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48.お披露目会

 オットーは、ロバートに向かって、オークションの話を始める。

 買い手としての参加については、特別な話は無いので、注意事項と開催時間を後で秘書に説明させるとのことであった。但し、即日現金払いについては念を押された。


「出品者としても参加をお考えということですが、規則として、落札額の1割が我々の手数料、1割が慈善事業への寄付、8割が出品者の取り分となります。そこはよろしいでしょうか?」

「全く問題ないよ。むしろ貴方達の取り分が1割という低さに驚いた。」

「そう言って頂けるとありがたいです。この割合でも、かなりの頻度で文句を言われるんですよ。金回りが悪くなって、家宝を出される方もいらっしゃいまして・・・、おっと、少々口が軽くなりましたね。さて、出品物の事前確認ですが、何を出品されますか?時間がなく、明日にはお披露目会となっておりまして。」

 ロバートは、通常どの程度の価値の物が出品されているか知らない為、一応聞くことにした。


「通常は、どの程度の物が出されているのだろうか?もしかすると、こっちの考えている物が場違いかもしれないのだが。」

 オットーは、微笑みながら、

「そういう心配がございましたか。基本的には、出品者ご本人に開始価格を決めて頂きますが、まあ大金貨1枚、100万ゴルドを下回ることはなく、過去、碧金貨1枚、1億ゴルドを提示された物もありました。無事落札されましたが。」

「なるほど・・・、こちらが手持ちで考えているのが、竜種の肉以外の素材なんだが・・・、肉は自分達で食べるので。」

 オットーは、それ程驚く様子もなく、

「そうですね、亜竜や地竜などは、高ランク冒険者の狩ったものが偶に出品されてますね。価値としては十分だと思いますが、買い手に与える衝撃は小さいかもしれませんね。」


 ロバートは、レティと顔を見合わせる。以前、ギルドでの買取は、相当買いたたかれていたかもしれない。

「えっと、亜竜とかは無くて、出せるのは、火竜、水竜、風竜の鱗、皮、骨、血とかだな。」

「おおっ!!それは素晴らしいですね。ランクSの竜種素材などなかなか出ないもので。」

「あと、古龍の鱗ならある。」

「はっ!!?い、いまなんと?」

 オットーの表情が驚愕に染まる。

「古龍の鱗だ。鱗だけしかないんだが。」


 オットーは何やら考え込んでいる。

「ロバート様は、ランクBとのことで、失礼ながら私の見立てでもその実力相当とお見受けしました。なので、今お聞きした素材を狩れるとは思えないのですが・・・。」

「まあ、古龍の鱗は戦って得たものではないので。他の竜は狩りましたが、まあ、冒険者としては手の内を晒すつもりもないですし。」

「ああ、失礼しました。詮索し過ぎですね。では、素材の出せる倉庫へご一緒して頂いていいでしょうか?私は、“鑑定”スキル持ちなので、素材の見聞をさせて頂きます。」

「分かりました。ああ、そういえば、エリクサーはどうでしょう?」

 ロバートがついでという感じで何気なく言うと、オットーは固まった。



 落ち着きを取り戻したオットーと共に倉庫に向かい、出品する素材を目の前に並べる。オットーは、それらを“鑑定”した後、自身の管理する収納箱に納め、預かり証をロバートに渡した。ダンジョン産の収納箱で、オットーの所有者権限でしか取り出しできないとのことだ。


 結局、エリクサーは2本出品することにした。ロバート達は、相場が分からないので、開始額はオットーにお任せとした。

「いやぁ、このオークションは、空前の盛り上がりになるでしょうな。」

 オットーが興奮気味に言う。

「そう言ってもらえると、出品する甲斐があるな。じゃあ、明日は買い手側でお披露目会を見物させてもらうよ。」

「ええ、楽しんでいって下さい。ただ、出品者と思われるような言動は控えて頂いた方がいいかと。本人からバレることについては、我々も対処できませんので。あと1つ、会場では奥様方のお顔を隠された方がよろしいかと。厄介な方々の目を引く可能性が高いです。」

「ああ、色々助言ありがとう。素直に従っておくよ。」


 オットーが挨拶をして退いた後、秘書から残りの説明を受け、事務所から出た。

 時刻も昼近くになっていたので、レティとエルザの要望に従い、のんびりと食べ歩きへ繰り出し、宿へ戻ったのだった。



 翌朝、昨日と同じようにガリアスと一緒に朝食をとり、お披露目会に向かった。

 午前と午後1回ずつ、計2回行われ、どちらに参加してもいいとのことであり、特に用事も無い為、午前の部に行くことにしたのだった。

 オットーの助言に従い、今日は3人してローブを着用し、フードを被って、顔を隠している。会場に入って行く他の参加者の中にも、仮面などで顔を隠している者が少なからずいるので、特にロバート達が悪目立ちすることもなさそうだ。


 会場は、普段倉庫として使っているであろう建物の内部を改造して、階段状に後ろに行く程高くなるように座席が設けられている。簡易に設営された物とは思えない上質の座席が用意されている。

 座席も早い者勝ちのようなので、目立たない席に3人で座った。

 ガリアスは、より近くで見れるように前方の席へ向かった。

「もし、何か欲しいものがあったら教えてね。」

 おそらく2人の興味を引くようなものはあまり無いだろうと思いながらも一応声を掛ける。

「そうですね、何か旦那様のお役に立つ道具などがあればいいのですが。」

「そうね。私個人として使いたいと思うようなものは無いと思うわ。」



 程無くして、お披露目会が始まり、司会者が順番に出品物を紹介していく。

 ・高級ワイン

 ・各種宝石(高級品)

 ・美術品

 ・武具(ダンジョン産、名工の業物)

 等が、紹介され、参加者の興奮する様子が伝わってくる。

 そして、ロバートが出品した竜種の素材でざわめきが大きくなり、古龍の鱗で会場が大きくどよめいた。ロバート達の想像よりも衝撃は大きかったようだ。

 その後、司会者が目玉として盛大に煽って最後に紹介したエリクサーが登場した時、会場が水を打ったように静かになった。

 

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