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34.帰還

 港町までは特に問題なくたどり着き、馬車の御者に頼んで、冒険者ギルド前まで運んで貰った。


「じゃあ、ついて来てくれ。」

 ギルドに入り、受付まで連れていく。


「探索依頼を受けた冒険者を連れ帰ってきた、確認してくれ。この3人は落ち着けるところへ。」

と依頼の契約書を見せながら受付嬢に頼む。

「分かりました。少々お待ちください。」

 3人は、応接室へ案内されたようだ。


「その間に買取を頼みたいんだが、量が多いから直接解体場でいいか?」

「はい、そちらから入って下さい。査定後、引渡証をお持ちください。」


 解体場へ向かい、解体担当に声を掛け、素材を出す。


 オーガ  × 24 ×40000ゴルド 

 トロール × 16 ×50000ゴルド

 角猪の角 × 23 × 2000ゴルド


 常時依頼報酬を含め、合計230万ゴルドを受付で受け取った。

 その後、併設の食堂で、お茶を飲みながら待っていると、ミレディ嬢が護衛と共にギルドに入ってきて、受付嬢に案内され、応接室に入っていった。


「ロバート様、お話があるそうなので、応接室に来て頂けませんか?」

「連れ帰ったのが人違いってことでもなければ、用は無いと思うんだけど。別にお礼なんか要らないから、報酬貰えればそれでいいよ。」

 拒否すると、受付嬢が困った顔をして、

「すみません、その報酬の件で、とにかく一度来て頂きたいと、ギルマスが・・・。」

 ますます嫌な感じだが、報酬の話なら仕方ない。


 応接室に入ってソファに腰掛ける。向かいにマイケルと、ミレディが座り、側面にギルマスだ。


「で、話とは?」

 とっとと済ませたいので、話を促す。

「契約書によると、報酬合計額は、2日で生きて連れ帰ったので、1200万ゴルドとなる。」

と、ギルマスが言うので、

「上級ポーション6本使った。必要経費ですね。さっき確認したら相場は1本50万ゴルドだったので、プラス300万で1500万ゴルドです。」

「むっ、1500万か・・・。」

とギルマスが、ミレディの方を見る。


「申し訳ございません。今の時点でお金が用意できておりません。しばらく猶予を頂けないでしょうか?」

 ミレディが、一気に勝手な都合を語る。

「いや、今回は、ギルドマスターがその()()()()()()()()()()()受けさせた依頼だから、俺達への報酬はギルドから支払われます。その金がいつギルドに納められるかは関知しないので、お嬢様が俺達にそういうことを言われる必要はありません。ギルドと貴方達で話してくれればいいです。」

と、ギルマスを見ながら言う。


「いや、通常、最初に依頼人が報酬全てをギルドに預け、そこから報酬を出す。今回は、緊急ということで、報酬を預からないまま依頼達成してしまったから・・・。」

「お金の準備が出来てないと?」

 ギルマスが言い淀んでいるところを補足してやる。

「ギルドの保有資産から立て替えればいいのでは?そっちの事情は俺達には関係ないので。」

「これほどの額を立て替えるのは前例がない。」

「ハァ~、で、どうするつもりなんですか?俺達には、子爵家と直接やり取りする気は一切ないですが。」

「・・・・」

 みんな黙り込んだままだ。

 俺の両隣の雰囲気もだんだん剣呑になっていく。



「私を買って貰って、貴方の借金奴隷になるというのはいかがでしょうか?」

 ミレディが、何やら決死の覚悟で俺に言うが、正直要らない。足手まといでしかない。

「だから、直接あなた達と取引する気はないので、その気なら自ら奴隷商に行って、その代金をギルドに納めればいいと思います。どうせ奴隷になるんなら同じことなので。」

 するとミレディは、真っ青になって震える。何でだよ。

「旦那様の元であれば、酷い目にはあわないと甘えたことを考えているのでは?」

 レティが俺だけに聞こえるように囁く。


「子爵令嬢に奴隷になれって、お前はどこまで無礼なことを言っているんだ!」

と、兄マイケルが怒鳴る。

「奴隷の提案をしたのは、令嬢自身ですよ。興奮しないで下さい。」

「何!」


「ギルドマスター、あなたが仕切ってくださいよ。出来ないんなら、ギルド本部に全て包み隠さず報告することにしますよ。」

「そ、それは待ってくれ!」


 コンコンっとノックされ、ギルド職員が入ってくる。

「ギルドマスター、そのお客様が・・・。」

「今取り込み中だ、待ってもらって・・・。」

「話し中済まないが失礼する。」

 1人の貴族が入ってくる。まあ、気が付いていたが、代官のヨークシャー子爵だ。


「父上!」

「お父様!」

「お前たちは一体何をやっているんだ。勝手にダンジョンに行き、行方不明になり、勝手に捜索依頼をねじ込み、挙句の果てに報酬すら準備しないとは。」

「しかし、それは・・・。」

「もう黙っていなさい!」

 子供を叱責し、こちらを向く。


「今回の子供たちの不始末は全て私の不徳の致すところです。支払いは私の方から致しますので、ご容赦願えませんか?」

 随分と腰が低いな。まあ、世襲の領主じゃなく、父上に直々に指名された代官だからな。真っ当な人物なんだろう。

「いえ、報酬の話は、私ではなくギルドの方へお願いします。私に厄介事を強要したのはあくまでもギルドですから。ギルドが私へ支払い、ギルドがそちらから徴収するのが本来の姿。子爵家だからと遠慮して徴収できないギルドが悪いのです。私が直接子爵閣下から謝罪を受けるのは筋が違います。」


「そ、そうですね。それが筋というものですね。ではギルドマスター、これで依頼料を確認ください。」

「はい。おい、確認して処理してくれ。」

と職員を呼んで受け取った大金貨を渡す。

 は~、ここのギルマスはトラブル処理能力が極端に低いな。冒険者の実績だけで就任したタイプか。


「では、俺達はもうここにいる必要はないので、報酬を貰って帰るだけだから失礼します。子爵閣下、私が言うのもおかしいですが、ご足労頂きありがとうございました。」

 レティとエルザを促して部屋を出る。

 

 すると、子爵が追いかけてきて小声で、

「ライアン様、この度は誠に申し訳ありませんでした。」

 やはり気が付いたか。前に会ったことがある気がしたんだ。

「今は、平民の冒険者ロバートです。また、私がさっき言った筋論からして、閣下が私に謝罪される必要はありません。お気になさらず。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「それでは、失礼します。」

 

 その後、受付で報酬を受け取り、やっとギルドを出れた。


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