38.調査終了
さて、エルザは一度霊山に向かったから、
「もう少し南に向かって散策してみようか?どうせ、グリフォンクイーンがいなくなった後の影響を2、3日観察する必要もあるし。エルザもすぐ帰ってくると思うけど。」
「はい。久しぶりの2人っきりですね。」
レティの機嫌がいい。
とりあえず魔物の反応があるまで、南へ向け歩いて行った。おおよそ20kmくらい歩いたところで魔物の
反応を≪探知≫した。
だが、周囲が暗くなってきたため、小屋を出して≪認識阻害≫と≪結界≫を掛けて野営をする。
今日のうちにエルザは帰ってこなかったが、まあ明日には戻ってくるだろう。主従契約で繋がってるし俺の場所を見失うことは無いだろう。
起きて朝食を取って出発する。昨日に続き、南へ向けて歩く。
魔物の姿もランクCを中心にBもちらほら見かける感じだ。元々の魔物の分布を知っているわけではないが、特に氾濫の予兆は感じられない。
「お、ハイトレントの群れだ。確か高級建材になるはずだ。レティ!ハイトレントは漏れなく素材回収しよう。いい素材確保のために、なるべく両断せずに、顔部分を一突きでね!」
「承知しました。」
「ふふ、大漁ですね。」
ご機嫌のレティがオリハルコンの片手剣をポーチにしまいながら言う。
「敵対しなければ殲滅まではしなかったけど。でも、今後拠点を持つときの屋敷の建材としては十分すぎるほど確保できたね。」
「拠点ですか?」
レティが不思議そうに尋ねる。
「そう。宿屋も悪くないけど、いっそのことどこかに屋敷を建てて、拠点を作ろうかなって。周りに畑なんかを作るのも面白そうだなって。」
「私達も一緒でいいんですか?」
若干不安そうに聞いてくるが、
「勿論だよ。俺はレティを離すつもりはないから。」
と返すと、
「はい!」
と嬉しそうに微笑んだ。
その後も、襲ってくる魔物を倒して収納しながら南へ進み、
「ぼちぼち昼食にしようか。あ、ちょうど帰ってきたみたいだ。」
ほどなくエルザが到着し、人化しながらふわっと地面に降り立った。器用だな。
「ただいま、旦那様♪」
飛びついて、俺の首に腕を回し、抱きついてきた。
「ああ、お帰り。」
「む~。」
レティがそれを見てむくれたので、2人まとめて抱きしめる。
2人とも可愛いなぁ、もう。
昼食に肉を焼いて、買っておいた野菜とジュースも取り出して3人で食べる。
「ところで、思ったより時間が掛かったね。何か問題でもあった?」
とエルザに聞くと、
「いいえ、お母様もグリフォンクイーンを受け入れてくれたし、特に問題は無かったわ。ただ、お母様からの質問攻めが凄くて・・・。」
「へ~、何を聞かれたの?」
何気なく話を続けると、ちょっと頬を染めて、エルザがぼそぼそと話す。
「えっ!何って、ナニの話というか・・・。」
よく聞こえないので、聞き返そうとするが、
「旦那様、おかわりはいかがですか?」
と、肉串を差し出すので、
「あ、ありがとう。貰うよ。」
そのまま有耶無耶になった。エルザが少しホッとした顔でレティに微笑む。
まあ、いっか。
「さて、エルザも戻ってきたし、北側に引き返しながら様子を観察して、問題なければギルドに報告に戻ろうか。」
「そうね。」
「はい、肉もかなり追加できましたし。」
オークキングやオーク、ミノタウロスもそこそこの数を倒したので、食肉を上積みできたのだ。
そして、ゆっくり歩いて北方向へ引き返していくと、グリフォンクイーンのせいでぽっかりと魔物の空白地帯になっていたところにも魔物が戻ってきていた。ただ、ここでも氾濫するような動きは見られない。
よく観察するため、真っ直ぐ北に向かうのではなく、大きくジグザグに方向を変えながら歩いたため、結局5泊野営をして、西の大森林の北端に出た。
「さてと、一気に帰ってしまうと、どう考えても通常の移動時間を差し引いた調査時間が短すぎるよね。氾濫の危険がなさそうだし、急ぐこともないから、ゆっくり歩いて帰る?」
「例の拠点を構えるのにどのような場所がいいのか風景を眺めながらゆっくり歩けばどうでしょうか?」
野営時に3人で拠点を作る構想を話していた。
「よし、じゃあ、みんなの希望を語りながら行くか。」
3人で拠点場所について考えた。
場所については、まず、街の中である必要性。町の外で問題があるか?
水は? →魔法、魔導具、井戸を掘る等対応可能。 問題なし。
食料は? →収納すれば買い溜め可能。 問題なし。
→畑を作って収穫。ダンジョンで肉確保。 問題なし。
建設は? →土魔法&“創造”があれば自前で要塞化も可能。 問題なし。
魔物・盗賊の襲撃は?→≪探知≫≪結界≫≪認識阻害≫要塞化。 問題なし。
都市への移動は?→≪身体強化≫で走る。エルザで移動。 問題なし。
町の外での利点は?
広い土地が確保できる。
他人の目を気にしなくていい。→シルフィーも呼べる。
ということで、場所に関しては、あえて都市の中に拠点を持つ利点がほぼ無いことで認識が統一された。
まあ、目立たない様に街道から離す、地下水脈を探す、魔物が狩れるダンジョン・大森林の近く、くらいの条件を満たせば、場所はどこでも良さそうだ。そのうちロイを尋ねて、候補地を聞いて、許可を貰おう。楽しみだ。




