44.そしてスローライフ
あけましておめでとうございます。
個人的な事情により、長らく更新が滞り申し訳ありません。
まだ、あまり余裕がありませんが、更新していこうと思います。
「おおー、すごいわ!」
「旦那様、それは一体なんですか?」
ポンプから水が出てくるのを見たエルザとレティが声を掛けてくる。
「これは、ポンプといって、簡単に井戸から水を汲み上げることができる道具なんだ。なんと、一切魔法は使ってないよ。」
「「そうなの(なんですか)!?」」
「ああ、誰でも手で操作すれば、そんなに力を込めなくても水が出てくるんだよ。」
「本当に旦那様は何でもできるんですね。」
「ははは・・・。」
なんでもってことは無いけど、魔法と日本の知識はかなり有用だ。あと何箇所か同じように井戸を作ってもいいけど、俺達3人だけで暮らす分には魔法もあるし、とりあえずここだけでいいか。
さて、次は家かな。
「これから家を作ろうと思うんだけど、さて、どのくらいの大きさにしようか?」
「この小屋じゃだめなの?」
エルザが疑問の声をあげるが、
「さすがに、しっかりとした家が欲しいかな。この小屋は、元々レティを治療するのに急いで作ったものだからちょっと雑なつくりだし。でも、思い入れもあるから、今後も野営には使うよ。」
「旦那様・・・。」
レティが、当時を思い出したのか、何故かうっとりとした顔をしている。
「今日はとりあえずハイトレントを建材として、外壁と部屋の仕切りをしてしまおう。素材があるから魔力も節約できるしね。素材の足りない細かい内装は明日に回して、魔力ゴリ押しでやろう。俺達の個人部屋は2階にしようか。俺の部屋の両隣でいい?」
「「勿論です(よ)。」」
「じゃあ、その3部屋と、客室3部屋くらいを2階に作って、1階には厨房、食堂、居間、応接、風呂って感じかな。何か要望はある?」
「風呂を広めで!」
「厨房を大きくして頂きたく!」
「了解。じゃあ、家を“創造”するよ。」
収納から取り出したハイトレントの素材と岩を使って、魔力を込めて家を形作る。
しばらく魔力を込め続け、家の外壁と内壁、柱といった主に構造材だけの家が出来た。
部屋の大きさも余裕を持って作ったせいか、全体的に大きな家となった。土地の少ない王都の伯爵級の屋敷ってところか。
「やっぱりものが大きいからか、思ったよりも魔力を使ったから、予定通り続きは明日だね。」
「お疲れさまでした、旦那様。では夕食の準備をします。」
レティとエルザは先に小屋に入って行った。
俺は、新しい家の中に入って、内装をどうしようか考えながら中を点検していった。
風呂は、内風呂と、露天風呂を用意しよう。露天風呂は、少し深めに作って泳げるようにしようかなど、アイデアを頭の中で揉む。
夕食後、3人でお風呂に入りながら、内装のアイデア(露天風呂には目隠し、2人の部屋から直接俺の部屋に通じる扉、厨房に窯を作る、等々)を出し合い、方向性を決めて行った。
その後は、3人で濃密な夜を過ごし、ぐっすりと眠った。
朝、食事を済ませ、内装に取り掛かる。
俺の知識として、貴族屋敷が中心となった為、それなりに上品な感じの部屋をどんどん“創造”していった。
レティとエルザの部屋は、それぞれの希望を取り入れながら、何度か作り直して完成した。その2部屋の間にある俺の部屋への扉も設置した。
「人間の住む部屋って、まだよく分からないけど、素敵ね♪」
「こんな贅沢をさせて貰っていいのでしょうか・・・。」
感想は違うけど、気に入ってくれたみたいで良かった。
厨房は、メインで使用するレティの希望を丸々取り入れて整えた。
「すごく使いやすそうです。ありがとうございます、旦那様♪」
すぐ隣に食堂も広めに作っておいた。
「今のところ、客を呼ぶ予定もないけど、そのうち、両親やロイを呼んでもいいかもね。」
風呂は、広めの内風呂と、5人程入れる露天風呂を作った。周りに何もないから不要かと思ったが、何があるか分からないし、2人の入浴姿を誰かに見られるのは我慢ならないので、目隠し用の囲いを配置した。夜には星空を眺めながらゆっくり3人でお湯につかれると思うと心が躍る。
皆で一緒に内装を相談しながら動いていたので、昼食は簡単に肉を焼くことにした。
天気がいいので、野営でお馴染みの竈と金網を準備して肉を焼いて、出来たての家を見ながら食事をした。
「さて、内装も終わったし、畑でも作ろうかな。肉も野菜もまだまだ収納に一杯あるけど、野菜は自前で収穫できるようにしたいね。」
「では、私は、夕食の仕込みを始めます。ゆっくり料理できるので、色々と作りますね。」
「私も手伝うわ。少しでも上達したいしね。」
1人で敷地内の家屋の裏手に行って、≪整地≫して、畑用の土を整え、30m四方の畑を作った。
ところで、畑の管理をどうするかな。そうかっ、土でゴーレムを作って、畑を任せようか。
とりあえず、ゴーレムを1体“創造”する。動力源として、俺の魔力を込めた魔法石を埋め込んだ。ランクAのマンティコアから得た魔法石があったので、畑作業を任せるには十分な容量がある。魔力を消費したらまた込め直せばいいが、1月以上はいけそうな気がする。
まずは、畝作りを任せてみたが、なかなか器用に作業を進めている。種や苗を買えるか街に行ってみないとな。種は食べた後に残ったものでもいいのか?レティに相談するか。
「今日は、畝作りをしたら作業終了してくれ。」
ゴーレムに指示を出し、家の中に入った。
レティ達が作ってくれた夕食を堪能し、3人で初露天風呂に入る。
「は~、1日の疲れを落とすのに、お風呂は最高だな~。夜空も綺麗だし。」
「そうね、人の姿になって、お風呂に入るようになったけど、本当に気持ちいいわ。」
エルザが左腕に抱きつきながら言う。
「本当に。旦那様と一緒にこんないい思いをさせて頂いて、本当に今幸せです。」
レティが同じく右腕に抱きつきながら、目を閉じてうっとりとして言う。
「振り返るとそんなに月日が経ったという訳ではないけど、色々と忙しかったというか、落ち着けなかったから、少しここでゆっくり暮らそうと思うんだけど、どうだろう?」
「旦那様と一緒なら何の問題もありません。」
「私も旦那様と一緒ならいいわ。気が向いた時には、出かければいいしね。」
2人とも大丈夫そうだな。次は・・・、
「ところで、え~と、その、なんだ。ゆっくり生活するってことで、つまり・・・、そろそろ≪避妊≫をやめようかと思うのだけど・・・。まあ、今まで俺の意思で≪避妊≫してきたから、自分勝手なのは自覚してるよ。ただ、」
「「喜んで!!」」
2人とも食い気味に言って、抱きついてくる。
「がぼっ、げほっ、お、溺れる・・・」
「「ごめんなさい。」」
危うく風呂で溺死させられるところだった。
「でも、そんなに喜んでくれると思わなかったから、俺も嬉しいよ。これからもよろしくね。」
「「はい!」」
スローライフへの下地ができたということで、展開としては、ここで一区切りですが、
そこにはこだわらず、続けるつもりです。




