4.家族会議2
3人は、再生した足を見ながら呆然としていた。
「とまあ、こういうこともできるようになって、婚約破棄してくれてありがとーって感じかな。父上は、婚約破棄の件と、賊の件で、王家と宰相あたりには、強気に出れるんじゃないかな。うまく利用してよ。
それで、今後のことなんだけど。」
と、ライアンは要望を切り出す。
「自分としては、レベルも上がったし、貴族社会と距離を置いて冒険者として自由に暮らしたいと思ってるんだ。貴族の責務を放り出すのは心苦しいけど、右足の件は貴族の間では知れ渡ってるだろうし、治してしまったから逆に表舞台に出れないしね。だから父上、私を王国の貴族籍から除籍してもらえないかな?当たってほしくない予感だけど、籍を残しておくとサンドラの干渉が続くような気がするんだよね。下手すると明日にでも呼び出しがかかるかもしれない。婿に行かなくてよくなったのにロイに家督を押し付けたままで申し訳ないんだけど。」
「それは気にしないで、もう覚悟はできているし。兄さんは10年間本心を偽って我慢してきたんだがら、解放された以上、やりたいことをやって生きていいと思う。ただ、希望としては、冒険者なら領都に拠点をおいてくれると嬉しいな。」
「私もゆくゆくは領都に拠点を置こうと思ってるよ。ダンジョンや大森林が近くて、魔物の数も多く、レベルも高い魔物種が多いから冒険者の需要は高いし。なんといっても故郷が好きだから冒険者で貢献できればと思ってる。で、父上のお考えは?」
「婚約の件で負担をかけてきたと思っているのは本心だし、ロイにそう言われてダメだと言う訳にもいかんだろう。ただ、除籍は簡単だが、貴族籍への復帰は少々面倒くさいぞ。戻りたくなることはないのか?」
「絶対とは言えないけど、多分戻りたくなることはないかな。母上の意見は?」
「私もいいと思うわ。むしろついて行って久々に冒険者生活をしてみたいくらい。まあ、今の立場だとまず無理だし、寂しいけど子離れしないとね。」
「ありがとう認めてくれて。それじゃあ明日は早朝から冒険者ギルドに行って冒険者登録をして、すぐに王都を出ようと思う。出来れば除籍も早い方がいいんだけど。」
「除籍は明日早速儂が自ら言って来よう。ついでに宰相のところへ行って、賊の調査へ圧力をかけてこよう。出発の準備は間に合うのか?」
「食料をある程度持ち出せれば十分だと思う。水は魔法で出せるし、ポーションもスキルで生成できるしー、あとは剣か。要らない剣とかある?ミスリルがあればありがたいけど。」
「ミスリルならこの屋敷の武器庫に幾らでもあるだろう。適当に持っていっていいぞ。」
「ありがとう、助かる。あとは何かあるかな?」
「くれぐれも気を付けてね。旅路でも十分休養と栄養を取って体調管理をしっかりとね。」
「分かったよ。そうだ、母上、私の・・・、いや冒険者になるんだから、俺のステータスを見てくれない?隠蔽と改竄で、誤魔化してみるから。そうだ、わざわざ本名を名乗る必要もないから、冒険者登録時に名前も変えよう。」
「俺・・・か、ちょっとワイルド感でたわね。では、≪鑑定≫えーっと、
ロバート
魔術師
レベル20
体力2000
魔力4500
水魔法Lv.3
火魔法Lv.4
回復魔法Lv.2
うん、中級冒険者って感じね。名前はロバートにするの?」
「よし、上手く情報操作出来てるみたいだ。これくらいなら怪しまれないかな?」
「年齢的には高い方かもね。学院生の上位だとそこそこいるレベルだから心配いらないんじゃない。魔術師だからローブで顔隠しても不自然じゃないし、ローブも持っていったら。」
「そうするよ。じゃあ、慌ただしいけど、明日出発するよ。しばらく王女からの問い合わせでこっちの屋敷に迷惑かけるかもしれないけど、よろしくお願いします。」
「貴族籍を抜くだけだから、お前が儂たちの息子であることは変わらん。領都に着いたら遠慮なく城を訪ねろ。」
「そうだよ、次は領都で会いましょう。兄さん道中気を付けて。」
と通信を切った。
「それじゃあ、準備をして、寝るか。おやすみなさい、父上、母上。」