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39.女王を追う者

 西の大森林の北端に出て、拠点話をしながら楽しく歩いていると、東の方から馬車を中心とした一団が近づいてくる。≪探知≫はしていたが、俺達とは関係なさそうなので、気にしなかった。


 しかし、すれ違う為に道の端によったところ、随行している騎士が居丈高に話しかけてきた。

「そこのお前達、先ほど大森林から出てこなかったか?」

 こういう輩は相手にしないに限る。聞こえないふりをしてすれ違おうとしたが、馬車の後ろにいた騎士が馬で行く手をふさいだ。

「質問しておるのだ。答えろ。」

 さて、どうしたものか。≪探知≫では、馬車の中に女性が2名いることが分かる。その他に馬上の騎士が3名、冒険者が10名の一団だ。

 実力的には排除は簡単だが、ランクAの冒険者がいる為、後々ギルドを介して揉める事態になるのは避けたい。


「確かに大森林から出ては来ましたが、それが何か?」

 言葉を選び無難に返す。

「大森林の状況を聞きたいのだ。知ってることを話せ!」

 騎士が(物理的にも)上から言ってくる。

「具体的におっしゃって下さい。漠然としすぎていて、情報が絞れません。」

 知ってることって、どんな薬草が採れるとか、小動物の生態とかまで知りたいのだろうか?

「そ、それはだな・・・。」

 なにやら言い淀んでいると、


「お待ちなさい。」

と、涼やかな声が聞こえ、馬車の扉が開いて、騎士姿の女性が出てきた。金髪縦ロールの気の強そうな美人だ。

「私は、バイエル帝国ベンシュタイン公爵家が娘、ヒルデガルドと申します。」

「お嬢様、得体の知れぬ冒険者などに軽々しく名乗るなど・・・」

「お黙りなさい!」

 騎士がヒルデガルドを諌めようとするが一喝される。

 バイエル帝国は、この国の東隣、つまり我が辺境伯領から東の山脈を越えた向こう側にある。

 通常の行き来は、専ら海路であるが。


「部下が失礼しましたわね。ただ、こちらも緊急の用件で動いており、悠長にしていられないのです。出来ればご協力頂ければと思いますが。」

 丁寧に言ってはいるが、断る選択肢は与えてないだろうな。まあ、話す内容を絞るか。

「我々は、今冒険者ギルドからの依頼で動いているので、依頼に関することは話せませんが、一般的な情報であれば、具体的に聞いて頂ければ。」


 ヒルデガルドは、少し考えて、

「ご協力感謝します。では、3人とも馬車の中へどうぞ。」

「お嬢様!そのような者を馬車に・・・」

 騎士が抗議しようとするも、

「お黙りなさいと言いましたよ。」

「し、失礼しました。」

 ヒルデガルドに言われ、引き下がる。


 馬車の中は8人程収容できそうなくらい広かった。もう1人の女性は、護衛騎士兼侍女の子爵令嬢だった。

 

「それでは質問させてもらうわね。大森林で魔物の動きに異常は無いかしら?」

 いやいや、完全に依頼内容そのものだよ。そもそも他国の貴族にベラベラと自領の情報を流す訳にもいかんだろう。

「そうですね。観察し終わった今の状況は、特に異常と思われるところは無いと判断しております。」

 嘘は言ってない。今は異常はない。


「そうですか。では、普段見かけないような魔物を見ましたか?」

「まだ、冒険者経験が浅くて、尚且つ大森林は初めてなので、普段との違いは明確には分かりません。」

「むっ!では、なぜさっき異常はないと判断できたのです?」

「内緒にして頂きたいのですが、調査目的が氾濫が起こるかどうかの見極めだからです。魔物が群れて行動していない。北に向けて継続的に移動している魔物もいないということで、異常なしと判断したわけです。但し、大森林は広いので、全てを見れるわけではなく、見た範囲での話ですが。」

 まあ、≪探知≫を広げたから、普通の冒険者よりは広範囲を見れるけど。


「そうですか・・・。では、あれはどこに・・・。魔導具の反応も消えるし、どこを探せば・・・。」

 ヒルデガルドは、小声で呟きながら思案している。

 侍女は、値踏みするようにこっちをじっと観察し続けている。


「用件はそれだけでしょうか?」

 いつまでも引き留められたくないので聞いてみる。

「あ、ああそうね。時間を取らせて悪かったわ。もういいわ。」

 なんとなくムカつく言い草だが、とっとと離れたいので

「それでは、失礼します。」

と、馬車を出る。


「じゃあ、とっとと行こう。」

と、2人に声をかけて出発する。何か言いたげな騎士と冒険者は無視した。


 少し歩いて距離ができたところで

「グリフォンクイーンを探していると思わない?」

 2人に聞いてみると、

「十中八九そうではないかと。」

「なんか奥歯にものが挟まったような言い方だったしね。」

 2人も同意見らしい。


「聞こえないと思ってたのか、ブツブツと魔導具の反応が消えたとか言ってたし、間違いなくクイーンに攻撃を仕掛けた奴らだと思うよ。」

「回収した矢の魔導具ですね?」

 レティも思い出したようだ。

「収納したから魔力の繋がりが切れて、反応がなくなったんだと思う。これは気軽に取り出せないね。」


「彼女達はこれからどうするのかしら?」

「どうするのかね~。反応が消えた辺りを捜索するのか、でも“地図”スキルでもなきゃ難しいよね。」

 どっちにしても、霊山に行ったクイーンの追跡は無理だろう。


「それよりも、彼女達を追っていると思われる反応が気になるのですが。」

 レティが街道から外れた草むらに身を潜めている者達に言及する。

 俺達は≪探知≫で分かっていたが、一定距離を保ってヒルデガルド達を追っている者達がいたのだ。


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