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41.報告

 チャン達が、去っていった後、俺達も港町へ向けてゆっくり歩き始めた。

 ヒルデガルド一行は、俺達と別れた場所から動いていない。食事なのか、行き先を決められないのか、まあどっちでもいいか。もう関わる気はないしな。



 6日かけて歩き、港町に帰ってきた。

「まずはギルドに報告しよう。」

 3人で屋台で肉串等を買って、食べ歩きながらギルドに報告に向かう。

「これも美味しいんだけど、自分達で狩った魔物の方が、肉質からして上だよね。」

「そうね。経験上、強い魔物の方が美味しいわね。」

「へ~。」

 思わず、俺とレティがエルザを見る。


「ちょっ、わ、私は魔物じゃないわよ!これでも神獣、モガッ・・・。」

「声が大きいよ。誰もエルザを食べるなんて言ってないでしょ。」

 エルザが大声を上げそうになったので、手で口を塞ぐ。

「違う意味では、既に食べられてますが。」

 何故かジト目になって、ボソッと言うレティと、それを聞いて顔を真っ赤にするエルザ。

 うん、今日も2人とも可愛いね。



 ギルドに到着し、受付へ行く。まだ冒険者が帰ってくる時間では無い為、閑散としている。

「この依頼について、出来れば上の人間へ直接報告したいんだが。」

 依頼票を見せながら受付嬢へ話す。受付嬢はそれを見て、少し考えてから、

「少々お待ちください。デボラさ~ん。」

と、奥の方へ向かって呼びかける。


「どうしました?」

 デボラと呼ばれた女性がこちらに向かって歩いてくる。眼鏡をかけ、地味な装いのいかにも事務職といった女性だ。

「こちらの方が、依頼の報告を上の方に直接したいと仰られて。」

 受付嬢がこちらを見ながら説明する。なので、俺も

「ああ、すまない。ちょっとこの場で説明するのが憚られる内容もあるから、上の人間に話せればと思って、頼んだんだ。」

「分かりました。私は今ギルマス代行をしているデボラと申します。どうぞこちらへ。」

 依頼票を手に取って確認した後、応接室へ導かれた。



「改めて、ギルマス代行のデボラと申します。」

と、自己紹介を受ける。生真面目な女性のようだ。

「俺は、ランクBのロバート、こちらがレティとエルザだ。ところで代行っていうのは?」

 代行とは、ギルマスがいないときに指名されるものだったはずだ。

「はい、先日、まさに貴方がたにギルマスが直接依頼した件が、職権乱用ではないかと、領都のギルド統括に呼び出され、ギルマスは領都に行っております。」

 俺は何も言ってないけど・・・、

「俺はその件に関して、他の人間に何か言った記憶はないんだが・・・。」

「ああ、そうですね。どうやら、代官のヨークシャー子爵様が問題提起されたようでして。」

 え、そうなの。まあ、あのギルマスとはなんか合わないからそれはそれでいいんだけど。

「そうなんだ。で、貴方が代行ということは、このギルドの現在の責任者という認識でいいだろうか?」

「はい、その認識で問題ありません。」


「では、依頼で調査してきた内容を報告しようか。」

 俺は、順を追って見てきた内容を説明した。

 ・確かに大森林の比較的浅いところに、ランクCの魔物を見かけた。

 ・但し、氾濫するような纏まった動きや北へ継続的に向かう動きは無かった。

 ・浅い領域のランクCは、襲ってきたものは全て狩った。

 ・結局、魔物を浅い領域に追いやっていたのは、グリフォンクイーンだった。

 ・グリフォンクイーンは敵意は無く、意思疎通が出来た。

 ・グリフォンクイーンは怪我をして、治るまで魔物を威圧し追い払っていた。

 ・今は怪我も治り、霊山へ飛び去った。

 ・去った後、少し観察したが、氾濫に繋がるような動きは無かった。

「・・・ということなんだが、グリフォンクイーンの話はすぐに信じられないよな?」

「そうですね。中々お目にかかれない魔物ですし、意思疎通が可能というのも・・・。」


 仕方が無いから、尻尾の羽を1枚取り出して見せる。

「鑑定できる人がいれば、直ぐ分かるんだが、グリフォンクイーンの尻尾の羽を証拠として貰ってきた。」

「ほ、本当ですか!?」

 な、なんだ、凄い食いつきだな。

「ああ、ギルドに鑑定できる人間はいるのか?」

「はい、直ぐに呼びます。ちょっといい?」

と、1人の職員を呼び、耳打ちする。

「今、呼びに行かせました。グリフォンクイーンの尻尾の羽は、エリクサーの原料になると言われており、入手が困難で幻の素材なのです。」

 俺は“創造”でエリクサーを作り出すことができるから、全ての原料素材を集める必要は無いが・・・。


 コンコンと扉がノックされ、

「お呼びと伺いましたが。」

と言って、初老の男性が入ってきた。現状、このギルドで唯一鑑定ができる職員らしい。

「これを鑑定して欲しいの。」

と、デボラがグリフォンクイーンの尻尾の羽を彼の目の前に差し出す。

「はい、どれどれ・・・、こ、これは、・・・」

 何度も鑑定し直しているのか、じっくり時間をかけて観察している。


「これは、グリフォンクイーンの尻尾の羽 に間違いありませんな。」

「ほ、本物なのですか・・・。ロバート様、ギルドにお譲り頂くことは可能でしょうか?」

 さて、早速打診してきたが、どうしたものか・・・、

「とりあえず、保留にしておきます。」

「そ、そう・・・ですか。」

 デボラがあからさまに落ち込んだ顔をしている。


 そうだ、あの件も言っとかないと、

「そう言えば、隣国のベンシュタイン公爵令嬢が大森林に向かう街道にいたが?」

 デボラが、複雑そうな顔で、ため息交じりに

「実は、その公爵令嬢がギルドに来られて、大森林に入るための護衛依頼を出したいと言われたんですが、調査が終わるまでお待ちくださいと申し上げたのです。すると、勝手にギルド内で募集を掛けて、ギルドを介せず冒険者を雇ってしまったのです。冒険者と個人で契約すること自体は禁じられてはいないので・・・、強制的には止めれなかったんです。」

「ちなみに、代官には伝えたのか?」

「はい、情報だけは伝えておいた方がいいかと思いまして。かなり感謝されました。」

 そうだろうな。隣国の最上位の貴族だからな・・・。

 まあ、かといって俺達に出来ることは無さそうだし、もう行くか。


「それでは、依頼報告はしたし、これで失礼するよ。」

 何か言いたげなデボラを残し、依頼報酬受け取りと素材買取をして貰うべく受付へ向かった。


名前が被ったことに気が付きましたので、ギルマス代行の名前を サラ ⇒ デボラ に変更しました。

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