは思いますが、今回3人奴隷を競り落としました。彼らには今後私の護衛として働いてもらおうと思っております。」

 一呼吸入れて、お茶を飲んだ後、さらに続ける。


「やはり、毎回違う冒険者を雇うよりは、信頼度が全く違いますし。ただ、今のままでは少し物足りないと考えております。なので、冒険者登録をして、3人パーティーでダンジョンに行き、鍛えてきてもらうつもりなのです。そこで、2週間ほど、彼らに随行して指導して頂きたいのです。」

 ロバートは、少し考えて、

「指導と言うが、具体的には?ちなみに俺達にしても、それ程冒険者生活が長いわけではないんだが。」

と、尋ねる。

「一番大事なのは、死なないのは勿論、取り返しのつかない怪我をせず帰ってこれるようにして頂くことです。そして、可能であれば、3人の実力を見て、役割分担や戦闘戦術などを身につけさせて欲しいのです。」

 

 ロバートは、レティとエルザが美味しそうに食事をしている様子を見て、ご馳走になったし、まあいいかと思った。“詳細鑑定”で細かいスキルまで見れば、役割や戦術を考えるのは簡単だろう。

「分かった。2週間だけであれば受けてもいいよ。但し、あくまでも俺達を当てにせず、自分たちの物は自分たちで準備をすることは徹底してくれ。」

「ありがとうございます。お引き受け頂けて助かります。それで・・・、少し言いづらいのですが、そのついでと言いますか、同時にあと2人の面倒を見て頂きたいのです。」

「はっ!?どういうことだ?」

 よく分からない申し出にロバートは思わず問い返す。


「実は・・・、口外するのは秘密保持に反するのですが、これを省くとご納得も頂けないと思いますのでお話しします。ここだけの話で止めて頂きたく存じます。」

 額の吹き出した汗を拭きながらガリアスが説明した内容は以下のようなものだった。

・競り落とした奴隷の代金支払いと引き渡しを受けた後、オットーに呼ばれた。

・エリクサーの代金を全額は払えない公爵令嬢の一部肩代わりを打診された。

・払えないのに落札した時点で罰金ものだが、オットーが今後進出を考えている帝国の貴族を無下にできない。むしろ貸しを作りたい。

・但し、いくらなんでも主催者自身が肩代わりは出来ないので、ガリアスに声を掛けた。

・負担を掛ける代わりに、ガリアスに3年間の情報の無償優先譲渡の便宜を図る。

・ガリアスは受け入れ、公爵令嬢ときっちり魔法契約を結んだ。

・公爵令嬢は冒険者として金を稼ぐか実家から取り寄せるか、利子を含めてガリアスに返済する。

・1年間で完済できない場合、借金奴隷となる。


「という事情で、令嬢方もダンジョン未経験とのことですので、慣れるまでは、私の奴隷と一緒に人数を増やして入った方がいいかと判断したのです。まだ彼女は奴隷では無いので、私は指示は出来ないので、ただのお節介になりますが。」

 ロバートは、エルザが以前言ったように、厄介事を引き寄せてしまったことに頭を抱えつつも、

「ちなみに、公爵令嬢の方は何人なんだ?」

「公爵令嬢本人と侍女の2名になります。なんでも、護衛騎士は、全員エリクサーの護衛として直ぐにでも本国へ帰らせるとのことです。それ以上の事情は聞いていません。」


 ロバートは、知ってしまった以上、野垂れ死にでもして辺境伯領に迷惑を掛けられては堪らないと考え、とりあえず監視がてら引き受けることにしたのだった。

 いずれにしろ、ロイには連絡しないといけないなと考えながら。


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