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30.運搬

 貴族様ご一行を見送った後、依頼主の元へ向かった。


「すみませ~ん。」

 店の表から声を掛ける。

「あぁん?なんだ手前。」

 店から人相の悪い男が出てきた。店員なのか?

「ええ~と、ギルドで荷物輸送の依頼を受けたんだが。」

「おお、そうか、中に入ってくれ。」

 急に態度が変わり、笑顔で店内に導く。



「私が、このトスター商会の商会長ボブと申します。」

 店内に入り、商会長の元へ案内された。

「この依頼は、ここで間違いないか?」

 依頼票を見せると、頷いて肯定する。

「間違いありません。では依頼の荷物のある倉庫へおいで下さい。」


 倉庫の中には、50cm×50cm×50cmくらいの箱が大量にあり、勝手に開けたら分かるように、封印されている。

「さて、少なくとも30箱は輸送して頂きたい。もっと運んで頂ければ、その分依頼量は割増しますぞ。馬車ですかな?」

「いや、このバッグに入れていく。」

「なんと、マジックバッグですか?」

「とりあえず、100箱くらいは行けそうだが。」

 一応、少な目に言っておこう。

「100ですと?素晴らしいバッグですなぁ。では、これが明細書になります。」

 サインの入った明細書に書かれた内容と箱の中身を鑑定して比較すると、()()()()きっちり合致していた。


「では、だいたい5日間で届けられると思う。」

 荷物を収納して告げると、

「はい、期間としては10日の猶予がありますので、十分です。よろしくお願いしますぞ。」

「分かった。では出発します。」



 店から出てしばらくしたところでレティが聞いてくる。

「旦那様、依頼を受けてよかったのですか?」

 2人のことを妻と紹介したせいで、2人とも俺のことを旦那様と呼ぶことにしたらしい。

「どういう意味なのレティ?」

 質問の意味が分からなかったエルザがすかさず疑問を呈する。


「ああ、そうか。エルザとはまだ≪共有≫してなかったね。ゴメンゴメン。じゃあ手を出して。」

 エルザの手を握り、レティの時と同様に、経験値取得と“地図”を≪共有≫した。

「わあ、凄いわ旦那様。こんなことまで出来るなんて。でも近くに悪意が一杯だわ。」

「店内で依頼を受けるといった時に、周りにいた商会の人間が、敵対に変わったんだ。それで、先ほど店の奥にいた20人程が敵対に変わった。多分、道中どこかで襲ってくるんじゃないかな。」

「え、でも彼らの荷物を預かっているだけで、私たちが買い取った訳じゃないわ。それを奪って何の得があるの?」

「この領内では、保険制度が浸透してて、お金を払って加入している場合、野盗等の被害にあうと、被害額の6割ほどを補償してくれるんだ。彼らは商業ギルドの保険を使っているんじゃないかな。要は、荷物を全部確保したうえで保険金を貰おうとしているんだろう。預かった荷物は高価なものがあるからひと財産だし。あと、このバッグも欲しいんじゃないか。ただの普通のバッグだけどね。」


「人間はお金のためにはいろんな事を考えるのね。」

「旦那様を襲おうとは身の程知らずも甚だしいです。」

「まあ、相手の動きは分かるから、人目のつかないところまで誘導して始末しようか。悪党に遠慮はいらないだろう。」

「旦那様の笑顔が黒いわ。」

というエルザも獰猛な笑みを浮かべている。



 領都の門を出て、外の街道を歩く。港町までの経路は最重要な道であるため、整備され広い。

 正直、どこで襲うつもりなのかと疑問はあるが、山道や峠もあるので、その辺りか。

 港町の間に大きな町は無い。宿屋があるくらいの小さな村はあるが、街道沿いに野営のできる広場が点々とある為、野営する人が多い。

 20人程ついてくる奴らをと距離を取りつつ街道を歩く。こちらが野営するときは街道から逸れて、いつも通り≪認識阻害≫≪結界≫で小屋を誤魔化す。


 

 野営を3泊した後、見通しの悪い峠道に差し掛かった。昨日の夜から奴らの移動速度が上がり、距離を詰めてきていた。

 そして峠の中腹、俺たちと奴ら以外に通り掛かる人が見当たらない状況で襲ってきた。


「おい、お前ら、荷物全部置いていけ。いや、女2人も置いていけ。そうすれば命だけは助けてやろう。」

 どうやら、人攫いもすることにしたらしい。見た感じ強い奴はいない。

「え~、俺たちはランクBの冒険者だけど、それでもやるのか?お前達が武器を構えれば、命をなくす覚悟をしろよ。」

「うるせえ!こっちは20人いるんだ。ランクBだろうが、この人数差で勝つつもりか。まあいい、刃向かうつもりならもう容赦はしねえ。やっちまえ。女は殺すな。フードで見えねえが上玉っぽいぞ。」

 一斉に剣を構えた。


「≪風刃≫」

 レティが、7人の首を飛ばした。

「≪土柱≫」

 俺が、6人串刺しにした。

「ハァー。」

 エルザが次々と顔面を殴って、6人の頭を吹き飛ばした。


「な、な、な、な、な、」

 唯一生き残っている最初に声を掛けてきた男が驚愕している。

「さて、トスター商会からずっとついてきてご苦労さんだったが、どうする?」

「な、知っていたのか?いやいや何のことを言ってる?」

「いや、誤魔化すの下手くそか。で、保険金狙いか。」


「しらねえ、俺たちは金で雇われただけだ。命だけは助けてくれ。」

「いやいや、襲ってきておいて、都合がよくないか?そもそもお前今まで何人殺してきた?だが、一番許せないのは、妻たちを攫おうとしたことだ。それだけで殺す理由は十分だ。」

「「旦那様~」」

「ま、待ってくれ、金なら出す、だから・・・。」

 ≪風刃≫で首を刎ねた。いつまでも聞いてても仕方ない。


「じゃあ、集めて燃やしてしまおう。」

 土魔法で穴を掘って、≪重力≫で死体を浮かして穴に全て放り込む。装備や剣も見るべき物はない。

 火魔法≪業火≫で穴の中を骨も残らず焼き尽くし、土魔法で埋めて元に戻した。

「さあ、終わった。行こうか。丁度通り掛かる人がいなくて良かった。」

「旦那様は、魔法の使い方が色々と器用ね。」

「旦那様なら当然です。」

 ハハハ。


 そして、もう1泊野営をして、港町に到着した。


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