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26.エルザ

 チェスター王国は、東西約4000km、南北約2600kmのほぼ四角い領土だ。

 北側と東側は険阻な山脈が連なり、容易に人の行き来が出来ないため、そちら側の隣国との交流は、陸路では無理であった。

 西側も山脈で囲まれているが、北寄りの山に低い部分があり、そこを通じて友好的な隣国との交易等が行われている。

 よって、西の交易路の国境を守護するバスビー辺境伯家は、巨大な富を有するが、現当主は実直で王家への忠誠度が高いため、政治的にも安定している。

 国の南部は、南部森林地帯とよばれる森林が大きく広がり、さらにその南に海があるが、切り立った崖が続くため、海の資源の利用を阻まれている。

 エドワーズ辺境伯領は、国の南東部、角にあたる部分にある。領地の南側に、ランクの高い魔物が多数存在し、更に国内5大ダンジョンのうちの2つが存在する大森林への備えを任されている。

 大森林は2つに分かれており、その間に入江があり、王国内唯一の港町がある。よって、エドワーズ辺境伯家は、豊富な海産物、塩、海洋貿易を独占している。その代わりに、魔物対策に多大な出費をしているのだが。

 ちなみに、入江は、700年前(王国ができる前)に暴れた古龍のブレスで、大森林の一部が地面ごと抉られて出来たと本人(本龍?)に聞いた。


 そしてここ霊山は、大森林の西側、辺境伯領の南西の端にある。

「エルザは、もう出発して大丈夫なの?」

「ええ、特に準備するものは無いわ。一飛びすればいつでもここに戻れるし。」

「そうか、じゃあ、日も暮れそうだし、近くの街目指して出発しよう。」

「では、私の背に乗って。一気に行きましょう。」

 そうか、乗れるの忘れてた。


 2人が背に乗って、エルザが飛び立ち、一番近いオールドの町へ向け出発した。

 暗くなりかけとはいえ、龍が目撃されれば大騒ぎなので、≪認識阻害≫をかけ、隠蔽して町の近くまで行き、降下した。

「今の時間だと、門を通るのも宿を探すのも面倒だから、野営にしよう。」

と、木陰に小屋を出した。

「ああ、我が主の力は凄いわね。」

 やはり最初は驚くか。

「出来れば名前を呼んで欲しいのだけど。」

「・・・分かった。ではロバート殿と。」

 まあいいか。


 さて、肉は何にしようか・・・。

「エルザは、本当に竜種の肉でも抵抗ないの?」

「ええ、問題ないわ。」

「じゃあ、今日は亜竜にしよう。レティ焼いておいて。」

「承知しました。では、エルザ、一緒に焼きましょう。」

 どうやら2人は、お互い、レティ、エルザと呼び合うことに落ち着いたらしい。


 とりあえず、ベッドを1つ増やした後、夕食を取った。


「エルザは、風呂に入ったことある?」

「いえ、龍の姿でも、人の姿でも、水浴びが基本だったから。」

「じゃあ、レティ。一緒に入って教えてあげて。ああ、最初に≪浄化≫。」

 レティが若干寂しそうな顔をしたのは気のせいでは無いはず。


 今日は、2人の後に風呂に入り、その後3人で話す。

「2人とも聞いて欲しい。実は、今まで話していなかった俺の過去なんだが・・・。」

 辺境伯領に来たことだし、俺のことをちゃんと話しておこうと思って、日本の記憶関連以外について、これまでの経緯を話した。


 聞き終えた2人はしばらく色々と考えていたようだったが、

「ロバート様の過去を聞いても、別に私達との関係は変わりませんよね?」

「ああ、勿論。ただ、領地内に入ったから、言っておいた方がいいと思っただけだよ。今後貴族籍に戻るつもりはないし、冒険者を続けたり、家を買って畑を作るのも悪くないし、自由に好きなことをして生きていこうと思ってるだけだ。だから、これからもよろしく。」

「「よろしくお願いします、ロバート様(殿)。」」


「ところで、エルザの服ってどういう仕組みなの?自分で思い描いたものを着れるの?」

「前の人化状態で着てた服になるみたい。私もよく分かってないの。」

「つまり、新しい服に変えるには、一度着なきゃダメってことだね。じゃあ、明日ローブは買おう。そのままだと美人だから目立つしね。」

「ああ、そうなのね。自分ではよく分からないけど、ロバート殿にそう言われるとなんだか嬉しいわ。」


「あとは、武器は何を使うの?」

「基本は殴る・蹴るかな。」

「ああ、そうなんだー。じゃあ、ブレスレットだけ渡しておくよ。」

 ブレスレットを“創造”して、俺達のと同じ効果を≪付与≫して使用者固定をしてもらう。

「俺達のとお揃いだよ。」

「ありがとう。大事にするよ。」

 喜んでもらえたようでよかった。

 

 寝るときに、2人を広いベッドで、俺は新しい狭い方でと考えていたが、レティに

「3人一緒ではダメですか?」

と、訴えかけるような目で聞かれた。

「エルザはいいの?」

「勿論一緒で!」

 あ~、まあそもそも野営の時はしないつもりだからいいか。“創造”で2つのベッドを合わせて1つの大きなベッドに作り直し、3人でベッドに並んで寝た。



 翌朝、両側から美女が寄り添って寝ている状態で目が覚めた。

 心地良いので、そのまま微睡む。2人ともそれぞれ腕を抱きしめているので、柔らかい感触が腕に伝わる。

「おはよう。」

 名残惜しいが起きる。



 朝食を済ませた後、小屋を収納して、オールドの町へ向かって歩く。

 門に並び、ギルド証を持っていないエルザの分だけ入場料3000ゴルド払い中に入る。

「まずはエルザの冒険者ギルド登録かな。」


 現在のレティのレベルは、194となっている。

 また、エルザは、龍の時にはレベルが存在しなかったが、人化した時だとレベル142だった。人化するとそれなりに力が落ちるとのことなので、龍の実力だともっと高いんだろう。

 エルザのギルド登録前に、レベル23くらいに偽装しておく。


 ギルドの建物は、それなりに大きいものだった。霊山や大森林にも近いので、それなりに冒険者が多いのだろう。

 ギルドに入ると、朝の混雑が終わり、閑散としていた。

 早速エルザの登録をする。水晶の測定結果から、俺やレティ同様に、ランクEのギルド証が発行された。


「とりあえず、領都まで行こうと思うんだ。ついでに、護衛任務でもあればいいんだけど。」

と、掲示板の依頼を見る。


 掲示板には、ほとんど依頼票がなく、護衛依頼もない。

 受付で事情を聞くと、昨日、霊山でまばゆい光の筋が何回か空に向かって伸び、雲を吹き飛ばしたのが目撃された。その為、なにか起こったかと移動を控えて護衛依頼を撤回した人が多い。冒険者の多くは、現地調査に向かったらしい。


 う~ん。明らかに古龍のブレスだよな。でも俺から真相を軽々しく話すのもなぁ。領主代行のロイには報告するつもりだけど。

 まあ、現地調査に行ってるなら、そのうち通常に戻るだろう。

 古龍も眷属の竜が霊山の外に出るのは抑えてくれるだろうし。


 よし、依頼も無いことだし、少し買い物を済ませて、一気に領都に飛んで、ロイに報告に行くか。 


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