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47.主催者

 結局、食堂で朝食中のガリアスと会うことが出来、オークション主催者への紹介を頼むと、快く引き受けてくれた。但し、今日は別件の取引相手との面会があるとのことで、明日、一緒に連れて行ってくれることになった。


「今日は、どうしようか?食べ歩きをしながら、まだ育てていない農作物の種や苗を探したいんだけど。」

「果物がいいわ。甘いジュースに出来るようなものがあればいいわね。野菜は・・・、まあどっちでも。」

「あとは、穀物や薬味になる野菜などは如何でしょうか?食卓が豊かになると思います。」

 2人からの提案を受けて、ロバートも頷く。

「そうだね、いいものが見つかれば、色々と確保しておこう。あ、でも苗は収納できないか。収穫済みのものや種だと収納できるのが不思議だけどね。」

 そう言いながら3人揃って宿を出発した。


「ところで、オークションには何か出品されるのですか?余っている素材もありますし、誰が売ったか分からないのでしたら、この機に売ってしまってもいいかと思います。」

 市場に向かいながらレティが提案する。

「そうだね、竜種の素材とか、自分で何か加工するにも多すぎるくらいあるし、ギルドで売って騒がれるのが嫌で肉以外は死蔵してたしね。それに何か競り落としたいものがあった場合、買値が全く読めないから、現金確保のために売ってみようか。なんせ、原則即日現金払いって言ってたし。」


「私の鱗も集めてたよね。それも売らない?でも値段なんかつくかしら?」

 エルザが思いついたように提案する。エルザは龍形態になった時、古くなった鱗が自然と剥がれ落ちることがあった。素材として貴重ということもあるが、他人に発見されると騒動になりそうだと、ロバートとレティが回収していた。

「いやいやいや、多分物凄い値段が付くと思うよ。大騒ぎになるかも。ああ、それならいっそのこと、どさくさに紛れてエリクサーも出してみるか。古龍の鱗の方が希少性で言えば話題性が高いと思うけどね。」


 ロバートは、時間があるときに希少金属素材と共に、各種ポーション、エリクサーの“創造”も続けている為、文字通り売るほど所持している。ポーションやエリクサーは、いざという時の為に、レティとエルザのポーチにも収納してもらっている。また、エリクサーは、ダンジョンから極稀に発見されるので、人前で使うなら、≪再生≫をかけるよりはいいだろうという理由もある。


 オークションについて話をしているうちに市場に着き、目的の種を各種大量に買い込み、その後は昨日同様、食べ歩きを堪能したのだった。



 翌朝、朝食をガリアスと一緒に取った後、オークション主催者の元へ向かった。

「主催者のオットー氏は、自身も大きな商会を経営しておりますが、珍しい物に目が無く、収集するよりもとにかく数多くの珍品を見たいという気持ちが強いので、それが高じてオークションを開催しております。出品される物をいち早く見れる立場がいいとのことです。普段は温厚な人物ですが、偽物には厳しいですね。以前、故意に偽物で騙そうとした者は、その後行方知れずです。」

「それは・・・、でも抑止力としては、それくらいの評判の方がいいんだろうな。参加者が権力や財力を持っている以上、一度信用を失うと終わりだろうしな。」

 ロバートは、ガリアスから主催者の情報を聞いて、素直な感想を話す。

「う~ん、やはりロバート様はただの冒険者とは思考の巡らせ方が違いますね。ああ、余計な詮索はしませんよ、勿論。ところで、何か出品されるつもりでしょうか?」

「そのつもりはあるが・・・、まあ、会ってからだな。」

 

 ロバート達はガリアスから、色々とオークションに関する情報を聞きながら、主催者の事務所に向かった。ちなみに、ガリアスの護衛達は、少し離れた後方から油断なくついて来ている。

 その後、更に聞いた情報では、オークション自体は明後日だが、明日には事前のお披露目会があり、オークションに掛けられる物品が紹介されるらしく、出品するなら今日決断しなければならないようだ。



 主催者の事務所に到着し、ガリアスが用件を伝えると、すんなりと応接室へ通された。その後、秘書を名乗る男から、売買どちらへの参加希望かを聞かれたので、両方であることをロバートが伝えると、商会長を呼んでくると言って出て行った。

「こんな直前の忙しい時期に、直々に会ってくれるとは思わなかった。」

 部屋に残されたロバートが、誰に言うでもなく呟く。

「オットー氏は、人と人との出会い、繋がりを大事にされる方ですので、わざわざ紹介された人と会わないという選択肢はないのでしょう。」

 ロバートの呟きを聞いて、ガリアスが律儀に答える。

「そうか・・・。」


 さほど待たされることもなく、主催者であるオットー氏がノックの後、室内に入ってきた。

「お久しぶりですね、ガリアスさん。そして、どうも初めまして、オットーと申します。」

と、にこやかな顔で挨拶をしてくる。油で固めた黒髪で、鼻の下にちょび髭がある細身で長身の男だ。にこやかでも眼光は鋭い。そして、“鑑定”スキル持ちだった。

「どうも、冒険者のロバートと言います。ランクはB。この2人はレティとエルザ、パーティーメンバーで、妻でもあります。ガリアスさんに無理を言って紹介してもらいました。」

 ロバートもそれなりに影響力のありそうな大商人に、若干丁寧に挨拶した。

 オットーが、2人の美貌に目を向け、一瞬息を呑んだが、直ぐに表情を戻した。


「それでは、細かい出品物の話などあると思いますので、私はこれで退席いたします。」

「心遣いありがとうございます、ガリアスさん。出品者が特定されない為の原則に例外は作れませんので。」

「ええ、分かっております。それではロバート様、後はオットー殿とご相談ください。」

「ああ、紹介ありがとう。では、また明日の朝に。」

「はい。それでは失礼します。」

 ロバートと言葉を交わして、ガリアスと護衛が退室していった。


「では、詳細についてお話いたしましょう。」

 皆が、席に座ったところで、オットーが切り出してきた。


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